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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。平成21年から足掛け2年をかけて東京から大阪までを散歩した近著『野武士、西へ 2年間の散歩』(集英社)が発売中。

烏山線 からすやません

宝積寺(栃木県高根沢町)から烏山(栃木県那須烏山市)までの全8駅。20.4㎞。2014年春からは蓄電池を搭載した新型車両が走る予定。今回は高根沢町と那須烏山市を歩いた。終点烏山の先に流れる那珂川は鮎の漁獲量日本一を誇る清流。

 今回は栃木県の烏山線(からすやません)をつたい歩いた。
 東北新幹線の宇都宮から、東北本線で2つ目の宝積寺(ほうしゃくじ)駅から、終点烏山駅まで、全部で8駅、全長約20㎞の単線。さすが旅の手帖編集部、こんな線路見つけてくる。

 8月13日。今日も猛暑日だ。全国で死者の出ている熱中症にならないよう、無理して全部歩くのはやめることに早々決める。こんな日に炎天下の線路沿いを延々歩くのは、自殺行為に近い。意固地になる歳ではない。楽しくやろう。

 早起きして新幹線も使い、宝積寺駅に着いたのは12時22分。駅は新しく、コンクリート打ちっぱなしの高い天井に木製の蜂の巣状のデザインがなされ、洒落てる。駅前も整備されており「ちょっ蔵広場」には蔵をイメージした新しいホールやお土産屋やレストランがあった。平成19年にできたばかりらしい。こんな場所に(失礼)なぜ(失礼)というほど無駄に(失礼)洒落ていた。

 何か食べようと思ったが、レストランはやっていなかった。早くも暑い。幼稚園児たちが大きなビニールプールに入っていた。一緒に入りたい! 食べ物屋が無いので、駅の反対側に行き、交番で「この辺で飲食店は?」と訊くと、若い警官は「飲食店……うーん」。そ、そんなにないのか。「この道をまーっすぐ行くとテー字路があって、その先にトンカツ屋が……あるけど、今やってっかなぁ、お盆だし」。正しくなまっていて、そのたしかなローカル感が嬉しい。


散歩の最初にこのあげもちを2個食べておいてよかった。途中、店一軒もなし

栃木の山の中で、烏山線にまさにつたい歩きして行く道

 行ってみたら、トンカツ屋は準備中だった。休みかもしれない。あたりをぶらぶら歩いたが喫茶店も軽食スナックもやっていなかった。開いていた和菓子店「きんとんまんじゅう朝日屋本店」というのに入った。店の中で食べれたので、きんとんまんじゅうと、海苔のついたあげもちも食べる。あげもちが香ばしくて甘じょっぱくて、ウマイ。腹持ちする感じもするので、腰掛けて、無料の麦茶を飲みながら2個食べた。結果的にこれに助けられた。

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