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懐かし列車シリーズ(5)東北初の特急列車として活躍した栄光の「はつかり」物語

東北本線全線複線電化で昼夜兼行で活躍する583系が登場

 昭和43年10月1日、戦後5回目となる国鉄の白紙ダイヤ改正が行なわれることになりました。これは同年8月22日に完成した東北本線全線複線電化に伴うもので、後に「ヨン・サン・トオ」と呼ばれる国鉄の歴史に残る改正のひとつとなっています。
 首都圏と東北・北海道を結ぶ幹線の割には、昼行特急「はつかり」1往復と寝台特急「はくつる」「ゆうづる」各1往復の寂しい陣容でしたが、全線電化を待って昼夜兼行の583系寝台特急形電車を投入することが決定。昭和43年9月9日の下り1D特急「はつかり」が青森運転所に配置された583系13両編成に置き換えられ、まずは常磐線経由で運転を開始しました。
 営業運転開始はキハ80系特急「はつかり」と同じ時刻での運転でしたが、ダイヤ改正が実施された10月1日からは東北本線経由の1M「はつかり2号」と2M「はつかり1号」として運転がスタート。停車駅は宇都宮・福島・仙台・盛岡の途中4駅のみで、上野〜青森間の所要時間は8時間30分運転となり、約2時間のスピードアップが図られました。
 また、20系ブルートレインの583系電車化が行なわれ、3M・4M「ゆうづる1・2号」および5M・6M「はくつる」が運転され、「はつかり」と共通運用を組むことになりました。
 昭和45年10月1日には上野〜青森間の特急「はつかり」1往復が増発され、583系13両編成を使用した同列車は3往復になり、東北・北海道方面への利便性が向上しています。

昭和43年10月1日、東北本線全線複線電化に合わせて登場した583系特急「はつかり」

昼行特急の「はつかり」「みちのく」、夜行特急の「はくつる」「ゆうづる」で活躍した583系

全国各地で活躍した485系特急形電車も投入

 直流区間と交流50/60Hz区間で運転できる485系特急形電車は、全国各地の電化区間を走行できる万能選手として増備が続けられていました。583系は昼夜兼行で運用できる利便性がありましたが、昼行特急では4人用ボックス席が敬遠されることもあり、2人掛けクロスシートの485系投入が検討されました。
 昭和48年3月1日、青森運転所に配置された485系12両編成を使用し、上野〜青森間の特急「はつかり」1往復が増発されることになりました。車両落成の関係から3月24日の上りからの運転となりましたが、これまで4人用ボックスシートの583系のみであった同列車に2人掛けクロスシートの車両が加わり、好評を博すことになりました。
 昭和53年10月2日改正では、特急「はつかり」が1往復増発されるとともに、北海道連絡のエースとして活躍してきた1M「はつかり5号」の485系化が行なわれました。
 昭和57年11月15日、東北新幹線の本格的な営業運転に合わせて上野〜青森間の特急「はつかり」は廃止となり、新たに東北新幹線連絡の盛岡〜青森間11往復のエル特急列車に転身しました。
 昭和63年3月13日には青函トンネル開業に伴うダイヤ改正が実施され、盛岡〜青森間の特急「はつかり」のうち485系使用の2往復が函館まで延長運転となり、青函トンネルを抜けて北の大地に顔を出すようになりました。
 なお、平成2年7月1日には函館直通の「はつかり」が1往復増発されて3往復となっています。

昭和48年3月24日から485系が運用されるようになった上野〜青森間を結ぶ特急「はつかり」

絵入りヘッドマークが付いた485系特急「はつかり」。晩年は盛岡〜青森・函館間で活躍した

JR東日本の新系列車両E751系特急「スーパーはつかり」登場

 平成5年12月1日、ヨン・サン・トオ改正の主役として昼夜兼行の活躍をしてきた583系が「はつかり」運用から引退し、14往復すべてが青森運転所の485系6両編成に統一されました。
 しかし、国鉄時代からの車両はサービス設備が見劣りすることからリニューアルが行なわれることになり、平成8年4月21日にJR東日本の新系列車両に準じたサービス設備と外観デザインを採用した485系3000番台として登場。従来の車両と比べると快適になった乗り心地が好評を博すことになりました。
 東北新幹線と接続する特急「はつかり」は青森・函館エリアへの重要な足となるため、常磐線で好評の「フレッシュひたち」用のE653系をベースとした新型車両を投入することになり、交流専用のE751系特急形電車6両編成3本が製造されました。同車両は平成12年3月11日から盛岡〜青森間の特急「スーパーはつかり」として運転を開始し、快適な乗り心地と最新の車内サービス設備が話題となりました。
 平成14年12月1日、東北新幹線は八戸まで延伸開業し、八戸〜青森〜函館間を結ぶ連絡特急は「スーパー白鳥」「白鳥」、八戸〜青森〜弘前間を結ぶ連絡特急は「つがる」として新たなスタートを切ることになりました。これにより、昭和33年10月の登場から東北特急のエースとして輝き続けてきた「はつかり」の愛称が44年目にして廃止となってしまいました。
 東北新幹線の新列車の愛称も「はやぶさ」と決定しましたが、「はつかり」の愛称は東北本線の歴史に輝かしい足跡を残したものとなるでしょう。

平成8年4月21日に外観・車内サービス設備をリニューアルして登場した485系3000番台

平成12年3月11日改正で登場したE751系6両編成の特急「スーパーはつかり」

※掲載されているデータは平成23年1月現在のものです。

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