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久住 昌之 Kusumi Masayuki(文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。文庫版『ひとり飲み飯 肴かな』(日本文芸社)発売中。

上信電鉄 じょうしんでんてつ

高崎(群馬県高崎市)から下仁田(下仁田町)までの33.7㎞、21駅。明治30年(1897)に全線開通。沿線には富岡製糸場があるように、生糸の運搬に活躍した。今回は東富岡から下仁田まで歩いた。

 駅のすぐそばに「おきなわ屋」というスーパーマーケットのような店を発見。「おかずを作り続けて70年」と書いてある。中に入ると、ものすごい混沌。肉、魚、揚げ物や手作りお総菜、日常生活用品、切り花に、お菓子、駄菓子、おもちゃまでぎっしりと並んでいる。スゴイ。


おきなわ屋のお総菜はみな手作り。おいしそう。
駄菓子の量もものすごい

 このあたりでは「ホルモン揚げ」といういわゆるB級グルメが有名らしい。ちくわを揚げて特製ソースをつけたもの。全然ホルモンじゃない。1本42円。休日には県外からも車でやって来る人がいるそうだ。この店は面白い。1時間ぐらいは遊べそうだ。ボクは手作りの「青しそ巻」を買った。味噌にクルミや唐辛子などを入れて青しそで巻いて揚げたものだ。試食したが素朴な甘辛味。

 この辺の住民はほとんどが高齢化しているので、ここで毎日のおかずを買ったりするのだそうだ。さらに近くに小学校があるので、頼まれるままに駄菓子的なものを増やしていったらこうなった、とやさしい店主が言う。手作りの干し柿があったので、それも買おうとしたら「かたくなっちゃったから、ただでいい」とくれた。下仁田を目指していると言うと「この先、川を渡ったら下仁田だで」と教えてくれる。このあたりの訛りが独特で、なんとも心和む。

 また細道歩き。車はほとんど通らず、家々の間や畑の中を歩いて行く。無人駅千平(せんだいら)駅通過。もう午後2時だ。橋があった。修復工事中で車は通行止めになっている。見下ろしたらすごい高さ。切り立った岩の景観がなかなかいい渓谷だ。橋を渡ったところに、「不通(とおらず)渓谷」とあった。早くもネギ畑が現れた。当然下仁田ネギだろう。また車道に戻る。川の流域の平地はどんどん狭くなっていく。淡々と歩道を歩いた。山がどんどん近づく。

 清泉寺という寺が上信電鉄に沿ってあり、山門の目の前が踏切だ。ずいぶんやかましい寺だろうなと思う。自分のところでも鐘も鳴らすだろうし。カランカランポクポクチーンゴーン……。

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