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伝統 自然 建築 風土 食|日本人なら行ってみたい あの場所へ|THE定番・極上旅|vol.2 伊勢から熊野三山へ 
紀伊半島まるっと1周、ご利益旅[三重県伊勢~和歌山県新宮・那智勝浦・白浜など]
JINGU <伊勢神宮 内宮> SWEETS <赤福> GOURMET <名代 伊勢うどん 山口屋> JINGU <伊勢神宮内宮別宮 瀧原宮> LANDSCAPE <丸山千枚田> LANDSCAPE <七里御浜> SHRINE <花の窟神社> KUMANO SANZAN SHRINE <熊野速玉大社> SHRINE <神倉神社> KUMANO SANZAN SHRINE <熊野那智大社> SHRINE LANDSCAPE <那智の大滝> KUMANO SANZAN SHRINE <熊野本宮大社> SHRINE <大斎原> KUMANO KODOU ROUTE <熊野古道> KUMANO KODOU ROUTE <熊野古道> HOT SPRING <湯の峰温泉> HOT SPRING <白浜温泉> OPTION <アドベンチャーワールド> STAY <里創人 熊野倶楽部> STAY <里創人 熊野倶楽部> GOURMET <美熊野牛> STAY <浜千鳥の湯 海舟> STAY <浜千鳥の湯 海舟> GOURMET <浜千鳥の湯 海舟> TRAIN <特急くろしお> TRAIN <ワイドビュー南紀>
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JINGU
伊勢神宮 内宮>

いつも静謐な空気が満ちる内宮正宮前。正式名称は「伊勢神宮」ではなく、実は「神宮」。
そもそも「神宮」とは伊勢神宮のみをあらわす言葉であったものが、時代が下がるとともに、奈良県天理市の石上(いそのかみ)神宮はじめ他の場所にも「神宮」と称する神社が創建されたため、通称として「伊勢」とつけるようになった。
また、神宮は日本の繁栄、国民の幸せを願う場所。御参拝時はまずそのことを念頭に……。

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SWEETS
赤福

おかげ横丁は内宮前の一大人気スポット。中でも宝永4年(1707)創業、赤福の「赤福餅」は江戸時代から神宮の参拝者に親しまれてきた名物。赤福餅の餡につけられた3本の筋は清流を表したもの。赤福本店では、神宮神域を流れる五十鈴川の清流を眼下に眺めつつ、いただける。神宮の参拝時間に合わせ朝5時より営業。
「赤福氷」500円は夏期限定で、昭和36年に誕生。抹茶蜜がかかった氷の中には、氷になじむ特製の餡と餅が潜んでいる。赤福本店前の別店舗、内宮前支店、五十鈴川店、二見支店他にて販売中。二見支店、鳥羽支店、外宮前特設店では、「冷やしぜんざい」500円も期間限定で発売。

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GOURMET
名代 伊勢うどん 山口屋

江戸時代以前に、伊勢の農民がうどんに味噌からできた「たまり醤油」をかけて食べていたのが始まりといわれる伊勢うどん。太い麺はふわふわで、好き嫌いは分かれるところ……だったのだが、近年「伊勢うどん友の会」が発足、イベントに多くの人が集まったり、東京にも伊勢うどんを提供する店が続々現れたりと、ブームの兆しを見せている。
「名代 伊勢うどん 山口屋」は外宮に近い、味自慢の1軒。「伊勢うどん」(500円・税込)他、伊勢うどんに田舎あられをトッピングして食べるオリジナルメニュー「伊勢じまん」(600円・税込)も人気。

伊勢うどん友の会

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JINGU
伊勢神宮内宮別宮 瀧原宮

伊勢神宮は、内宮・外宮に加え、14の別宮、43の摂社、24の末社、42の所管社、計125社で構成されている。
ここ瀧原宮は、天照坐皇大御神(あまてらしますすめおおみかみ)の御鎮座する地(伊勢の神宮内宮)を求めて旅をしていた第11代垂仁(すいにん)天皇の皇女、倭姫命(やまとひめのみこと)が伊勢へ向かう前、土地の美しさに魅かれ宮を建てた場所と伝わる。
杉の巨木が連なる参道や境内に流れる頓登(とんど)川が手水場になっているところなど、内宮と似た雰囲気がある。

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LANDSCAPE
丸山千枚田

紀和町丸山にある日本最大級の棚田。慶長6年(1601)の検地の記録に「7町歩(約7ha)、約2240枚の棚田」があったと記されている。戦後、過疎化・高齢化にともない、4.6ha 、500枚ほどにまで落ち込んだが、地道な復旧作業により7ha、1340枚に回復。
夕暮れどき、水面に映る日の光が刻々とその色を変えていく様は息を呑む美しさ。

