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門司港&小倉 ノスタルジックな町歩き

明治、大正、昭和の町並みが残る港町へ 門司港エリア

初めて訪れたのにどこか懐かしい! レトロな町並みを気ままに歩く

 ホームに降り立つと遠くから船の汽笛が聞こえてきた。明治、大正、昭和の町並みが残ることで知られる門司港周辺だが、駅からしてひと味異なる。大正3年(1914)に建築された木造駅舎の外観は、左右対称のネオ・ルネッサンス様式。淡いピンクの外壁に木枠の縦窓、待合室からトイレまで一貫してレトロ感たっぷりである。駅に降り立った瞬間から、すでにノスタルジックな雰囲気全開といった感じだ。

 明治22年(1889)に開港し、国際貿易港として栄えた門司港。駅周辺には往時の栄華を偲ばせる多くの歴史的建造物が建ち並ぶ。例えば、大正10年(1921)に建設された「旧門司三井倶楽部」。三井物産の社交施設として建築され、かの物理学者アインシュタイン博士も宿泊したという。館内を彩るシックな調度品は格調の高さをうかがわせ、まさに漫画の『はいからさんが通る』の世界である。

 テーマパークのように整備された港周辺から一変、港を背中に山手の方へ歩くと、昔ながらの商店街散策も楽しめる。脇道に入ると風情あふれる食事処や喫茶店があり、昭和の街角に迷い込んだかのよう。旅の目的だった夜景を見る前に、すっかり門司港の町の虜になってしまった。

「関門海峡クローバーきっぷ」で、雄大な関門海峡めぐりへ

観光列車「潮風号」からめかり絶景バス、関門連絡船、サンデンバスまで関門海峡をぐるりとめぐる4つの乗り物に1回ずつ乗車できるきっぷ。関門トンネル人道を使えば、関門海峡の海の下をのんびりと歩いて渡ることもできる。 ●発売箇所:九州鉄道記念館駅、関門海峡めかり駅、サンデンバス切符売り場(下関駅)、関門汽船売り場。大人900円、子ども450円

門司港のノスタルジックSPOT

光り輝く港町にうっとり 門司港レトロ・ナイトファンタジー
東京タワーやレインボーブリッジなどの照明を手がけた世界的な照明デザイナー・石井幹子氏プロデュースによる照明演出が夜の船だまり周辺を彩る。週末は22時まで。門司港ホテルの最上階「ダイニングバー・テンポ」など、その景色を贅沢に楽しめるスポットも点在。●TEL.093-322-1188(北九州市門司港レトロ課)。春・秋期18:00~、夏期19:00~、冬期17:00~、月~木曜は~21:00、金~日曜・祝日は~22:00。門司港レトロ地区一帯。JR門司港駅から徒歩1分
行き交う船、鳴り響く汽笛… 和布刈第2展望台(関門海峡)
1日に4回も潮の向きが変わり、その潮流の速さで知られる海峡。一番幅の狭い早鞆(はやとも)の瀬戸では、10ノット(時速約18km)を超える潮流が発生することも。展望台からは関門海峡にかかる関門橋や海峡を行き交う大型タンカーの様子などが一望できる。●北九州市門司区和布刈(めかり)公園内。JR門司港駅からタクシーで10分
国際貿易港の歴史が織りなす港町門司港レトロ
門司港は明治22年(1889)に国際貿易港として開港。最盛期には1カ月に約200隻もの外国の客船が入港したという。徒歩圏内に往時を偲ばせるレトロな西洋建築(写真は旧門司三井倶楽部)や最新の都市機能を備えた建物が混在する。歩いてゆっくりめぐるもよし、人力車に揺られながらその景色を楽しむもよし。●門司港レトロ地区一帯。JR門司港駅から徒歩1分
レトロ地区と海峡を結ぶトロッコ列車 観光列車「潮風号」
門司港レトロ地区から和布刈地区までの海岸線約2kmを10分で結ぶトロッコ列車。最高時速15km。関門海峡の潮風を肌で感じながらの列車旅は格別だ。●TEL.093-331-1065。平成23年度は3月19日~11月27日の土・日曜・祝日(3月25日~4月3日、4月29日~5月5日、7月21日~8月31日は毎日運行)。大人片道300円、子ども150円
レトロな門司港を象徴する駅舎 門司港駅
大正3年(1914)建築のネオ・ルネッサンス様式木造駅舎。九州の鉄道の起点を表す「0哩(マイル)標」や戦時中の金属供出を免れた「幸運の手水鉢」など、往時の姿を今なお残す。駅員の制服は、明治時代の鉄道発祥時のスタイルを模したデザイン。●TEL.093-321-6110。北九州市門司区西海岸1-5-31
門司港エリア発祥の絶品グルメ 焼きカレー&門司港レトロバーガー
カレーライスにチーズなどをのせ、オーブンで焼き上げた焼きカレーは門司港エリアの飲食店やホテルで味わえ、それぞれ個性も豊か。また、「レトロひまわり館」の門司港レトロバーガー(400円)は希少な小倉牛を使用した人気グルメだ。●レトロひまわり館=TEL.093-321-2520。土・日曜・祝日の11:00~17:00に販売。北九州市門司区東港町2-17。JR門司港駅から徒歩10分
レトロな町へタイムスリップ 清滝・錦町・栄町銀天街(路地裏散策)
地元の人の生活の場となっている栄町銀天街は港町の人情と触れあえるスポット。商店街の脇道には車も通れないレトロな雰囲気の細い路地が続く。その他、かつて料亭が建ち並び、多くの芸者が暮らしていた錦町や清滝界隈には、木造3階建ての建物や料亭跡などがあり、路地裏散策が楽しめる。●JR門司港駅から徒歩6分

