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乗ってみたい! 豪華列車 JRKYUSHU SWEET TRAIN「或る列車」

100年の時を越え蘇った、幻の豪華列車

明治末期、当時の九州鉄道が日本で最も豪華な設備を誇る豪華客車を発注。その後、九州鉄道は国有化され、実際には走ることはなかった“幻の”客車となった。その列車が工業デザイナー・水戸岡鋭治(みとおか えいじ)氏のデザイン・設計により、現代の九州に蘇った。その名も、JRKYUSHU SWEET TRAIN「或る列車」。ラグジュアリーな空間で、世界的に評価の高い成澤由浩(なりさわ よしひろ)シェフが手掛ける極上のスイーツを楽しむ旅へ出かけよう。

鐘の音を合図に始まる九州の旅

写真は出発駅で鐘を鳴らす客室乗務員。この鐘の音を合図に「或る列車」の旅は始まる。途中の発着駅では不定期で歓迎イベントが開催されている(JRKYUSHU SWEET TRAIN「或る列車」公式ページにて案内)。全国から訪れる乗客のために、沿線の住民が列車に向けて水戸岡鋭治氏デザインの旗を振って出迎えてくれる「おもてなしプロジェクト」も実施されている。

随所に伝統の技が光る車内装飾

「或る列車」は、贅を尽くした車内インテリアが秀逸。なかでも2号車の装飾は必見だ。至る所に、福岡県の伝統工芸である大川組子の技術を採用。大川組子とは、筑後川沿いにあったことから木材の集積地として、また家具や大工の町として発展した福岡県大川市で、建具装飾に使われてきた伝統の技。釘を使わず、小さく薄い木片を組み合わせた組子は美しく繊細。「ななつ星 in 九州」にも採り入れられたその技術が車内を華麗に彩る。

九州の名所をめぐる魅力的な運行コース

2017年11月現在、「或る列車」の主な運行コースには長崎駅~佐世保駅間を走る「長崎コース」と、大分駅~日田駅間を走る「大分コース」があり、どちらのコースを走るのかは時期によって異なる。いずれもおよそ2時間30分の旅。そのほか「阿蘇コース」「佐賀コース」などの路線の特別企画で運行されることもある。チケットはJR九州および各旅行会社が主催する旅行商品として販売。1名から利用可能なので、気ままなひとり旅にもおすすめだ。

九州の有名温泉地や話題の駅など、沿線は見どころ多数

九州の名所を走る「或る列車」。たとえば「長崎コース」(長崎駅~佐世保駅間)の沿線には、波の穏やかな大村湾や九州屈指の人気テーマパーク「ハウステンボス」などがある。途中には「青春18きっぷ」のポスター撮影地として一躍有名になった大村線千綿(ちわた)駅も。また「大分コース」(大分駅~日田駅間)沿線には、由布院温泉や日田温泉など人気の温泉地がある。

九州の“旬”を詰め込んだ食事&スイーツ

趣向を凝らしたメニューが味わえる「或る列車」のスイーツコース。1号車の厨房で準備されるコースは、九州産の肉や魚介など、旬の食材を使った軽食 NARISAWA“bento”をいただいた後、本格的なスイーツコースがスタートする。1品目のカクテルグラスに盛りつけられたスイーツを皮切りに、大きなガラスのスープ皿を美しく彩るスープスイーツ。そして、ケーキやクレープなど、ボリューム感のあるメインスイーツ。最後は、ひと口サイズのミニャルディーズ(茶菓子)をコーヒーや紅茶でいただく。スイーツとはいえ、少々ボリュームがあるので、お腹を空かして乗車しよう。

世界的シェフが演出する極上スイーツのコース

「或る列車」最大の楽しみがスイーツコース。レシピを監修するのは、世界的に評価の高い、東京・南青山のレストラン「NARISAWA」のオーナーシェフ・成澤由浩氏。成澤シェフが実際に九州各地の生産者たちのもとを訪れ、選び抜いた食材を使用している。メニュー内容は月替わりのため、次に乗る機会があれば、また違ったメニューを楽しめるのも魅力だ。飲み物はフリードリンクになっていて、ワインや日向夏ジュースなどから自由に選べる。

