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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。旅先ならずともちょっと出かけて朝風呂に入り、ついでに一杯飲んで帰るという新刊、『ふらっと朝湯酒』(カンゼン)発売中。

指宿枕崎線 いぶすきまくらざきせん

九州新幹線の終着駅、鹿児島中央(鹿児島市)から山川(指宿市)を経由し、枕崎(枕崎市)までの36駅。87.8km。鹿児島湾に沿って走る。西大山(指宿市)はJRで最も南にある駅だ。

 

 住宅地になると、市電と枕崎線が並んだ。ところがその狭い線路と線路の間に家が建っていたりする。どうしてこういうことになったんだろう。両側からさぞうるさいんじゃないだろうか。痛い足で陸橋を上って写真を撮る。梅が咲いている。オレンジの市電「チキンラーメン号」が楽しい。


市電と指宿枕崎線。その間に民家が。
痛い足で上った陸橋から。紅梅キレイ

 やっぱり痛い。靴紐を緩める。靴の側面にハンカチを差し込む。いろいろ試みる。
 住宅地のゴミ捨て場に「克灰袋(こくはいぶくろ)」という黄色いビニール袋がある。中は灰のようだ。こういうものがあるのか。降るときはそんなに降るんだな。県民はよくも悪くも桜島とともに生きていると実感。
 しかし痛い。今日は谷山(たにやま)駅まで歩いて電車に乗ることになっている。谷山が近くなって痛みはさらに増した。ふと、患部ばかり庇(かば)うのでなく、靴底にハンカチを折って敷いたら、足そのものが高くなってくるぶしに当たらなくなるのではないか、と思いつき、やってみると、これが1番効果があった。

 しかし、谷山駅直前に川があり、それを渡る橋を間違えたのでずいぶん遠回りした。1kmくらい無駄足。足が痛いのに。いつもなら2時間もかからない距離に2時間半以上かかる。お昼を過ぎて、腹が減ったので店を探すも、繁華街と離れているのか駅まわりに店が見つからない。「谷山名物重吉そば」という店があったが定休日。遠くに赤い広告のぼりが見えたのでがんばって行ったらお好み焼き屋でガッカリ。鹿児島にもお好み焼き屋がすごく多いことが今回よくわかった。

 戻って駅前の小さな立ち食いうどん屋「勇遊」に入ったら、立ち食いと書いてありながら椅子もあって、しかもすごくおいしかった。店内には長渕剛のライヴ映像が流れていて「鹿児島、やっぱり長渕なんだ」と思う。でも、うどんに長渕あんまり似合わない。

 谷山から電車は足が楽で気分がよかった。ハンカチを敷いて歩くとくるぶしの痛みは軽減するが、かかとが硬くて痛くなる。しかもそんな歩きだと右足も痛くなってくる。鹿児島は曇りで、雨の予報もあったが、歩いている間は降らなかったのはついていた。車窓から海が見えた。鹿児島湾だ。曇っていて桜島が見えないのが残念。

 喜入(きいれ)駅で次の列車を30分待つ。「喜ば士隊キイレンダー」というご当地キャラの、最優秀人気キャラ賞の賞状が飾ってあった。やってきた黄色い列車に乗る。海沿いを走るのは気分がいい。野菜の畑やビニールハウスも多い。菜の花畑が満開。鹿児島、暖かいんだ。今日はそういえば歩いていて背中が汗ばんだ。

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