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明治、大正、昭和の町並みが残る港町へ 門司港エリア

人情あふれる市場の活気に、お腹も心も大満足!

 2日目は北九州市の中心地・小倉の街へ。大正時代に誕生し、北九州の台所といわれる旦過(たんが)市場の活気を体験するのが目的である。

 話は変わるが焼うどんや競輪、パンチパーマなど、小倉発祥のものは意外と多い。実はアーケード街もそのひとつ。今では屋根付きの商店街は全国どこでもあるが、その第1号が小倉の魚町銀天街なのだ。ちなみに、アーケードとアーケードを結ぶジョイント屋根の上には太陽光発電システムを採用するなど、環境未来都市を目指す北九州市らしい取り組みも。その電力は商店街の照明の一部に使われているんだとか。なんともエコな街である。

 魚町銀天街を抜け、旦過市場に到着。通りに屋根はあるが道幅は魚町銀天街の半分ほど。その両側に、魚介や野菜、総菜などを売る店が約120軒並ぶ。ちょうど昼時で通りは買い物客でひしめき合っていた。

 旦過市場でぜひ体験してみたかったのが大學丼。さっそく大學堂を訪ね注文すると、白御飯だけが盛られた丼を手渡された。実はこの大學丼のおかずは市場に並ぶ食材から選ぶ。自分の食べたいものを自分流にアレンジできる丼なのだ。今回は海鮮丼に挑戦。新鮮な刺身が並ぶ魚屋の店頭で「このお刺身って大學丼にのせられますか?」と聞くと「それならこっちの盛り合わせの方がいいっちゃない?」と返ってくる。通りが狭いからだろうか、店の人との距離感も近く感じる。まるで自分の地元で買い物している感覚である。

 お腹もいっぱいになったところで、小倉城へ散策に。城のそばにある「小倉城庭園」で抹茶とお菓子を別腹に放り込みながら、しばし休憩。門司港から小倉をめぐる旅を振り返る。レトロな町歩きあり、城下町の食べ歩きあり。共通しているのはどこに行ってもなぜか懐かしい。北九州の街は、日本の町の原風景そのものかもしれない。

