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キッズも大人も楽しめる鉄道テーマパーク『鉄道ミュージアムの歩き方』往年の名車両や鉄道グッズなど、豊富な展示が魅力の鉄道ミュージアム。子供から大人まで遊んで学べる“こだわりの歩き方”をご紹介します。(文・写真=南 正時)

vol.5 超高速鉄道「新幹線」のルーツがココにある『四国鉄道文化館』

JR伊予西条駅東隣にある「鉄道歴史パーク in SAIJO」。そのメイン施設となる「四国鉄道文化館」には、JR四国多度津工場で保存されていた新幹線電車の0系と、DF50形1号機が保存展示されている。なぜ四国に新幹線が!? それは当時第4代国鉄総裁として新幹線の建設を実現し、「東海道新幹線の生みの親」と呼ばれる十河(そごう)信二氏の功績を顕彰するため。ここでは、新幹線誕生の貴重なエピソードを知ることができる。敷地内には「十河信二記念館」と「観光交流センター」も併設。

住所●愛媛県西条市大町798-1 TEL●0897-47-3575 開館時間●8:00〜19:00 休館日●水曜 入館料●大人300円、小・中学生100円 アクセス●JR予讃線伊予西条駅下車すぐ

「四国鉄道文化館」のホームページはこちら!

水の都の小さな鉄道博物館。そこには新幹線のルーツと四国の鉄道の歴史がある。

 愛媛県の西条市は「名水」の町である。環境省の「名水百選」にも選定されている「うちぬき」といわれる自噴井戸が市内の千数百個所以上に点在し、JR伊予西条駅のホームや駅前のバス停にまで名水が湧き出し、旅人も気軽に名水の恩恵を受けることができる。

 そんな名水の町に平成19年秋誕生したのが、伊予西条駅に隣接する「四国鉄道文化館」。「鉄道歴史パーク in SAIJO」にある鉄道ミュージアムで、真新しい木造建築の館内には、新幹線0系車両先頭部とDF50形ディーゼル機関車が展示されている。パークの敷地内にはこの四国鉄道文化館と、第4代国鉄総裁で、第2代旧西条市長も務めた西条市名誉市民・十河信二氏の資料を展示した「十河信二記念館」、西条市の観光や産業を紹介する「観光交流センター」も併設されている。

 入場券は昔懐かしい硬券の切符状のもので、これはよき旅の想い出になるし、大切なコレクターアイテムにもなる。

 入館してまず驚くのは、この手の施設では珍しい「土足禁止」。見学はスリッパに履き替えて行なう。館内に入ると0系新幹線とDF50形ディーゼル機関車が並んで展示されている。土足禁止の屋内展示施設なので、その姿は美しくまるで新車のような輝きを放っている。

 DF50形は非電化のローカル線のために造られた機関車で、昭和32年に1号機が造られ、以後昭和38年まで製造されてきた。国鉄のディーゼル機関車の中では初めて量産ベースに乗った機関車で、四国でも貨客列車を引いて活躍していた。展示されている1号機は引退後、国鉄多度津工場で大切に保存され「準鉄道記念物」にも指定。いつでも動かせる状態の「動態保存」機である。

 DF50形の隣に鎮座しているのは、0系新幹線だ。昭和39年10月にデビューした世界初の200km/h営業運転を果たした名車で、ここに展示されている車両は、大窓を使用した最後に製造されたもの。平成13年まで「ひかり」「こだま」として活躍していた車両は、運転席も公開されている。

 十河(そごう)信二は、明治17年(1884)に西条市で誕生。鉄道院に入り鉄道への道を歩み、新幹線構想を唱えた島安次郎らとともに次世代の新幹線構想を推進した。昭和30年、71歳で第4代国鉄総裁に就任後、盟友島安次郎の息子である島秀雄を国鉄技師長に迎え、世界初の超高速鉄道「新幹線」計画を推進し、昭和39年10月、ついに新幹線開業を迎えたのである。併設されている「十河信二記念館」には、新幹線建設の秘話、十河の偉業を称える資料が展示され興味深い。

 余談になるが、東京駅18・19番新幹線ホームの大阪寄り先端に「新幹線建設記念碑」が立っているのをご存知だろうか。その碑には十河のレリーフと座右の銘である「一花開天下春」の文字が刻まれ、日々往来する新幹線を静かに見守っている。四国鉄道文化館と合わせて見学すると、新幹線誕生の歴史がより偲ばれるだろう。

鉄道懐かし写真館

ミュージアムに展示されている名車両。その在りし日の勇姿を振り返ります。

試運転中の東海道新幹線
写真は開業直前の昭和39年6月に米原付近を走る試運転電車。筆者18歳のときの写真で、北陸本線の準急「しろがね」号の車中から撮影したものだ。
広窓0系新幹線
当初新幹線電車は座席2列で1つの広窓が基本だったが、石飛び事故による窓の損傷を想定して昭和51年から1座席1つの狭窓になった。写真は昭和52年、掛川付近で撮影の広窓0系電車。
DF50形ディーゼル機関車1号機
昭和31年製造の電気式ディーゼル機関車で、スイスとドイツ製のエンジンを搭載している。主に九州、四国、山陰、紀勢地区で活躍。九州ではブルトレ「富士」も牽引していた。写真は多度津付近を走るDF50形旅客列車(昭和53年3月撮影)


伊予西条駅から見た「四国鉄道文化館」。レールが駅構内から館内へと続いている


新幹線建設を推進した当時の国鉄総裁十河信二の胸像が玄関にあり、新幹線生みの親を顕彰している


木造りの館内にはアットホームな雰囲気でDF50形と0系新幹線が保存されている


十河信二記念館の一角には書斎が再現され、十河の人柄を偲ばせている


0系新幹線の運転台はアナログ感覚が漂う。公開されているのがうれしい


伊予西条駅構内にはSL時代の赤レンガの給水塔なども残る。貴重な鉄道文化遺産だ


鉄道文化館の展望デッキからは駅構内のカーバイド倉庫、給水塔、駅を発着する列車が一望できる


伊予西条駅ホームの名水「うちぬき」は美味しい水で、名水百選にも選定されている

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