『銀河鉄道の夜』をイメージしたSL列車
東北の復興支援と地域の活性化を目的として、2014年4月12日から釜石線の花巻~釜石間で運転を開始したのが、C58形239号機が牽引する「SL銀河」。釜石線沿線を舞台に描かれた宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を代表的なテーマとして列車全体をプロデュースしており、宮沢賢治の世界観や空気感、生きた時代を共有することで、東北の「文化・自然・風景」を感じられる車内空間に仕上げられています。牽引機のC58形239号機は静態保存機を復元させたものです。
それでは、花巻駅から「SL銀河」に乗車し、釜石駅を目指すことにしましょう。新花巻駅で東北新幹線からの乗継客を乗せた列車は、『銀河鉄道の夜』のモチーフになった宮守川のアーチ橋(通称:めがね橋)を渡り、『遠野物語』で知られる遠野駅に到着。1時間17分(上りは1時間13分)の停車時間を利用して遠野の郷土料理を味わった後は、列車が急勾配のある峠越えに挑むと、やがて下り勾配となって終着の釜石駅に到着します。
C58形239号機
復元されたC58形239号機。復元前は岩手県盛岡市の岩手県営運動公園で静態保存されていた。
SL銀河客車外観(4号車)
夜が明け、朝へと変わりゆく空をイメージした青を基調にした、4両編成の専用車両の外観。側面には宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に登場する星座や動物がデザインされている。
SL銀河客車外観(3号車)
50系客車を改造した気動車のキハ141系から再改造された車両。外観は編成全体で濃淡8色の青のグラデーションがかけられている。
SL銀河車内(2号車)
南部鉄器風の鋳肌(いはだ)の荷物棚やカラフルなステンドグラスを配置した車内。沿線地域の伝統と宮沢賢治が生きた大正から昭和の世界観を表現している。
SL銀河車内(4号車)
SLギャラリーとショップがある4号車の車内。大型ソファーが配置された壁面には、C58形239号機復元の軌跡などの写真が展示されている。車いす対応トイレも設置。
SL銀河車内
宮沢賢治や東北ゆかりの品を展示するギャラリーやライブラリーを各車両に設置。1号車では『銀河鉄道の夜』の世界を体感できる小型プラネタリウムも設置されている。
JR遠野駅
コンクリートブロック造りのJR遠野駅舎。石積みを思わせる重厚な趣のある駅舎が特徴的である。
カッパ淵
人々を驚かすカッパが多く棲んでいたといわれる常堅寺の裏を流れる小川の淵。釣竿の先にはカッパの好物のキュウリが付けられている。
とおの物語の館
柳田國男氏が定宿としていた柳翁宿や昔話の世界を知ることができる「昔話蔵」がある施設。遠野地方で語り継がれた昔話が聞けるイベントも行われる。
田舎料理(遠野に伝わる郷土料理)
山の暮らしが体感できる遠野ふるさと村内の「かじか亭」。遠野に伝わる郷土料理「ひっつみ」やイワナ、山菜などを使った田舎料理が味わえる。
サン・フィッシュ釜石
45年の歴史に幕を閉じた日本唯一の「橋上市場」に代わり、釜石駅前にオープンした市場。新鮮な海の幸・山の幸やお土産品、食事処が揃っている。
鉄道写真作家・結解喜幸の「SL銀河」おトクな利用術
釜石線の「SL銀河」を利用する旅には、釜石線全線を含む岩手県フリーエリア内のJR快速・普通列車の普通車自由席、BRT(盛~気仙沼~柳津)及び東日本交通バス(茂市~岩泉病院間)が、土・日曜・祝日(*)の1日間乗り降り自由となる「いわてホリデーパス」(おとな2500円、こども1250円)が便利。花巻→釜石の片道利用では元が取れないが、盛岡・一ノ関・北上・花巻~釜石の日帰り往復であれば十二分におトクとなる。
なお、「SL銀河」の乗車には、別に指定席券(おとな840円、こども420円)が必要となる。
- ※ただし4月29日~5月5日、7月20日~8月31日、12月23日~1月7日は毎日ご利用できます。
列車情報
運転日 | 下りの釜石行きは土曜、上りの花巻行きは日曜を中心に運転(2020年度は7月~8月予定) |
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運転区間 | 釜石線 花巻駅~釜石駅間 |
運転時刻 |
【釜石行き】花巻駅10:37発→釜石駅15:08着 【花巻行き】釜石駅10:58発→花巻駅15:19着 |
編成図
著者紹介
- ※写真/結解喜幸、JR東日本、釜石市、遠野市、サン・フィッシュ釜石
- ※掲載されているデータは2014年5月現在のものです。運転日と「いわてホリデーパス」のねだんについては、2020年7月時点の運転日を表記しています。
- ※運転日・運転区間等は変更となる場合があります。