小倉のノスタルジックSPOT

地元の生活の場に潜入! 旦過市場
新鮮な魚介や青果などを販売する店が約120店舗。北九州の台所と呼ばれる活気あふれる市場。郷土料理「ぬかみそ炊き」をはじめ、さまざまな山海の幸を手に入れることが可能。中でも市場で好きな食材を選んで白御飯(200円)にのせていただく大學堂の「大學丼」は、市場を代表する名物のひとつだ。●旦過市場=北九州市小倉北区魚町4丁目。JR小倉駅から徒歩10分 大學堂=TEL.080-6458-1184。10:00~17:00(大學丼は11:00~)、木・日曜・祝日休。北九州市小倉北区魚町4丁目4-20。JR小倉駅から徒歩10分
海底を立って歩くタコ? 久津の葉(関門海峡たこ料理)
関門海峡で獲れるタコは、激しい潮流に流されないように岩にしがみつき、海底を立って歩くといわれている。「久津の葉」ではそんな関門海峡のタコを使ったフルコース(1人3500円)が楽しめる。●TEL.093-562-6277。11:30~14:30、17:00~22:00(土・日曜・祝日は12:00~21:00)、月・第2日曜休。北九州市小倉北区室町2-3-5。JR西小倉駅から徒歩5分
アーケード街発祥の地を散策 魚町銀天街
旦過市場の道向かいに位置し、日本初のアーケード街として昭和26年に誕生。名前の由来は「銀の天井に輝く街」。アーケード街とアーケード街を結ぶジョイント屋根には、太陽光発電パネルも設置。環境に配慮した環境モデル都市「北九州市」の取り組みを感じることができる。●北九州市小倉北区魚町。JR小倉駅から徒歩5分
風情あふれる庭園でちょっと一服 小倉城庭園(呈茶体験)
小倉城横に江戸時代の庭園と大名屋敷を再現。池の上にせりだした書院棟からは庭園や小倉城を望むことができる。庭園内の立礼席では、抹茶と季節のお菓子を楽しめる(平日500円、土・日曜・祝日300円)。●TEL.093-582-2747。9:00~17:00(4~10月は~18:00)、立礼席の受付は10:00~16:00、無休。北九州市小倉北区城内1-2 。JR小倉駅から徒歩15分
明治28年創業時から変わらない味 湖月堂
しっとりとした生地で栗の入った餡を包み込んだ栗饅頭(210円)は、明治28年(1895)の創業当時から人気の小倉を代表する菓子のひとつ。また、隣接する甘味・お食事処では、落ち着いた中庭のあるゆったりとした空間でお茶や食事が楽しめる。●TEL.093-521-0753。11:00~21:30(LO20:45)、無休。北九州市小倉北区魚町1-3-11。JR小倉駅から徒歩3分
しなやかで力強い織りにほれぼれ 布アネックス(小倉織 縞縞shima-shima)
先染めの木綿の糸を使用して織り上げた縦縞が特徴。中でも小倉織ブランド「縞縞shima-shima」のふろしき(3150円~)は2010年グッドデザイン賞を受賞。3月16~22日は井筒屋小倉店にて凱旋帰国展を開催。4月24日までは小倉城庭園内にて企画展も開催予定。●TEL.093-561-8152。11:00~19:00、水曜休。北九州市小倉北区大手町3-1-1F。JR小倉駅から徒歩20分

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北九州TOPIC

ノスタルジックな気分に浸れる一大イベント 門司港レトロ大正浪漫100年祭 期間:平成23年4月3日(日)~12月31日(土)

平成23年は大正元年から100年目。門司港レトロ地区では、それを記念して「門司港レトロ大正浪漫100年祭」が開催される。JR門司港駅で行なわれるオープニングセレモニーのジャズコンサートをはじめ、大正時代に人気のあった大正浪漫グルメやサクラビール(地ビール)の復刻、大正時代の映画上映会など、港町が大正浪漫一色に!

●問合せ=門司港レトロ総合インフォメーション TEL.093-321-4151

地図

■北九州市 ひとり旅情報
門司港レトロ地区では、レトロな建築群を解説付きで案内してくれる人力車に乗るのもおすすめ。小倉地区を散策するなら、繁華街が集中するJR小倉駅から小倉城までのエリアへ。
■アクセス
【鉄道】小倉駅へ…東京駅から新幹線「のぞみ」で約4時間45分、名古屋駅から同・約3時間5分、新大阪駅から同・約2時間10分
【航空機】北九州空港へ…羽田空港から約1時間40分・1日16便
■観光の問合せ
北九州市観光情報コーナー TEL093-541-4189
北九州市観光・コンベンション課 TEL.093-582-2054

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取材・文=玉村恵理子 撮影=歌岡泰宏
※掲載されているデータは平成23年3月現在のものです。

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