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懐かし列車シリーズ(6)今もイベント列車で活躍する国鉄旧形客車

木造客車を改造して誕生したオハ61形・オハフ61形客車

 当時の鉄道省が初の鋼製客車として昭和2年からオハ31形客車を製造しましたが、それ以前の明治・大正期に製造された客車は木造でした。戦後も木造客車が使用されていましたが、昭和22年2月に発生した八高線の脱線転覆事故では木造客車が大破して多くの死傷者を出したため、早急に鋼製客車の投入が要望されるようになっていました。しかし、大量の鋼製客車を新造することはできないため、木造客車の台枠や台車を流用して鋼製車体を載せる鋼体化改造が実施されることになり、昭和24年からオハ60形、昭和26年からはオハ61形が登場しました。
 この形式グループは三等座席車を中心とした車両のため、車内はニス塗りのベニヤ板を使用した簡素な造りで、座席の背ずりも板張りとなりました。戦前のスハ32形と比較してもシートピッチが狭く、直角に板張りの背ずりが設置されているため、当時の鋼体客車の中では最低の乗り心地でした。短距離の通勤・通学に利用する分には問題がありませんでしたが、中には臨時急行列車に組み込まれるケースがあり、利用客から不評を買う車両となっていました。ローカル線で使用することもあり、三等座席車+荷物車+郵便車のオハユニ61形などの合造車も製造されています。また、荷物車の合造車となるオハニ63形が製造されましたが、途中で台車を交換してオハニ36形に形式変更され、現在はJR東日本と大井川鐵道(日本ナショナルトラスト所有)で動態保存されています。

木造客車の鋼体化改造で製造されたオハ61形。車内はベニヤ板張りの簡素な造りになっている

JR東日本のイベント列車。客車の2両目に連結されているのが荷物合造車のオハニ36形

戦後の急行列車で活躍したスハ43形・スハフ42形客車

 戦後の国鉄の車両不足を補うため、オハ35形に続く鋼体客車として昭和26年から製造されたのが三等座席車のスハ43形・スハフ42形です。急行列車用として設計されたため、乗り心地や車内空間の快適さに重点が置かれたものとなり、座席の座り心地のよさや居住性が向上しています。北海道向けとして二重窓を装備したスハ45形・スハフ44形が登場したほか、車両の軽量化を図って「オ」クラスの重量としたオハ46形・オハフ45形、台車変更で重量が軽くなった改造車のオハ47形・オハフ46形などがあり、さらに改造によって北海道向けになった車両や車掌室付きの緩急車になった車両があります。
 また、特別二等車(後のグリーン車)として、スロ51形・スロ53形・スロ54形が登場しました。晩年のスロ51形やスロ53形はロングシート化改造が行なわれ、通勤用のオハ41形・オハフ41形として第2の人生を送るなど、優等車両の余剰による各種形式への改造で姿を消してしまいました。
 なお、同じ系列として特急列車用の2人掛け固定座席を備えたスハ44形・スハフ43形・スハニ35形も製造されましたが、各座席に対応した小型窓となったため、基本となるスハ43形とは外観上も大きく異なっています。後に回転式クロスシートに改造され、最後は東海道本線の急行「銀河」の座席車として活躍しました。現在はJR北海道やJR東日本のSL列車・イベント列車用として、オハ47形やスハフ42形、スハシ44形(スハフ44形の外観を残す改造車)が動態保存されています。

北海道向け二重窓のスハ45形やスハ43形700番台が連結されていた石北本線の急行「大雪」

JR北海道のイベント用車両のスハシ44形。外観は種車となったスハフ44形そのものだ

軽量客車として登場したナハ10形・ナハフ10形客車

 昭和20年代後半から国鉄では新系列車両の開発が進められ、その第1弾として昭和30年に試作されたのが10系軽量客車です。車両の軽量化とスマートなスタイルの両面を実現した車両で、翌年からは二・三等座席車や二・三等寝台車、食堂車が特急・急行用車両として増備されました。昭和32年には三等座席車のナハ10形・ナハフ10形の室内灯を蛍光灯化したナハ11形・ナハフ11形および特別二等車のナロ10形が登場し、当時の特急・急行列車のエースとして活躍を始めました。
 また、三等寝台車のナハネ10形・ナハネ11形、二等寝台車のオロネ10形、食堂車のオシ17形が製造されました。ところが軽量化による様々な欠点もあり、冬などは利用客から隙間風が入る寒い車両として敬遠されるようになりました。寝台車の下降式窓も車体腐食の要因となり、さらに合成樹脂材を使用した内装が火災の際に有毒ガスを発生する危険性もあり、一部の車両では難燃化工事も行なわれましたが、急行列車は12系や14系客車、普通列車は50系客車に置き換えられ、スハ43系列よりも短命に終わっています。
 なお、グリーン車や寝台車は後に冷房化改造が行なわれて車両の重量が重くなったため、ナロ10→オロ11、ナハネ11→オハネ12、オハネ17→スハネ16のような形式変更が行なわれています。また、車両の老朽化が進んでいたこともあって動態保存されている車両は1両も無く、静態保存は碓氷峠鉄道文化むらのナハフ11 1、JR東海が平成23年3月14日に開館する「リニア・鉄道館」のオロネ10 27などがあります。

オロネ10形やオハネ12形など10系軽量客車の寝台車を連結した東海道本線の急行「銀河」

10系寝台車のオロネ10形・オハネ12形とスハ43系の普通車を連結した奥羽本線の急行「津軽」

※掲載されているデータは平成23年2月現在のものです。

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