熊野古道 伊勢路

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LANDSCAPE
七里御浜

伊勢路のゴール間近、三重県熊野市から和歌山県紀宝町にいたる全長22kmの「日本一長い砂礫(されき)海岸」。
松本峠の東屋からはこの見事な曲線が一望できる。東屋までは少々険しい上り坂を20分ほど徒歩で行かなければならないが、古い石畳が続き、途中には「鉄砲傷の地蔵さん」と呼ばれる大人くらいの背丈のお地蔵様が祀られていたりと、熊野古道らしい雰囲気が楽しめる。

熊野古道 伊勢路

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SHRINE
花窟神社

日本の国土や山や海、国の形成に必要なものすべてを産んだ夫婦神、伊弉諾尊(いざなきのみこと)、伊弉冊尊(いざなみのみこと)。日本書紀は、伊弉冊尊が「紀伊国熊野の有馬村」に葬られたと記し、それが花窟(はなのいわや)神社であると考えられている。高さ45mの巨岩が御神体。
母である伊弉冊尊の死の原因となった火の神、軻遇突智尊(かぐつちのみこと)も寄りそうように祀られている。

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KUMANO SANZAN SHRINE
熊野速玉大社

熊野三山のひとつ。熊野川河口近く、新宮市に鎮座。主祭神は熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)、熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)。
室町時代には朝廷、幕府から数多くの奉納品が納められ、現在1200点以上の国宝を有する。神宝館は必見。

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SHRINE
<神倉神社>

熊野速玉大社の元宮。小高い山の頂上に「ゴトビキ岩」と呼ばれる巨岩が鎮座し、そこに熊野大神が天降られたと伝わる。その異形は新宮市内を歩いていても、一目でわかるほど。
ゴトビキ岩までは源頼朝が寄進したという538段もの急な石段を上る。この宮に対し、新しい宮(熊野速玉大社)がつくられたということで、「新宮」という名がついた。

新宮市観光協会

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KUMANO SANZAN SHRINE
熊野那智大社

熊野三山のひとつ。マグロ漁で有名な那智勝浦町を見降ろす山の上に鎮座。主祭神は熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)。平安時代から鎌倉、室町時代にわたり継続的に経塚が作られ、大正時代には2000点にも及ぶ経典や仏像が発見された。日本三大経塚のひとつとされている。
隣に立つ青岸渡寺(せいがんとじ)は「西国三十三観音巡礼」の一番札所。

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SHRINE LANDSCAPE
<那智の大滝>

熊野那智大社の社伝には、「神武天皇が那智の海岸に上陸したとき、那智山に光り輝くものを見て、大滝を探しあて、神として祀った」とあり、那智の大滝を御神体としたことが熊野那智大社の創始とわかる。
地上133mの高さから降り注ぐ大滝は今も神々しいばかり。写真は那智大社から望んだ大滝。

那智勝浦町観光協会

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KUMANO SANZAN SHRINE
熊野本宮大社

熊野三山のひとつ。熊野川上流の山合いに鎮座。主祭神は家都美御子大神(けつみみこのおおかみ)。
神仏習合の考えにより、家都美御子大神は阿弥陀如来と関連付けられ、お祀りされている「証誠殿(しょうじょうでん)」は「極楽往生を保証する」ことを意味した。そのため熊野本宮大社は「阿弥陀の浄土」となり、貴賎を問わず多くの日本人がこの地を目指したと考えられている。

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SHRINE
<大斎原>

熊野本宮大社の元宮で、「おおゆのはら」と読む。熊野川とその支流である音無川と岩田川が合流する中洲に社殿があったため、たびたび水害に遭ったことが伝えられている。
明治22年(1889)、いくつかの社殿が流れる大被害を受けたのを機に、上四社のみを現在の地に遷座した。往時は禊の意味を込め、川の中を歩いて境内へと渡ったという。現在は日本一の高さを誇る大鳥居が建つ。

熊野本宮観光協会

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KUMANO KODO ROUTE
<熊野古道>

「熊野古道」には伊勢路、中辺路(なかへち)、大辺路(おおへち)、小辺路(こへち)、紀伊路、5つの路がある。
最もポピュラーなのが、熊野三山を結び、紀伊田辺へつながる中辺路。平安時代、天皇や上皇、貴族たちは紀伊路から中辺路をたどり、いくつもの険しい峠越えの果てに熊野三山にたどり着いた。写真は中辺路の絶景スポット「百間ぐら」。

