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首都圏エリアで活躍したデッキ付き電気機関車

貨物列車牽引に活躍したEF13形・EF15形電気機関車

 昭和19年の戦時下に資材を節約した戦時設計車として登場したのが、EF13形直流電気機関車です。EF12形の性能と資材の簡素化・節約を両立させるため、車体は使用する鋼材を節約した凸形スタイルとなりました。昭和22年まで31両が製造されましたが、戦時設計の車両は故障も多く問題となっていました。

 昭和28年から昭和32年にかけてデッキ付きのEF58形旅客用電気機関車の初期車に半流線型の新しい車体を載せることになり、31両分の旧車体が余剰となりました。これにより、EF58形の車体に載せ替えて整備した新スタイルのEF13形となり、EF12形と同等の性能を生かした車両に生まれ変わりました。EF10形とともに首都圏エリアで活躍を続けていましたが、昭和54年までに全車廃車となっています。

 戦後も戦時設計のEF13形が増備されましたが、昭和22年に新開発のEF15形直流電気機関車が誕生しました。旅客用のEF58形と共通の電気機器や台車を使用する標準形として昭和33年までに202両が製造され、直流電化区間の貨物列車牽引機の主役として活躍することになりました。新系列のEF60形やEF65形などの登場後も活躍していましたが、昭和62年までに定期運用が終了しています。

 なお、EF15形の一部車両は回生ブレーキを装備した勾配区間用に改造され、奥羽本線板谷峠用のEF16形1〜12号機および上越線水上〜石打間用のEF16形20〜31号機になっています。

半流線型の車体に載せ替えたEF58形の旧車体を再利用して箱型車体に変更となったEF13形

戦後の貨物輸送の増加に対応するため202両が製造された貨物列車牽引用のEF15形

東北本線の旅客列車に活躍した EF56形・EF57形電気機関車

 国産の大型旅客用直流電気機関車として登場したEF53形をベースに、客車暖房用の蒸気発生装置を搭載したのがEF56形直流電気機関車です。冬期の旅客列車牽引では機関車と客車の間に暖房車を連結していましたが、EF56形では暖房車の連結が不要となり、運用効率が向上することになりました。昭和12年製造の1〜7号機は丸みを帯びたスタイルで、昭和15年製造の8〜12号機は角張ったスタイルとなりました。この時代に製造された電気機関車は製造年度によりスタイルに差異があり、他形式で同様のスタイルを見ることができます。

 昭和15年に製造された13号機は主電動機の出力をアップしたため、後継機となるEF57形の1号機に形式変更されました。EF56形は車体中央寄りにパンタグラフを設置しているのが特徴ですが、EF57形1号機はその特徴を引き継いだスタイルとなっています。

 EF56形の主電動機の出力をアップして登場したEF57形は、昭和16年登場の2号機から15号機までパンタグラフを両端に配したスタイルに変更。昭和24年の東海道本線浜松電化ではパンタグラフの高さを低くする必要があったため、さらにパンタグラフを車体前面に付き出したスタイルとなり、ほかの形式には見られない独特なものとなっています。

 晩年はEF56形とともに宇都宮機関区に配置され、東北本線上野〜黒磯間の旅客列車や荷物列車の牽引に活躍。昭和50年にEF56形、昭和53年までにEF57形が全機廃車となっています。

パンタグラフを車体中央寄りに設置し、暖房用の蒸気発生装置を初めて搭載したEF56形

晩年は宇都宮機関区に配置され、東北本線上野〜黒磯間の旅客列車牽引に活躍したEF57形

山陽本線セノハチ越えの補機 EF59形・EF61形電気機関車

 山陽本線瀬野〜八本松間(通称:セノハチ)には22.6‰(パーミル)の急勾配が連続するため、蒸気機関車時代から補機が連結されていました。昭和38年度末に貨物列車の電気機関車牽引が実施されるのに合わせ、同区間の補機もD52形蒸気機関車から電気機関車に置き換えられることになり、EF53形を補助機関車仕様に改造してEF59形直流電気機関車が誕生。昭和43年までにEF53形19両全機がEF59形に改造され、さらにEF56形を改造した5機のEF59形が登場しました。丸みを帯びたスタイルのEF56形初期車から改造されたEF59形20〜23号機以外は角張った箱型スタイルで、一目で違いがわかる外観になっていました。

 同区間では1200tクラスの貨物列車がEF59形の重連、荷の軽い貨物列車や旅客・荷物列車は単機で補機の任務に就いていましたが、ブルートレインなどは広島駅で後部にEF59形を連結し、勾配区間を越えた八本松駅の手前で走行開放を行なっていました。

 昭和50年代に入ると戦前のEF53形やEF56形の老朽化を考慮し、新系列の電気機関車を補機仕様に改造した後継機が計画されました。EF60形の初期車1〜14号機を補機仕様に改造してEF61形200番台(元のEF60形の車番に+200)とすることが決定し、新系列の電気機関車では唯一となるデッキ付き電気機関車が誕生。EF59形を置き換えることになりましたが、重連にすると押上げ力が強くて脱線の可能性も出たため、8両で改造計画は中止になりました。このため、改造中止となった6両(202・205・208・212〜214)が欠番となっています。

 なお、昭和57年にEF60形100番台を補機仕様に改造したEF67形が登場し、昭和61年までにEF59形が定期運用から離脱。EF61形200番台もEF67形200番台に置き換えられて、平成3年までに全機廃車となっています。

EF53・EF56形を改造したEF59形は山陽本線瀬野〜八本松間の勾配区間の補機として使用

新系列の電気機関車で唯一デッキが付けられているEF60形改造のEF61形200番台

※掲載されているデータは平成22年10月現在のものです。

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