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久住 昌之 Kusumi Masayuki(文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。文庫版『ひとり飲み飯 肴かな』(日本文芸社)発売中。

上信電鉄 じょうしんでんてつ

高崎(群馬県高崎市)から下仁田(下仁田町)までの33.7㎞、21駅。明治30年(1897)に全線開通。沿線には富岡製糸場があるように、生糸の運搬に活躍した。今回は東富岡から下仁田まで歩いた。

 そしてついに終点下仁田駅に到着。午後3時4分。もうこの先は山だ。腹減った。足疲れた。道沿いの駅裏にあった「きよしや食堂」。下仁田かつ丼というのがあるらしい。のぼりが立っている。おいしそう。だが貼り紙。「都合によりお休みさせていただきます」。ガーン。

 駅の正面側に出ると、古そうな路地発見。「和洋食堂なべや」お休み。「ラーメン・餃子 東陽軒」。「本日休ませていただきます」。うそ。かなり歩き回ったが、飲食店は一軒も開いていない。空腹のまま高崎まで戻るしかないのか。なんて日だ。下仁田はみな火曜定休か。

 絶望しかけたその時、見過ごした駅の真正面に「れすとらんヒロ」を発見。開いてる! 救われた! ボクはレストランを「れすとらん」と平仮名で書くようなセンスは嫌いだが、そんなことは言っていられない。「営業中」の文字に手を合わせたくなる気持ちで入店。

 客はボクだけだった。リュックを下ろし、帽子をとって首からカメラを外し、席に着いて、テーブルの下で靴まで脱いだ。5時間半、炎天下をほぼ歩きづめだった。とりあえず生ビール。この一口目が強烈にウマかった。
 下仁田かつ丼というのは、カツを醤油ダレにさっとくぐらせただけのカツ丼で、玉子でとじず、タレで煮ない。下にキャベツもしいていない。うーん。そうかぁ。キャベツ欲しいなあ。どうしよう。と思い悩んだが、ビールがあるので、カツサンドにすることにした。


下仁田かつ丼にせず、あえてカツサンド。
これが滅茶苦茶ウマかった

 これが大正解。揚げたてのカツのトーストサンド。味はソース。滅茶ウマ。思わずビールのおかわりをしてしまった。直角二等辺三角形に切ってあって食べやすい。店主、センスあるじゃん。ごめんなさい、平仮名でれすとらんはダサイなんて。

 大満足で駅に向かう。駅の待合室は女子高生でいっぱいだった。電車に乗ると軽い酔いと疲れで、すぐにウトウトしてしまった。

※「旅の手帖」2015年7月号より掲載しました。

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