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KUMANO KODO ROUTE
<熊野古道>

「熊野古道」といえば、山の絶景とともに思い浮かぶのが趣ある石畳の道。熊野那智大社へ向かう大門坂からの石畳はすぐ近くまで車で行けるので、雰囲気を味わうのにはうってつけ。
写真は熊野本宮大社へ向かう小辺路。沿道には、表情豊かな、かわいらしい三十三観音が並び、山歩きの苦しさを和ませる。

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HOT SPRING
<湯の峰温泉>

いくつもの峠を越え、いよいよ明日は熊野本宮大社にたどり着く……そんな巡礼者たちが身を休め、穢れを払ったのが湯の峰温泉だ。開湯1800年を超え、「日本最古の温泉」ともいわれる。
歌舞伎や浄瑠璃で演じられる小栗判官伝説の舞台でもあり、「つぼ湯」は小栗が蘇生した湯と伝わる。世界遺産に登録された温泉で、全身入浴できるのは世界中でもここだけ。
また近くの川湯温泉は、河原に温泉が湧き出るため、夏場は自分で掘った天然露天風呂につかることができる。

熊野本宮観光協会

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HOT SPRING
<白浜温泉>

関西を代表する温泉リゾート地・白浜。白浜温泉は開湯1350年余といわれ、『日本書紀』『万葉集』にもその名が見える。極上の新鮮魚介を提供する飲食店も充実。
しかし何より、個性あふれる公衆浴場の充実ぶりが素晴らしい。中でも写真の「崎(さき)の湯」は、打ち寄せる波に浸食されてできたと伝えられ、湯に浸かりながら時に波のしぶきがかかるほど。開放感を満喫したい。入湯料400円。

白浜観光協会

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OPTION
アドベンチャーワールド

ただ見るだけでなく、動物と間近に触れ合える様々な企画が実施されている白浜の「アドベンチャーワールド」。
50歳以上のグループ限定の特別ツアー「プレミアム浪漫ツアー」では、専用カートで60分間園内をまわることができ、なんとパンダにおやつのプレゼントができる特典付き。1人5,000円(入場料以外・要予約)。
夜間営業もある7月31日~8月31日はイルカたちによる人気のマリンライブ・ナイトバージョンも登場。

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STAY
里創人 熊野倶楽部

豊かな自然の中、ゆったりと熊野の食と文化を味わう。
そんなコンセプトで造られた「里創人 熊野倶楽部」は客室が広く、窓からはどこか懐かしい熊野の山並みが一望できる。写真は、露天風呂付きコテージタイプ「はなれ咲ら村 満月庵」。1泊2食付き22,050円~(平日2名利用時の1名料金)

20/26

STAY
里創人 熊野倶楽部

熊野をよりよく知ってもらうための独自の体験ツアーを各種用意。広い施設内には、ものづくり体験ができる「匠工房」もある。「湯浴みぼっこ」の露天風呂は、熊野市紀和町の奥にある新湯ノ口温泉の運び湯を使用。
アロマサロン「新姫庵」では、熊野の奥地でしか取れない那智の黒石をつかったホットストーンセラピーが体験できる。

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GOURMET
里創人 熊野倶楽部

深い山々から流れ込む水により、栄養豊かな魚介が育つ熊野灘。熊野の神々に感謝しつつ人々が守り続けてきた里山。
熊野倶楽部の「食」は、そうした地元の食材をメインに、郷土料理のエッセンスも取り入れ構成されている。
湧き水を飲んで育つブランド牛「美熊野牛」は、霜降りがきめ細やかで、特に焼いたときの香りが魅力とされる。写真は、今夏のコースメニューより、美熊野牛のステーキ。

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STAY
浜千鳥の湯 海舟

白浜温泉の岬に立つ「浜千鳥の湯 海舟」。全客室から遥か広がる太平洋が眺められる。写真は別荘のような雰囲気の「源泉掛け流し露天風呂付 離れ」1泊2食付き36,000円~。「露天風呂付和洋室 波の抄」1泊2食付き26,000円~(ともに平日2名利用時の1名料金)。

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STAY
浜千鳥の湯 海舟

「合気(あいき)温泉」「文殊温泉」という二つの源泉の湯が楽しめる。海に一番近い湯浴み処「浜千鳥の湯」(写真)は、湯浴み着を着て入る「混浴露天風呂」だ。その他、貸切露天風呂など全部で9つの趣向を凝らした風呂がある。

