鉄道カメラマンが観た『僕達急行』

「鉄<テツ>」を極めた最高峰(?)ともいえる、“鉄道カメラマン”という職業。
彼らが見た、映画『僕達急行 A列車で行こう』の魅力とは……。

鉄道だから得られる「偶然の連鎖」という必然

長根 広和 HIROKAZU NAGANE

写真

A列車な1枚

岩泉線 岩手大川駅
次はどこへ行こう。人生の目的地なんてわからないけれど、旅を楽しもうじゃないか。いつかサクラサクところへ。
※写真をクリックすると、大きい画像で見ることが出来ます。

  ひょんな偶然から小町と小玉が出会って、偶然が偶然を呼び、いくらコメディ映画だからと言っても、そこまでの偶然はないだろうというストーリー。だけれども、自分に照らし合わせてみると、そういう偶然の連鎖って自分にもよくあるなぁと思ってしまう。目的地まで列車でどうやって行くか、時刻表とにらめっこをして列車を繋いで繋いでいくような感じ。これには自分の意思が入っているけれど、人生も似たようなものだと思う。

 人生の時刻表を自分では見ることができないから、列車の選択や、駅での乗り換え、駅弁を食べることや途中下車することが、「偶然」という言葉で仕事や恋愛、趣味や出会いということに変換されているのだろうけど。たぶん何かの神様が決めた時刻表通りに、人それぞれのA(ええ)列車に乗って走っているのだろうね。その時刻表が「必然」って言うのかな。

 ……と、何かの偶然で訪れた駒鳴駅に立ってそう思った。この映画の試写を観た翌日から九州へ撮影の仕事が入っていた。唐津の方へ用事があったのだけれども、通り道の筑肥線で見たことのある駅が! それも、ついこの間。これだから人生は面白い。

 さあ、次はどこへ……。
A列車は定刻に発車します。僕達の時刻表通りに。

プロフィール

長根 広和 HIROKAZU NAGANE
1974年横浜市生まれ。武蔵工業大学(現・東京都市大学)卒業後、鉄道写真家・真島満秀氏に師事。2009年、真島満秀写真事務所を継承し、(有)マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ設立。青春18きっぷなどのJRヴィジュアルポスターを撮影するほか、鉄道専門誌やカメラ雑誌にて活躍中。『JR時刻表』の「ごちそう路線旅」を担当。 車両そのものの機能美や力強さを表現した写真に定評がある一方、ドラマチックな鉄道風景写真にファンが多い。“列車の音が聞こえてくるような作品”がモットー。(社)日本写真家協会(JPS)会員、日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員。 ホームページ「Hirokazu Nagane Website」 ブログ「せんろばた日記」 『トレたび』では「うまいといわれる『鉄道写真』を撮りにいこう!」を連載中。

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