トレたび JRグループ協力

2023.07.13鉄道特急「南紀」 -紀伊半島の東側を南下するHC85系車両。最新鋭車両の車内の様子から世界遺産・熊野古道をめぐる旅のモデルコースまで(THE列車)

名古屋と南紀を結ぶ最新鋭HC85系車両の特急列車

名古屋駅から紀伊半島南端エリアの新宮駅・紀伊勝浦駅を結ぶのが、最新鋭HC85系車両で運転されている特急「南紀」です。

使用されるHC85系車両は、駆動システムに新型ハイブリッドシステムを採用した最新鋭車両で、安全性・快適性の向上や環境負荷の低減などを図りつつ、ハイブリッド車両として国内初の最高速度120km/hでの営業運転を実現しています。

特急「南紀」の基本情報

列車は2両編成で、紀伊勝浦駅寄りの2号車が普通車指定席、名古屋駅寄りの1号車は普通車自由席です。なお、多客時には増結して運転される列車もあります。


名古屋駅を発車した列車は、関西本線から伊勢鉄道伊勢線を経由して紀勢本線へと進みます。伊勢市駅・鳥羽駅方面の参宮線が分岐する多気駅を過ぎると、列車は次第に山間部を走ります。峠を越えると左手車窓に青く輝く熊野灘が映し出され、波静かなリアス海岸や海辺の町並みが旅気分を盛り上げてくれます。

熊野市駅を発車してしばらくすると、ミカン畑が車窓を飾り、列車は熊野川を渡って新宮の市街地へと入ります。新宮駅の先で美しい海岸線に沿って走ると、列車は終着の紀伊勝浦駅に到着します。

鉄道コンシェルジュ ミスターKのとっておき情報

HC85系特急用車両


「HC」とは、エンジンで発電した電力と蓄電池の電力とを組み合わせ、モーターを回して走る“Hybrid Car(ハイブリッド方式の車両)”の略です。

高い走行性能、小型化、高効率化を追求した新型ハイブリッドシステムや、安全性を向上させる新型台車枠、台車の振動状態を常時監視する振動検知装置、リアルタイムで車両各機器の動作状況を車両基地へ送信するシステムの採用など、快適な走行を行うための最新鋭技術が盛り込まれています。

エクステリアデザイン


シンボルマークは飛騨・南紀の紅葉と海をイメージしたカラーリング

先頭車両は前面、上部、照明を滑らかな曲線形状にすることで、「和」を表現しています。

前面上部は、飛騨・南紀地区の木によく見られる赤みがかった茶色とし、運転台部分は黒色として精悍さを表現しています。また、車両前面から側面には、JR東海のコーポレートカラーであるオレンジ色の帯を曲線で配置し、この車両にふさわしい「躍動感」を表現しています。

ドア横には車両の特徴を色と形状で表現した、スピード感あふれるシンボルマークが取り付けられています。

車内サービス設備


旅のワクワク感が増す明るい色彩

全席にコンセントが備わる

客室内の壁面は明るい茶色の木目調で、沿線の紅葉や祭り、花火のイメージをグラデーションしたモケットのリクライニングシートが配置されています。また、背もたれを高くしてプライベート感を向上した座席には、大型の背面テーブルや多目的フック、コンセントが備わっています。

ちなみに、客室内には特大荷物に対応した荷物スペースが設置されているため、大きな荷物がある時でも安心です。

なお、ハンドル型電動車いすで利用できる多機能トイレ(オストメイト設備・ベビーチェア・ベビーベッド・温水機能付き暖房便座を設置)や洗面所、男性用トイレ、車いす対応座席(指定席)と車いすスペース(指定席)が用意されています。

南紀の旅に最適な「南紀・熊野古道フリーきっぷ」

往復に特急「南紀」の普通車指定席(片道あたり1列車限り)を利用できるのが、世界遺産・熊野古道をめぐるのに最適な「南紀・熊野古道フリーきっぷ」です。

JR線のフリー区間が三瀬谷駅~熊野市駅間の「伊勢路コース」(名古屋市内発8380円)と、熊野市駅~紀伊勝浦駅間の「中辺路(なかへち)コース」(名古屋市内発9970円)があり、指定された路線バスも乗り降り自由となります。

