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One Theme☆駅からはじまる旅 ―伯備線・清音駅―

『JR伯備線&井原鉄道で金田一耕助ミステリー誕生の舞台をめぐりたい』 ~岡山県倉敷市~

清流の高梁川を渡り、旧山陽道宿場町「川辺」ヘ

 昭和12年初冬、この事件は、江戸時代までは山陽道川辺宿で本陣を務めていて、明治になって山ノ谷集落に居を移し、大地主として暮らしていた一柳家で起こった。当主の結婚式の夜、密室で新郎新婦が血まみれになって死んでいたのだ。その謎を解くために登場するのが金田一耕助。ここに、以後77の難事件を解決する名探偵がデビューするのである。

 今は、山ノ谷集落は井原鉄道川辺宿駅が最寄り駅になるが、当時は国鉄伯備線清音駅が最寄り駅。金田一耕助もここから歩きはじめた。

 清音駅から西に向かうと、間もなく岡山三大河川の一つの高梁川に出る。美しい大河である。今は自動車専用道と自転車・歩行者専用道の2本の橋が架かっているが、金田一がブラブラと渡ったのは南側の旧山陽道に架かる川辺橋。川を渡った堤防の先に旧川辺宿がある。高梁川の氾濫で何度も流されているので、古い宿場の面影はないが、どことなく余韻が漂う心地よい町筋だ。金田一はこの川辺宿の街はずれから北西に田んぼの中の一本道を岡田村役場に向かう。

現在は伯備線と井原鉄道の乗り換え駅である清音駅。金田一耕助がこの駅に降り立ったのは昭和12年11月27日

金田一耕助も渡っただろう旧山陽道に架かる人と自転車専用の川辺橋。この下に旧山陽道川辺の渡しの船着き場(復原されている)もあった

密室のトリックを生んだ長閑な農村集落

 川辺宿から金田一耕助が歩いた道。今は車も増えてしまったが、この道より少し西に、井原鉄道川辺宿駅を起点にした「ミステリー遊歩道」があるので、途中からその道に入る。

 やがて旧岡田村役場のあった児童公園。その向かいに小説で「三本指の男」が現れる一膳飯屋は、今も面影が漂う。この一膳飯屋の隣、三宅酒店から横溝正史が疎開していた家はさほど遠くない。辺りは伸びやかな田んぼだ。

 横溝宅を正面に見る手前の四つ辻に小さな祠がある。「濃茶(こいちゃ)の祠(ほこら)」である。横溝作品『八つ墓村』で「たたりじゃぁ~」と叫んだ老婆「濃茶の尼」はこの祠から命名。その横に小さな石。横溝が散歩の折によく座っていたといい、今では誰言うともなく「耕助石」。

 建物も庭もよく手入れされた横溝家は少し小高い地にあり、縁側に立てばこの長閑な風景を家に居ながらに眺められる家だ。

 この家を背に、山際の道を左に行けば『獄門島』に名前の出てくる千光寺から、横溝の散歩コースの一つ「山谷池」に行ける。

 もう一つの横溝お気に入りの散歩コ-スが「岡田大池」への道。濃茶の祠から西に向かう。岡田大池はこの辺りの溜池の中でも一際大きい。その東岸の樹林の小径を南に歩くと横溝の世田谷の自宅書斎を再現した横溝コーナーのある「倉敷市真備ふるさと歴史館」に出る。

 歴史館からは再びミステリー遊歩道を、鉄道橋脚に金田一耕助の影絵が描かれた井原鉄道川辺宿駅に戻る。

川辺宿の家並みの中ほどにある本陣跡を示す碑。川辺は明治26年の大水害で町が流され、今は跡を確認するだけ

井原鉄道川辺宿駅前からスタートする「ミステリー遊歩道」。一面の田んぼの中の道は稲穂の匂いが心地よい

横溝疎開宅近くにある濃茶の祠。中に「南無濃茶大権現」の文字。岡田藩家老の奥方病気平癒に由来する祠とか

小説の中の一膳飯屋があった場所の隣に位置する三宅酒店。旧岡田村役場跡の向かいにあり、三本指の男が最初に目撃された場所

昔のままの姿の横溝正史疎開宅。座敷に上がると奥の座敷の障子に突然、金田一耕助らしき人物のシルエットが……

濃茶の祠のすぐ脇にある耕助石と名付けられた石。横溝正史自身が散歩の途中でよく腰掛けていたそうである

~昭和21年~名探偵 金田一耕助はここで誕生した 巡・金田一耕助の小径

シンプルラインが田園風景によく似合う井原鉄道のワンマンカー

横溝正史の家を取り巻く風景は忙しいものは何もなさそうに長閑

「ごめんください」。迎えてくれるのは横溝か、それとも金田一か!?

