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まだまだ知られざるご当地の味 行って食べたい!ニッポンA級発掘グルメ

vol.17 北九州の豊前海一粒かき [福岡県北九州市]


カキ養殖は筏垂下式。ホタテの貝殻に付着した種ガキをロープに連結させ、水深7~8mの豊前海に筏から吊り下げる。

出荷作業は手作業。海から引き揚げたカキは洗浄機で洗い、汚れを落とし、磨き、紫外線で殺菌処理した海水に浸けてから、出荷される。その手間が、えもいわれぬ味と風味を加えるのだ。

カニ・カキロードを行けば、曽根地区には漁師が営む冬期限定のかき小屋『はちがめ』が。カキ焼きはもちろん、同じ海域で獲れる豊前本ガニなどのサイドメニューも充実する。

『「豊前海一粒かき」のかき焼き祭り』は、門司港レトロ中央広場で、2014年1月25日(土)・26日(日)に開催。入場無料。カキ焼きを味わう場合は、カキ1袋(1.2kg、10~15個程度)、炭焼きセット代300円。例年、約2万人が訪れる。

栄養豊富な豊前海で育つ大粒で濃厚な海のミルク

 豊前海(ぶぜんかい)は旧豊前国の北部、現在で言う、福岡県北九州市北部から大分県宇佐市にわたる地域に面する海域だ。
 もともと界隈では海苔の養殖が盛んだったが、不作の折、対策として考えられたのがカキの養殖だ。早速、広島や宮城などで技術を習得すると、1981(昭和56)年、北九州市門司区恒見地区で、福岡県初のカキ養殖がスタート。殻付きのまま出荷することから、2009(平成21)年、福岡県が誇るブランド食材『豊前海一粒かき』となり、このうち6割以上が今も恒見漁協から出荷されている。

 カキは通常、種ガキを吊るしてから20カ月ほどかけて育つもの。だが『豊前海一粒かき』は、なんと8ヵ月という、異例の速さで育ち上がる。その秘密は豊前海だ。
 干潮時に最大約2.5kmも潮が引く、ミネラル豊富で広大な曽根干潟と、多くの河川が栄養をたっぷりと海へと運ぶことから、豊前海はとにかくエサとなる植物性プランクトンが豊富。しかも、カキ養殖を始めた当初に着工し、2006年に開業した新北九州空港の立地が波を消してくれることで、カキ筏の周辺の潮の流れはいつも穏やか。餌であるプランクトンを食べる時間と量が十二分にあるため、カキはすくすくと身を大きく太らせるという。
 そんな『豊前海一粒かき』は、水揚げすると、ひとつひとつ手作業で磨かれ、紫外線殺菌処理した海水に1日浸し、風味をさらに増す。北九州市6次産業・地産地消課の井上麻美さんは、「豊前海の恵みを受けて丸々と太った身は、鮮やかな磯の香りと甘みがあって、アクもない。すっきりとした味わいなんですよ」と、胸を張る。大粒で濃厚な風味こそが魅力なのだ。

今が旬! 冬の北九州は“カニ・カキロード”を目指せ!

 カキの産地は恒見だけではない。市内沿岸に複数の産地が点在し、門司区から小倉南区にかけて産地を結ぶ道は通称『北九州カニ・カキロード』と呼ばれている。5~12月の豊前本ガニと、11~3月の豊前海一粒かきのシーズンに、看板や幟(のぼり)を目印に進めば、約10軒が点在する直売所やカキ小屋へと辿りつけるようになっている。
 市場出荷がほとんどないため、カキを手に入れるならカキ直売所へ。基本的に漁協や漁師たちで営まれ、カキ剥き用のカキナイフも1本150円ほどと安価に手に入る。しかも、カキの味は生産者や海域によっても微妙に異なるとか。あちこちの直売所でカキをゲットして、食べ比べてみるのも楽しみだ。
 地元ではこの時期、家庭でもお手軽に殻付きカキを味わうという。生食はもちろんだが、殻付きカキの調理で最もポピュラーな方法が、レンジを用いたカキ蒸し。殻付きのまま、カキにふんわりとラップをかけてレンジで3~4分。勝手に口がパカッと開くため、カキ剥きナイフ要らずで、キュッとカボスを搾って食べれば、とろんとクリーミー。ジューシーなお汁も飲み干せる。

 そしてカキが最もおいしくなるのは1月から。それに合わせ、門司港レトロ中央広場では毎年『「豊前海一粒かき」のかき焼き祭り』を開催している。200台もの焼き台がずらりと並び、門司港の地ビール、地酒、地焼酎などとともに、その場でカキ焼きを存分に堪能できる趣向だ。殻付きカキの早剥き競争に参加したり、地元関門海峡タコの串焼きなど、地元食材を使った料理や加工品も味わえ、楽しみは尽きない。

SPOT いざ、豊前海一粒かきを食べよう!