「南紀・熊野古道フリーきっぷ」おすすめモデルコース

JR東海伊勢運輸区の乗務員が考案した、このきっぷを利用した1泊2日モデルコースをご紹介します。

世界遺産・熊野三山の神秘的な世界観を満喫する「中辺路コース」

初めての熊野古道におすすめの1泊2日プラン


那智の滝。日本三名瀑の一つ (C)NACKT


1日目
8:00

名古屋駅

  • 「南紀1号」 紀伊勝浦行

新宮駅

12:00

熊野速玉大社

  • 仲之町商店街で昼食

新宮駅

  • バスにて移動。出発時間に注意!
14:30

熊野本宮大社・世界遺産熊野本宮館・熊野本宮大社 旧社地大斎原を散策

17:30

本宮大社前

  • バスにて移動。出発時間に注意!
19:30

紀伊勝浦駅


2日目
9:00

紀伊勝浦駅

  • バスにて移動。出発時間に注意!

大門坂・熊野那智大社・那智山青岸渡寺・三重塔・飛瀧神社(那智の滝)を散策

12:20

那智の滝前

  • バスにて移動。出発時間に注意!

紀伊勝浦駅

13:00

勝浦漁港にぎわい市場にて昼食

弁天島や足湯「海乃湯」を散策

15:50

紀伊勝浦駅

  • 紀勢本線 新宮行

新宮駅

徐福公園や阿須賀神社、新宮城跡を散策

17:30

新宮駅

  • 「南紀8号」 名古屋行
20:50

名古屋駅

  • バスはフリーきっぷで乗車可

美しい峠道や熊野灘など、雄大な自然に心癒される「伊勢路コース」

がっつり歩きたい方におすすめの1泊2日プラン


鬼ヶ城では自然の造形美と熊野灘を堪能 写真提供:三重フォトギャラリー


1日目
8:00

名古屋駅

  • 「南紀1号」 紀伊勝浦行
11:30

熊野市駅

  • 熊野市駅周辺で昼食

獅子岩・七里御浜・花の窟神社などを散策

14:30

丸山千枚田・通り峠

  • バスにて移動。出発時間に注意!
18:30

熊野市駅


2日目
8:20

熊野市駅

  • 紀勢本線 多気行

大泊駅

11:00

松本峠や鬼ヶ城、熊野市駅前特産品館(土産物店)を散策

  • 鬼ヶ城センターにて昼食
13:50

熊野市駅

  • 紀勢本線 紀伊長島行

尾鷲駅

  • 尾鷲駅からバスにて移動。出発時間に注意!
15:20

三重県立熊野古道センターや夢古道おわせ、おわせマルシェを散策

17:30

大曽根浦駅

  • 紀勢本線 紀伊長島行

紀伊長島駅

  • ここで夕食を購入!
18:40

紀伊長島駅

  • 「南紀8号」 名古屋行
20:50

名古屋駅

  • バスはフリーきっぷで乗車可

特急「南紀」沿線の熊野古道の名所をはじめとした観光地やグルメ、特急「南紀」での旅に便利な「南紀・熊野古道フリーきっぷ」を紹介するサイト「JRで南紀へ」もあわせてチェックするのがおすすめです。


ウェブサイト「JRで南紀へ」


列車情報

運転日 毎日運転(1日4往復)
運転区間 関西本線・伊勢鉄道伊勢線・紀勢本線 名古屋駅~新宮・紀伊勝浦駅間
運転時刻 【1号】名古屋駅8:02発→紀伊勝浦駅11:56着
【7号】名古屋駅19:45発→新宮駅23:14着
【2号】新宮駅6:20発→名古屋駅9:42着
【8号】紀伊勝浦駅17:11発→名古屋駅20:49着
※始終発列車を掲載

ウェブサイト「Hello New NANKI」


著者紹介

ミスターK(結解喜幸)

1953年、東京都出身。出版社勤務を経て旅行写真作家に。鉄道や時刻表のたのしさを知り尽くした鉄道の達人。現在は地酒とつまみを追い求める「飲み鉄」にはまっている。

  • 文/ミスターK(結解喜幸)
  • 写真/JR東海、交通新聞クリエイト、(C)NACKT(那智の滝)、三重フォトギャラリー(鬼ヶ城)
  • 掲載されているデータは2023年7月1日現在のものです。
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