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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。昭和56年、泉晴紀とのコンビ「泉昌之」で書いた短編漫画『夜行』でデビュー。実弟・久住卓也とのユニットQ.B.B作の『中学生日記』(青林工藝舎)、ドラマ化され放映中の谷口ジローとの共著『孤独のグルメ』(扶桑社)、水沢悦子との共著『花のズボラ飯』(秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開。

八高線 はちこうせん

八王子駅(東京都八王子市)から倉賀野駅(群馬県高崎市)までの全23駅。92.0km。関東平野の西部を走る。今回歩いたのは埼玉県入間市、東京都瑞穂町、昭島市、八王子市あたり。

 そしたら頭の斜め上で「ドンッ」と鈍いおとがして、見たら一羽のスズメがハラハラと床に落ち、そこですうっと羽と足を縮め、動かなくなった。どうしたのだ。迷い入ってガラスに激突したのか。脳しんとうで気を失っているのか、しばらく見ていたが微動だにしなかった。即死だろう。

 駅員に言ったら「あそうですかスイマセン」と全然取り合ってくれなかった。せめて、しばらくスズメのそばにいて弔った。麦畑を元気に飛び立った仲間を思う。合掌し、後ろ髪引かれる思いで電車に乗った。

 雨で早く暗くなったので、どうしようかと思ったが、拝島で思い切って下車、歩いて多摩川越えを決断。ボク的にはいろんなものがあって面白かったが、多摩川まで遠かった。

 さらに八高線の鉄橋には隣接した橋がなく、知らないオジイサンに聞いたら、「どこに行きたいの」と言うから「いや、川の向こう側へ」といい加減な答え方をしてしまったために、反対側の拝島橋を教えられ、結果ものすごい遠回りをして、店一軒無く真っ暗な雨の道を歩き続けるはめになった。


多摩川に着いたときは暗かった。八高線が通った(急いで撮ったのでブレた)

拝島駅からズームで八高線鉄橋を撮る。肉眼で見えず

 八王子の左入町のCOCO'Sでようやくハンバーグライスにありつき、休んで小宮駅から乗った電車は、なんと21時4分発八王子行きだった。人に道を訊く時は目的地をはっきり言うべし。

※「旅の手帖」2013年8月号より掲載。

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