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まだまだ知られざるご当地の味 行って食べたい!ニッポンA級発掘グルメ

vol.8 村上の鮭 [新潟県村上市]


北海道をはじめ、他の地域では鮭の頭を上にして吊るすのが主流だが、村上市では逆。一説によると、首吊りを嫌うところから、頭を下にして干し上げるようになったと言われている

村上市の方言で「ボヤ」とは魚を示す幼児語だ。珍重される魚につけられ、イヨボヤ(「ウオ(魚)」が訛って「イヨ」)、サケボヤと呼ばれ、旬がくると家庭の食卓にも頻繁に鮭料理が上る

現在、居繰網漁は三面川でしか行われていない。舟を操るには熟練した技術が必要。三面川鮭産漁業協同組合の組合員およそ1400名のうち、居繰網漁を行うのは20名程度だという

山北地区の大川ではコド漁が中心。川底に杭を打ち、竹、柳などを取り付けた箱型の装置「コド」を使う。中に入った鮭は、ミマドという穴から覗き、カキマドから鉤(かぎ)を入れて引っかける

鮭が育んだ町の歴史に包まれ多種多様な郷土料理を味わう

 秋の村上市では、軒先に塩引鮭(しおびきさけ)を吊るしている様子が多く見られる。塩引鮭は、鮭にまんべんなく塩をすり込んで1週間ほどねかせたら、流水で余分な塩を抜き、2~3週間こうして寒風にさらすのだという。行き交う人の興味と食欲をそそる、この町らしい景色だ。塩引鮭は、生に近い味わいの新巻鮭と比べ、塩味が効いて、旨味が凝縮されているのが特長。焼けば身がふっくらし、ジューシーである。

 村上市には、鮭を使った料理がずいぶんたくさんある。頭から尻尾まで余すことなく使い、メニューは、実に100種以上。塩引鮭は、あくまでその一例。焼き漬け、味噌漬け、醤油はらこ、「三面鍋」とよばれる、鮭の身とはらこ、旬の野菜を入れた寄せ鍋(写真本ページ上部)など庶民的なものから、料亭のコース料理までさまざまだ。
 日本初の鮭の博物館『イヨボヤ会館』で館長を務める奥村芳人さんは、「鮭は庶民的な魚であり、また“年取り魚(としとりざかな)”といって大晦日のごちそうにもなるんです」と教えてくれた。

 10月から12月上旬にかけて、村上市を流れる三面(みおもて)川に「ウライ」とよばれる柵が仕かけられる。遡上してくる鮭の行く手を阻み、捕らえる漁法だ。主にふ化増殖を目的としている。
 また、ウライから下流では、伝統的な居繰網(いぐりあみ)漁を展開。江戸時代から続く漁法で、3艘1組となり、ひし形に広がって操業する。川上の2艘が網を広げ、残りの1艘がそこに鮭を追い込む、息の合った動きが見ものだ。

 史実を遡ると、なんと平安時代中期の法典『延喜式(えんぎしき)』で、既に村上の鮭について触れられている。それによると、越後国(現在の新潟県)は鮭で税を納めていたという。
 さらに、江戸時代中期には村上藩士・青砥武平治(あおとぶへいじ)が、世界で初めて鮭の母川(ぼせん)回帰性に着目。母川回帰性とは、秋になると産卵のため鮭が故郷の川に戻ってくる習性を指す。「武平治は川漁師から話を聞くなどして研究を進めるうち、母川回帰性に目をつけるようになりました」と奥村さん。乱獲などが原因で三面川の漁獲量が減少していた時のことである。武平治は分流(種川)を造り、より産卵しやすい環境(産卵場)を整えて、そこに鮭を導けば、回帰率は上がるはず、と「種川の制」を村上藩に提案。藩はそれを受け入れた。その結果、世界初の自然ふ化増殖に成功し、再び鮭の漁獲高は増加に転じ、藩の財政を支えるまでになった。
 鮭の恵みによって成り立ってきた村上の人々にとって、魚といえば「鮭」。今も昔も欠かすことのできない存在なのだ。


SPOT いざ、鮭を食べよう!