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GOURMET
浜千鳥の湯 海舟

夕食は、地元の豊かな海の幸を思う存分味わい尽くす「紀州舟盛会席 潮さい」(写真)。熊野牛も捨てがたいという人には「熊野牛と和会席 海ほたる」の2種類に加え、秋冬には幻の高級魚といわれるクエがいただける「クエ会席」も登場。旬を大切にした料理が訪れる人の心をつかんで離さない。

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TRAIN
特急くろしお

大阪方面からのアクセスは「特急くろしお」。新大阪~白浜間を約2時間30分、新宮間までを約4時間で結ぶ。「くろしお指定席往復きっぷ」もあるので活用したい。 写真の283系オーシャンアロー車両は、リゾート感たっぷりのマリンブルーで、座席が窓に面した展望ラウンジ車両もあり。
2列+1列でゆったりのパノラマ型グリーン車両を連結することもあるので、こちらもおすすめ。

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TRAIN
<ワイドビュー南紀>

名古屋方面発は、伊勢までは「快速みえ」で約1時間40分、「伊勢路フリーきっぷ」で便利にお参りを。
先に熊野詣、あるいは熊野方面からの帰りなら、ワイドビュー特急「南紀」で新宮~名古屋は約3時間20分。

※自動表示のほか、スライド左右にマウスを置くと表示する矢印をクリックすると前後の画像へ移動します。

江戸の庶民が憧れた“伊勢参り”を今こそ

 伊勢神宮にとって今年は20年に一度の式年遷宮(しきねんせんぐう)が執り行われる年。すでに平成17年から様々な神事が行われ、クライマックスに当たる遷御(せんぎょ:御祭神に新しい宮へとお遷りいただく神事)が内宮(ないくう)10月2日、外宮(げくう)10月5日と決定したことも発表されました。今月末の「御白石持(おしらいしもち)行事」から、10月の両宮の遷御へ向け、神宮では重要な神事が目白押しです。一般参拝者は見ることを許されないものも多いのですが、それこそがこの式年遷宮が「神事」であることの証だといえます。

 伊勢音頭に「伊勢に行きたい 伊勢路が見たい せめて一生に一度でも」と歌われたように、江戸時代より日本人の憧れであった伊勢参り。今と違うのは、旅が一生に一度あるかないかの機会であった江戸庶民は、伊勢神宮だけで満足せず、そのまま紀伊半島をまるっと一周、熊野三山をめぐり、大阪、京都、滋賀で西国三十三観音を巡礼。そこから中山道を北上し、信州の善光寺経由で江戸に帰る……という欲張りコースを踏破するツワモノが多数いたこと。

 世界遺産にも認定された熊野古道のひとつである「伊勢路(いせじ)」は、伊勢神宮と熊野三山を結ぶ道。全長約170km、往時には1週間ほどかけて歩いたというこの道も、現在では特急を利用して、伊勢市?新宮市間は2時間半程度。さらにレンタカーを利用すれば、素晴らしい景観スポットや神社に立ち寄りながら、半日ほどのドライブが楽しめます。山、海両方の絶景が満喫できるのも、この伊勢路の魅力。

 伊勢神宮が天皇を戴いた日本という国の、見事に整えられた厳粛な信仰の姿を現在に伝えるものであるのに対し、熊野三山はそれ以前に、木や岩や滝、万物に神を見出し、手を合わせた私たちの祖先の感性をも伝えるもの。

 熊野三山は古道をしっかり歩こうと思ったら、1~2泊は必要ですが、公共交通機関を使えば1日でまわれます。周辺は湯の峰温泉、白浜温泉はじめ旅の疲れを癒し、身の穢(けが)れを祓ってくれる名高い温泉の密集地。一生の思い出になるような極上宿もお手ごろ価格でスタンバイしています。

 また、白浜の「アドベンチャーワールド」では、昨年8月に誕生した子パンダの優浜(ゆうひん)はじめ、5頭のパンダがお待ちかね。5頭のファミリーは中国をのぞけば世界一の多さなのだとか。 

 硬軟合わせ、さまざまな魅力がつまった伊勢から熊野にかけての一帯。知れば知るほど、「パワースポット」なんていう言葉が薄っぺらく感じられるはず。日本人の信仰の源流を訪ねて、今こそ伊勢から熊野をめぐってみませんか?

THE定番・極上旅

文= 秦 まゆな  (はた・まゆな)

PROFILE
日本文化コンシェルジュ、文筆家。歴史と伝統文化に裏打ちされた、真の日本の楽しみ方を提唱すべく、日本全国を駆け回り中。その土地ならではの食、酒、温泉、祭りが大好物。
著書『日本の神話と神様手帖 あなたにつながる八百萬の神々』(マイナビ) 。
ブログ『秦まゆなの日本ときめき生活』も更新中

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