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「曲線区間でも安心・安全・スピードアップ! 振り子式特急」曲線区間が多い路線でのスピードアップを実現した振り子式車両。今回はそのメカニズムと振り子式車両で運転される特急列車を紹介します。

What's 振り子式車両?

図:スピードアップを実現した振り子式車両のメカニズム

普通車両はカーブで遠心力が働いて、高速で走ると外側に倒れてしまう。振り子式車両はカーブで車両が内側に傾くため、遠心力が吸収され、高速かつ安定した走行ができる。

 列車がカーブを通過する時にはカーブの外側に向かって遠心力がかかるため、線路に「カント」と呼ばれる傾斜を付け、遠心力を打ち消して脱線しないように工夫されています。また、カーブを高速で通過しようとすれば遠心力が増加しますが、列車が停車した時のことを考えるとカントの傾斜角にも限度があり、遠心力を一定に抑えるためには結果として速度制限が実施されることになっています。このため、列車のスピードアップを実施する場合、速度制限がかかる曲線区間は一番のネックとなっていました。そこで、車体そのものを内側に傾斜させることによって遠心力を打ち消し、スピードアップとあわせて乗り心地の向上が図れる「振り子式車両」が開発されたのです。

 山岳区間の多いイタリアをはじめ、ドイツやスペインなど諸外国でも振り子式車両の開発が盛んに行なわれていましたが、日本では昭和45年に国鉄の591系試験電車(クモハ591形・Mc1+M2+Mc3の3連接車両)が登場。試験結果を踏まえて誕生したのが381系特急用電車で、昭和48年7月の中央西線電化完成に合わせて名古屋〜長野間の特急「しなの」でデビューしました。曲線区間では一般の列車の制限速度+20km/hで運転できる性能を発揮しましたが、この車両に採用された「自然振り子装置」(コロ軸を通じて遠心力を伝達して車体を傾斜させる)はカーブ通過後に揺り戻しの動揺が起こることで乗り物酔いになる乗客が続出。その後、揺り戻しを抑える対策が行なわれて乗り心地が向上しました。平成2年にはATSの車上子が線路の位置情報を検知し、カーブ通過前から通過後までの傾きを制御する「制御付き自然振り子装置」が実用化され、レールへの負担を軽減する自己操舵台車を装備するなど、最新の技術を取り入れた車両が登場しています。

 なお、JR北海道では振り子システムと車体傾斜システムの双方の利点を組み合わせた、世界初となる「ハイブリッド車体傾斜システム」の開発にも成功。曲線通過性能と乗り心地を向上する新技術の実用化が待たれています。

振り子式車両の試験電車として登場した591系。高運転台スタイルはMc3(改造後はクモハ590形)

591系振り子式試験電車3両編成の反対側の先頭車は低運転台スタイルのMc1(クモハ591形)

国鉄初の381系振り子式電車を使用した中央西線の特急「しなの」

北の大地を最高速度130km/hで走る キハ281系特急「スーパー北斗」[JR北海道]

 函館〜札幌間のスピードアップを図るために開発されたキハ281系は、曲線ベアリングガイド式台車と制御付き自然振り子装置を採用したJR北海道初の振り子式気動車です。平成4年に登場した3両の試作車両で各種テストが行なわれた後、平成6年3月1日改正から函館〜札幌間を結ぶ特急「スーパー北斗」でデビューを飾りました。最高速度は130km/hで、函館〜札幌間の所要時間は約3時間に短縮されています。車体は運転台のある先頭部分を除いてステンレス製で、当初は先頭側面に「HEAT281」のロゴがありましたが、現在は「FURICO281」のロゴが輝いています。なお、中間に連結されるグリーン車の座席配置は2+1席で、重心のバランスを図るため車体中央から配置が逆転し、点対称の座席配置になっています。

データ
運転線区
函館本線・室蘭本線・千歳線
運転区間
函館〜札幌
最高速度
130km/h

キハ281系特急「スーパー北斗」。制御付き自然振り子装置でカーブ区間を快走する

重心のバランスを取るため2+1席配置の座席が点対称となるキロ280形グリーン車

曲線区間が多い中央本線を快走する E351系特急「スーパーあずさ」[JR東日本]

 曲線区間の多い山岳路線の中央本線でスピードアップを図るために開発されたE351系は、乗り心地重視の制御付き自然振り子装置を採用したJR東日本初の振り子式直流電車です。平成5年12月23日から新宿〜松本間の特急「あずさ」2往復で営業運転を開始し、平成6年12月3日改正からは特急「スーパーあずさ」として運転されています。最高速度は130km/hで、新宿〜松本間の所要時間は約2時間30分に短縮されています。VVVFインバータ制御や新開発の主電動機を採用するなど、運転性能を向上させる最新の機器を搭載しています。なお、E351系の「E」の頭文字はJR東日本の「EAST」に由来するもので、この形式以降に登場したJR東日本の車両の形式はE○○(○は数字)系と表示されます。

データ
運転線区
中央本線・篠ノ井線・大糸線
運転区間
新宿〜松本・信濃大町
最高速度
130km/h

大カーブを軽快に走り抜けるE351系12両編成の特急「スーパーあずさ」

E351系の普通車車内にはカラフルな2+2配置の座席が並ぶ

木曽路の山中を軽快に走り抜ける 383系特急「(ワイドビュー)しなの」[JR東海]

 初代振り子式車両の381系で運転されていた中央本線の特急「しなの」のサービス向上とスピードアップを図るために開発された383系は、制御付き自然振り子装置や自己操舵台車を採用したJR東海の振り子式直流電車です。平成7年4月から臨時特急「しなの」で営業運転を開始し、平成8年7月25日改正からは特急「(ワイドビュー)しなの」として運転されています。最高速度は130km/hで、名古屋〜長野間の所要時間は約2時間50分に短縮されました。車体は前頭部を除いて軽量化を図ったステンレス製で、よりワイドな車窓が楽しめる大型窓を採用したほか、長野寄りの先頭車両には前面展望も楽しめる丸みを帯びたデザインのグリーン車を連結しています。車窓に映る木曽路の美しい風景を堪能することができます。

データ
運転線区
東海道本線・中央本線・篠ノ井線・信越本線
運転区間
大阪・名古屋〜長野
最高速度
130km/h

カーブが続く木曽路の山中を駆け抜ける383系特急「(ワイドビュー)しなの」

383系の普通車車内。大きな窓からは木曽や長野のダイナミックな風景が楽しめる

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