豊前海一粒かきのシーズンは11~3月。ダイナミックに炭火で焼くカキ焼きを堪能するなら、この時期にだけ開くカキ小屋へ。しかし、カキの美味しさはそれだけにあらず。焼き、フライ、カキ飯をはじめ、バリエーション豊かな産地ならではの味わいにも、巡り合いたい。

恒見漁師が丹精込めて育てた味わい|恒見 焼き喰い処

恒見地区の漁協が直営し、カキ漁師が水揚げした新鮮なカキが味わえる冬期限定のカキ小屋。炭火焼きでダイミナックに味わえるかき焼きで、大粒で濃厚な旨味を満喫すべし。また、カキのエキスを米粒が吸い込んだかき飯や、風味がじんわり染み入るかき汁各300円なども用意されている。

かき・炭セット(炭、カキ剥きナイフ、軍手含む):1,500円、かき(1盛り約1.2kg)1,000円
営業時間:11月~3月の10:30~16:00LO、水曜(12月25日~1月5日及び11・12月の平日)休
住所:北九州市門司区大字猿喰(さるはみ)新門司海浜緑地内
交通:JR鹿児島本線門司港駅から車で約20分
TEL. 080-2720-5861 ホームページはコチラ

和風から洋風まで多彩な味わいの焼きガキ|焼きもんや 菜’s(サイズ)

地元の野菜・海産物を、様々な焼きスタイルで堪能できる。旨味が濃い豊前海一粒かきは、毎日漁師から仕入れる冬の定番。調味料を使わずに本来の風味を食す生ガキ、カボスを搾っただけの焼きガキ、トマトチーズ焼きからもろみ味噌焼きまで、しっかりした旨味ゆえの味変化も楽しみ。

牡蠣のバジルオリーブ焼き:800円
営業時間:11:30~14:00・17:00~23:00、月曜休
住所:北九州市小倉北区船場町7-11
交通:JR鹿児島本線小倉駅小倉城口から徒歩9分
TEL. 093-522-8313 ホームページはコチラ

豊前海一粒かきを盛り込んだ門司港ならではの贅沢ランチ|門司港ホテルメインダイニング ポルトーネ

関門海峡を望む建物は、イタリアの建築家アルド・ロッシ氏が手掛けたホテル。臨場感溢れるオープンキッチンでは、カキとフグの贅沢な競演に心躍る冬期限定のランチを。幕開けは、生ハムで巻いたカキの蒸し煮のアミューズ。ピクルスなどを用いたラヴィゴットソースの酸味が効いている。

港町ランチ:1,900円(税・サ込み)
営業時間:ランチ11:30~14:30LO
住所:北九州市門司区港町9−11
交通:JR鹿児島本線門司港駅から徒歩1分
TEL. 093-321-1111(代) ホームページはコチラ

北九州市周辺の豊前海一粒かきを扱う宿・飲食店リストはコチラ

ACCESS いざ、北九州へ行こう!

<大阪方面から>

JR新大阪駅から山陽新幹線「のぞみ」で約2時間42分の小倉駅下車、JR鹿児島本線に乗り換え、約13分の門司港駅下車(所要時間約3時間)

<博多方面から>

JR博多駅からJR特急「ソニック」で約44分の小倉駅下車、JR鹿児島本線に乗り換え、約13分の門司港駅下車。
またはJR特急「きらめき」で約1時間10分の門司港駅下車

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大阪市内~北九州・福岡間を、新幹線の普通車指定席で往復できます。また、新大阪~小倉または博多間は、「みずほ」「さくら」の普通車指定席・普通車自由席にも乗車可能(山陽新幹線内、普通車個室の利用はできません)。京都市内・神戸市内発の設定もあります。
【発売期間】通年(前売りの取扱いは乗車日の1ヵ月前から) 【利用期間】通年 【有効期間】7日間

<大阪市内から通常期に利用した場合><大阪市内から新幹線北九州・福岡割引きっぷ(大阪市内発)利用の場合>

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設定区間内の発着駅からJR門司港駅までの往復JR券(普通列車または特急自由席)と鉄道記念館の入場券がセットになったおトクな割引きっぷです。
※設定区間内の発駅は、鹿児島本線二日市・南福岡・博多・香椎・福間・赤間・折尾・黒崎、日豊本線下曽根・行橋・中津、筑豊本線新飯塚駅、後藤寺線田川後藤寺。
【発売期間】通年 【利用期間】通年 【有効期間】2日または5日間 ※発駅により異なる

<博多市内から通常期に利用した場合><博多市内から 九州鉄道記念館きっぷ 利用の場合> 九州鉄道記念館きっぷの詳細はコチラ ●「新幹線北九州・福岡割引きっぷ(大阪市内発)」の詳細はコチラ

おトクな「九州鉄道記念館きっぷ」で行こう!

取材・執筆・構成:佐藤さゆり(teamまめ)
協力:北九州市役所、恒見焼き喰い処、焼きもんや菜’s、門司港ホテル
※掲載されているデータは2013年12月現在のものです。

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