イベントスケジュール

◆ミステリーウォーク
(平成21年10月1日~11月30日の毎日)
『本陣殺人事件』で金田一耕助がめぐった場所を辿り、謎解きにチャレンジ! ミステリーブック(300円)を購入してスタート。全長約7kmのコース。
《開催場所》 倉敷市真備町(横溝正史疎開宅周辺)
《スタート》 清音駅(JR伯備線・井原鉄道)
《ゴール》 川辺宿駅(井原鉄道)
《ミステリーブック販売場所》 倉敷駅前観光案内所、井原鉄道(総社駅・清音駅・井原駅・神辺駅)、真備ふるさと歴史館
◆特別講演会
(平成21年11月23日 13:30~16:00、開場は12:30)
《出演者》江藤茂博(二松学舎大学教授)、山口直孝( 〃 )、浜田知明(探偵小説研究家)
《開催場所》 くらしき作陽大学 聖徳殿(JR新倉敷駅から徒歩15分)
《入場料》 無料(事前予約可能)
※定員(450名)になり次第、受付終了
◆特別企画

『本陣殺人事件』トリック再現 《開催日時》 平成21年10月11・25日、11月8・22日の10:00と14:00の1日2回
《開催場所》 真備ふるさと歴史館前広場

1000人の金田一耕助(案内人付き) 金田一耕助のコスプレをして、ミステリーウォークに参加しよう!
《開催日時》 平成21年11月22日 11:00~16:00
《集合場所》 JR倉敷駅2階北デッキ
《参加方法》 事前予約制・参加費無料(移動に伴う実費やミステリーブック代は参加者負担)。
★希望者には「横溝正史疎開宅弁当」の販売のほか、横溝正史疎開宅の旧屋根瓦(数量限定・実行委員会の鑑定書付き)のプレゼントあり。

金田一耕助パーティ 記念講演会出演者との夕食会
《開催日時》 平成21年11月22日 19:00~21:00(受付開始18:30)
《開催場所》 倉敷アイビースクエア(JR倉敷駅から徒歩10分)
《参加方法》 事前予約制・参加費5000円(料理代実費)
※定員100名
★参加者には非売品クリアファイルをプレゼント!

横溝正史疎開宅弁当の販売 横溝正史氏が好んで食した地元のおこわを販売
《販売価格》 500円(日曜・祝日のみ20食限定の予約販売)

横溝正史は、太平洋戦争末期、父親の故郷に近い岡山県岡田村桜(現倉敷市真備町)に疎開し、村の因習や昔話をヒントに本格推理小説『本陣殺人事件』を書き上げた。名探偵金田一耕助が生まれたのはこのときである。

コチラもおすすめ!

横溝正史疎開宅
昭和20年5月から23年7月まで家族とともに暮らした家。佇まいはほぼ昔のまま。特に大きな石を配した穏やかな庭は当時のままだという。『本陣殺人事件』や『蝶々殺人事件』『獄門島』の傑作はここで書かれた。
倉敷市真備ふるさと歴史館
岡田藩の資料を中心に旧真備町の歴史を語る資料館だが、横溝コーナーでは疎開中の一家の暮らしぶりも紹介。館内に金田一耕助を演じた歴代俳優の写真が飾られている。初代片岡千恵蔵や高倉健、中尾彬等実に多彩。10~11月は、二松学舎大学初蔵出しとなる横溝正史文献資料を特別展示。
千光寺
横溝正史の散歩コースの一つ、山谷池に向かう途中にある曹洞宗の寺。『獄門島』で最初の殺人事件の舞台となるのが同じ名の寺。釣鐘はないが、名前はこの寺から思いついたかもしれない。小高い場所にあり眺望がよい。
岡田大池と弁財天
周囲1kmほどの大池。東岸の出島に弁財天が祀られている。江戸時代は藩主一族の憩いの場だったというここを、横溝は特に気に入っていて、ここでトリックを考えることもしばしばだったとか。『空蝉処女』に登場。
川辺宿
旧山陽道と高梁川が交わる交通の要衝地で高瀬舟の川港として、また宿場町として賑わう町だった。『本陣殺人事件』の一柳家は江戸時代、ここで本陣を務めていた。金田一はこの宿場の煙草屋でも聞き込みをしている。

アクセス&インフォメーション

地図

アクセス
●岡山駅からJR伯備線で約22分の清音駅下車。岡山へは(新幹線のぞみ利用の場合)東京から約3時間30分、名古屋から約1時間45分、新大阪から約50分、博多から約1時間50分。
観光の問合せ

倉敷市観光課 (TEL.086-426-3411)

ミステリー作家・横溝正史と『本陣殺人事件』

本陣一柳家に残る因習と、豪壮な屋敷の中で起こった密室殺人のトリックと結末は?

小さいときから探偵小説が大好きだった横溝正史は、緻密な論理構成をした本格的な推理小説を書きたいと思う気持ちを抱えて岡田村に疎開。この美しい農村に暮らす人たちとの交流の中で聞いた村の因習や昔話を素に『本陣殺人事件』を組み立てる。近在きっての資産家宅の密室で起こった凄惨な殺人事件。舞台は岡田村周辺。作品では伏せ字になっているが、大方が実在の場所だ。この謎を名探偵金田一耕助が鮮やかに解いていく。

鉄道よもやまばなし 開業10周年 井原鉄道井原線

旧山陽道に沿って岡山県総社駅と広島県神辺(かんなべ)駅を結んで平成11年に開業した井原鉄道。沿線の井原線神辺駅で下車すると、全国でも現存しているのは数少ない「神辺本陣」を見ることができる。

ところで、川辺宿駅の橋脚の金田一耕助の影絵は大学生たちの卒業制作。他の橋脚の絵柄も地元の小・中・高校生たちがそれぞれ卒業記念に描いている。故に橋脚壁画はまだ増える。


清音駅を出た井原鉄道はほどなく大きなカーブを描いて高梁川鉄橋へ。全線41.7km、15の駅を約1時間で結ぶ

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