三面川鮭産漁業協同組合では毎年1000万粒以上を採卵し、春になると5~7cmに成長した稚魚、約800万尾を放流する。これらは日本海へ出てさらに成長し、4年後、産卵のため三面川に帰ってくるのだ。
10月から始まる鮭漁は、11月に漁獲量がぐんと増え、12月にピークとなる。と同時に、町には観光客が集まり、鮭料理店で舌鼓を鳴らす。村上市ならではの、焼き物、煮物、揚げ物、生食などバラエティに富んだソウルフードを味わって!

食べてみて気に入ったら購入できるのもうれしい|はらこ茶屋

市の特産物を扱う『サーモンハウス』の2階。「塩引御膳」は塩引鮭を中心に、鮭の頭の軟骨をスライスした氷頭なます、岩船麩の煮物など地元ならではの料理を楽しめる。金額に応じ、醤油はらこ、昆布巻、酒びたしといった鮭料理を追加でき、旅先らしい贅沢も可能。地酒「〆張鶴」と相性抜群だ。

塩引御膳:2,100~3,675円(写真は3,150円のもの)
〆張鶴:一合525円
営業時間:11:30~15:00・17:00~22:00、12月31日休
住所:村上市塩町13-34
交通:JR羽越本線村上駅から徒歩20分
TEL.0254-52-1990 店ホームページはコチラ

老舗の味を堪能!
めくるめく鮭料理の世界|料亭 能登新

創業270年。鮭と村上牛が二枚看板だ。鮭食べきりコースでは20種の鮭料理が登場。中でも「どんびこ(心臓)の旨煮」はぷりっと歯ごたえがあり、上品な味わい。よその土地だと簡単にお目にかかれない一品なので、じっくり味わおう。鮭は網元から仕入れ、鮮度のいいうちに捌くのがこだわり。

鮭食べきりコース:10,000円
鮭ランチ(ミニ会席):3,150円
営業時間:11:30~13:30LO・17:00~22:00LO、不定休
住所:村上市飯野2-1-9
交通:JR羽越本線村上駅から徒歩15分
TEL.0254-52-6166 店ホームページはコチラ

くつろぎの宿屋が提供する
安くて旨い丼もの|おもてなしの宿 石田屋

白飯に刻みのりを敷き、ドサッとはらこ(いくら)をのせた「はらこ丼」が人気。一粒ひと粒きれいなオレンジ色で、皮が薄く、粒が大きいのは質のいい証拠だ。味付けは、市内にある小林醤油店の薄口醤油と、同じく市内の大洋酒造「紫雲」を4:6で合わせて使用。魚卵本来の甘みを感じて。

はらこ丼:ミニ 850円、並 1,250円、大 1450円
みおもて定食(鮭料理):1,800円
営業時間:11:00~20:30LO(日・祝は~15:30LO)、12月31日~1月4日(月1回、月休)休
住所:村上市田端町10-24
交通:JR羽越本線村上駅から徒歩1分
TEL.0254-53-2016 店ホームページはコチラ

村上市周辺の鮭料理を扱う飲食店リストはコチラ 村上市周辺の鮭料理を扱う飲食店リストはコチラ

ACCESS いざ、村上へ行こう!

<東京方面から>

JR東京駅から上越新幹線「とき」で約2時間23分の新潟駅下車、
JR特急「いなほ」に乗り換えて約48分の村上駅下車(所要時間約3時間58分)

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期間・列車・区間・席数限定での発売。インターネットからの予約で運賃と料金(普通車指定席)が50%割引となります。
【発売期間】乗車日の1カ月前の午前10時~13日前の午前1時40分
【対象期間】利用期間中~平成24年11月30日

<東京都内から通常期に利用した場合><東京都区内から新潟まで「お先にトクだ値スペシャル」(乗車券付き)適用の上越新幹線ときを利用した場合>

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取材・執筆・構成:信藤舞子(teamまめ)
写真提供:村上市商工観光課 、はらこ茶屋、料亭 能登新、おもてなしの宿 石田屋
※掲載されているデータは平成24年11月現在のものです。

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