九州各地の匠たちが手掛けた器にも注目

スイーツのおいしさを引き立ててくれるのが、九州の名工たちが手掛けたこだわりの器。NARISAWA“bento”に使われている天然木のランチボックスやカトラリーは、由布院にある木工工房による特注品。さらに、カクテルグラスは佐賀県の伝統工芸「肥前びーどろ」の吹きガラス職人、またスープスイーツのガラス皿は長崎の教会でステンドグラス修復にも関わる名工によるもの。そのほか、メインスイーツやミニャルディーズの器は、福岡県糸島市や長崎県波佐見町の窯元で生まれた名品だ。

客室乗務員によるおもてなしが旅をより楽しいものに

「或る列車」の素晴らしさは、豪華な客車や絶品のスイーツだけではない。ホスピタリティあふれる客室乗務員たちの存在も魅力のひとつだ。コース仕立てのスイーツを運んでくる際に、メニューの内容を丁寧に伝えてくれるだけではなく、車両の見どころや沿線の魅力などを教えてくれる。乗客一人ひとりに対する気遣いを感じさせる接客に心癒やされる。

九州の生産者たちのこだわり食材の数々

「或る列車」のコースで提供されるのは、九州の生産者たちが丹精込めて作り上げた食材。季節によって異なるが、たとえば除草剤を使わず、健康な栗の木を育てることに尽力する熊本県錦町の農園で生産された球磨栗や、自然豊かな奄美大島で作られたドラゴンフルーツなど、本物の食にこだわる生産者たちが提供するこだわり食材ばかり。

  • メニューは時期により異なります。

クラシックホテルを彷彿とさせる車内

車両をデザインしたのは、JR九州が誇るクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」を手掛けたことでも知られる工業デザイナーの水戸岡鋭治氏。明るいメープル材を使用した1号車(写真)は、開放感のあるクラシカルな雰囲気。2人席と4人席があり、ゴージャスな格天井を備える。一方、2号車は重厚感のある落ち着いた空間。席ごとにウォールナットの組子に囲まれたコンパートメント(個室)になっている。

100年の時を越えて蘇った幻の豪華客車

明治39年(1906)、「九州鉄道」が米国のブリル社に発注した豪華客車「九州鉄道ブリル客車」。当時の日本で最も豪華な設備で設計されたものの、九州鉄道が国有化されたため活躍する機会がなかった。その列車が、通称「或る列車」だ。それから約100年。鉄道をこよなく愛する世界的な鉄道模型の大家である故・原信太郎(はら のぶたろう)氏が製作した模型をもとに、「ななつ星 in 九州」を手掛けた水戸岡鋭治氏がデザイン、「原鉄道模型博物館」の原健人副館長が監修し、現代の九州に蘇った。

乗客を魅了する「或る列車」のコンセプト

「或る列車」はJR九州で10番目となる「D&S(デザイン&ストーリー)列車」。そのコンセプトは「A・R・U」。「A」は“AMAZING(感動)”を意味し、列車旅で九州エリアの素晴らしい魅力との出合いを演出する。「R」は“ROYAL(高貴な)”。車内の上質なインテリア空間で振る舞われる九州各地の厳選食材を使用したスイーツコースは格別だ。最後の「U」は“UNIVERSAL(普遍的な)”。めざすのは世界中の人たちに愛される「或る列車」。これらのコンセプトが、今までに体験したことのない旅へとあなたを誘ってくれる。

JRKYUSHU SWEET TRAIN「或る列車」沿線の絶景ポイント

現在(2017年下期)の運行コースである「長崎コース」では、リアス式の美しい海岸線が続く大村湾をはじめ、海沿いの山の斜面に広がるミカン畑、九州屈指の人気テーマパーク「ハウステンボス」など、海の風景を中心とする絶景が楽しめる。

また「大分コース(今後の運行スケジュールは未定)」は山の絶景を楽しめる。由布院温泉近くでは、標高1583メートルの活火山で「豊後富士」とも呼ばれる由布岳の山容が車窓に広がる。さらに近代化産業遺産の旧豊後森機関庫がある豊後森駅付近や、名瀑として知られる「慈恩の滝」がある北山田駅~杉河内駅間では、車窓からの景色をゆっくり楽しめるように徐行運転をしてくれる。

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