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夜行列車の快適な旅を演出する『581・583・285系寝台電車』 世界初の寝台電車として登場した581・583系電車と、新時代にふさわしい個室中心のA・B寝台を取り揃えた285系電車を紹介します。(文=結解喜幸 写真=結解学)

昼行の特急列車としても活躍 特急「はつかり」&「雷鳥」

 昼夜兼行で開発された581系は、昼間の特急列車として運用することが前提でしたが、当時の特急列車は2人掛けのクロスシートが当然でしたので、4人掛けのボックスシートは急行並みのサービスと思われていました。

 しかし、天井の高い空間やワイドな座席はゆったり利用するのに最適なもので、4人掛けのボックスシートは違和感なく受け入れられました。当初は昼夜でペアを組んで活躍していましたが、新幹線の延伸によって夜行列車の活躍の場が少なくなると、昼間の特急列車専用として運用されるようになりました。

 上野?青森間を結んでいた特急「はつかり」は東北新幹線開業により、盛岡?青森間の新幹線接続特急となり、485系とともに活躍。夜行急行「津軽」に座席車のみの編成で使用したほか、冬のスキー列車「シュプール号」など臨時列車でも活躍するようになりました。

 一方、山陽新幹線博多開業では名古屋?富山間の特急「しらさぎ」に間合いで運用されるようになり、北陸路でもその姿が見られるようになりました。昭和53年10月2日改正では、大阪?金沢・富山間の特急「雷鳥」4往復が583系で増発され、その後は大阪?富山間の夜行急行「立山」に運用されるなど、関西と北陸を結ぶルートで活躍するようになりました。

 しかし、特急列車のリクライニングシート採用などのサービス向上および夜行列車の廃止などで余剰となった581系が約150両も発生したため、昭和59年2月1日改正では583系を通勤用車両に改造した九州エリア用の715系が誕生。さらに昭和60年3月14日改正では東北エリア用の715系1000番台、北陸エリア用の419系が登場し、ローカル列車に新たな活躍の場を移すようになりました。

上野と青森を結んだ特急「はつかり」

大阪と富山を結んだ特急「雷鳥」

最後の活躍を続ける583系 急行「きたぐに」&特急「ふるさとゴロンと号」

 華やかな活躍を続けていた世界初の本格的な寝台電車583系でしたが、昼間の特急列車の4人掛けボックスシートや寝台特急列車の三段式寝台は時代のニーズに合わず、新たな道を模索する時代となりました。その第1陣となったのが昭和60年3月15日改正で客車を置き換えて誕生した大阪?新潟間の急行「きたぐに」で、サハネ581形の上・中段のベッドを撤去し、二段式に改造したA寝台のサロネ581形が投入されました。

 関西地区では10両編成6本が急行「きたぐに」1往復のほか、臨時列車用として残ることになり、JR西日本オリジナル塗色を採用。外観のお色直しは2回行なわれ、平成9年9月から登場したニューカラーになっています。現在、関西と北陸・新潟エリアを結ぶ唯一の夜行列車として利用客も多く、1?4号車は普通車自由席(座席で使用)、6号車はグリーン車、7号車はA寝台車、5・8?10号車はB寝台車になっています。

 一方、JR東日本の583系は平成6年12月3日改正で定期運用がなくなり、臨時列車に運用されるようになりました。現在、秋田と仙台に国鉄色の583系6両編成が各1本の計12両在籍しており、この冬も上野?青森間の臨時特急「ふるさとゴロンと号」(指定席特急料金でベッドに横になれるゴロンとシートで運用)に使用されます。

 今では懐かしい国鉄色の583系のため、リバイバルトレインなどの臨時列車でも活躍。昼夜兼行で活躍した往時の姿を見ることができます。

大阪と新潟を結ぶ夜行急行「きたぐに」

急行「きたぐに」のA寝台

個室寝台中心の285系寝台電車 寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」

 国鉄時代は二段式や三段式の開放寝台がメインであったB寝台車ですが、次第にプライベート空間でゆったりできる個室を望む声が時代のニーズとして高まりました。各地を走るブルートレインにもB寝台1人用・2人用個室が連結されるようになりましたが、24系客車からの改造車のみで新たに製造されることはありませんでした。

 このため、車両の老朽化も問題となり、東京?出雲市・高松間を結ぶ寝台特急「出雲」「瀬戸」を新たに開発する寝台電車に置き換えることが計画されました。内装は大手住宅メーカーが担当するなど、居住性を重視した個室寝台中心の車両になっています。

 これまでのブルートレインは「夜」をイメージしたものでしたが、「サンライズエクスプレス」の愛称が付けられた285系は、「サンライズ」の文字通り「夜明け」をイメージした明るい塗色になっています。

 平成10年7月10日から東京?出雲市間の寝台特急「サンライズ出雲」および東京?高松間の寝台特急「サンライズ瀬戸」で運転を開始しましたが、オール個室のA・B寝台は人気の的となりました。さらに、運賃と指定席特急料金で乗車できる「ノビノビ座席」(カーペット敷き・二段構造で横になって利用できる)を連結。ライバルの夜行高速バスに対抗したリーズナブルなサービスも行なわれています。

 A寝台は洗面所やテレビモニターを設置した1人用の「シングルデラックス」、B寝台は2人用の「サンライズツイン」、1・2人用の「シングルツイン」(二段式ベッドの上段が使用できる)、1人用の「シングル」「ソロ」の5タイプの個室を用意。このほか、シャワー室やミニサロンが設置されるなど、快適な夜行列車の旅を楽しめるものになっています。

285系「サンライズエクスプレス」

A寝台1人用個室「シングルデラックス」

写真協力:ARIC
※掲載されているデータは平成21年12月現在のものです。

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