2024.08.28ジパング俱楽部夜の森を歩いてアイヌの世界を体験! 光と音が織りなす「カムイルミナ」|現地発!おすすめ旅ネタ情報
現地発・おすすめ旅ネタ情報
このコーナーでは、旅好きライター・観光ナビゲーターが、ご当地ならではのおすすめスポットや旅ネタ情報をお届けします。
今回紹介するのは、北海道釧路市にある阿寒湖(あかんこ)で開催中のナイトウォーク「カムイルミナ」についてです。
- ※トップの画像は「カムイルミナ」ビジュアルイメージ
阿寒湖畔の森で繰り広げられるアイヌの世界の物語
2019年に初めて開催された「カムイルミナ」は、光と音が融合するデジタルアートを駆使した体験型観光プログラム。自然豊かな国立公園内にある夜の森を歩きながら、神秘的なカムイ(神)の世界へ導かれる特別なひとときです。
火山活動がつくった湖と森の美しい景観地域
北海道東部の根釧地方は、国内最大の釧路湿原をはじめとした湿地帯や大規模な酪農地帯が平野部の多くを占め、地平線が見えるほど広々とした景色が続きます。
ところが、内陸の阿寒摩周国立公園エリアはちょっと違う雰囲気。摩周湖(ましゅうこ)・屈斜路湖(くっしゃろこ)・阿寒湖という3つのカルデラ湖の周囲や外輪山には原始的な森が広がり、野生動物や野鳥がのびのびと命をつなぐ環境が残されています。
道東で暮らす私にとっても、このエリアはどの季節に何度訪れても「森が深いなぁ、生き物の気配がぷんぷんするなぁ」というワクワク感を与えてくれる地域です。
アイヌ文化が脈々と受け継がれる阿寒湖温泉街
温泉宿と民芸品店が立ち並ぶ阿寒湖の町を歩いていると、いたるところでアイヌの伝統的な文様や木彫のモニュメントが目に入ります。
ここは北海道先住民族アイヌの文化が大切に守られ、受け継がれている場所。温泉街の一画にあるアイヌコタン(集落)には芸術性の高い手作りの木彫や刺繍製品を売る店が軒を連ね、最奥の「阿寒湖アイヌシアター イコㇿ」では古式舞踊などが上演されています。
温泉が湧く森の遊歩道がナイトウォークの舞台
温泉街の湖畔には「ボッケ遊歩道」と呼ばれる森の小道が整備されています。その森を舞台に、2019年に始まったのが「カムイルミナ」です。
制作を手がけたのは、音・光・映像を融合させたデジタルアートの世界で最高峰といわれるカナダのアーティスト集団「モーメント・ファクトリー」。「シルク・ドゥ・ソレイユ」や世界的アーティストのコンサートの演出なども行なってきました。
阿寒湖の「カムイルミナ」では伝統文化を取り入れ、アイヌの世界観と伝承をもとにひとつの物語が組み立てられています。
参加者はひとりにつきひとつ、アイヌ民族が森歩きに使う杖をモチーフにした「リズムスティック」をスタッフに手渡されます。この杖がナイトウォークに欠かせないアイテム。
“村の守り神”のフクロウが語るカムイの物語や音楽が聞こえてくるスピーカーであり、足元を照らす明かりであり、時には地面を叩いて一緒に物語を進める道具の役割も果たすのです。
あたりは想像以上に暗く、イルミネーションやスタッフが要所要所で導いてくれるとはいえ、普段は足を踏み入れることのない夜の森にドキドキと胸が高鳴ります。
カケスに導かれ、みんなで動物たちを人間界に戻す!
ナイトウォークの物語は、カムイの世界から送られてくる大切な動物たちを人間が敬わなくなったため、カムイの怒りをかって動物たちがいなくなってしまう……というところから始まります。歌を奏でる“運命の鳥”・カケスと一緒にリズムスティックを使ってカムイにメッセージを届け、動物たちを戻してもらおうというのが参加者である私たちの使命。
「ボッケ遊歩道」のうち約1.2キロの道のりに8つのポイントを設け、地形や風景、森の木々をそのまま生かしながら、プロジェクションマッピングや音楽と光のショーが次々と行なわれていきます。
アイヌ語の歌や伝統楽器・ムックリの調べ、マリモの演出など、アイヌ文化や阿寒湖の自然を感じられる場面が数多く登場。もともと遊歩道の見どころのひとつである「ボッケ」では、森の中にボコボコと自然湧出する天然温泉の湯煙や硫化水素臭も効果的に利用されています。
私が歩いた日は空に満天の星が輝いていて、デジタルアートが生み出す無数のきらめきと本物の星の見分けがつかない状態に。あたり一面、星々の世界に包まれているようでした。
神聖な森の雰囲気と躍動感に溢れる演出とが交互に現れ、約1時間の森歩きはあっという間。自然とともに生きるアイヌの精神性を五感で楽しめるひとときでした。
先人たちが守ってきた豊かな自然と共生する観光プログラム
阿寒湖の宿に泊まった翌朝、「カムイルミナ」が行なわれた「ボッケ遊歩道」を愛犬とともに散歩してみました。
森は静寂に包まれ、湖の水音と鳥の声だけが気持ちよく響いています。あの光と音楽は一体どこから届いていたの?と不思議に思うほど、普段と変わらない森の小道が続いています。
じつは「カムイルミナ」に使われる装置はこの場所にある木や葉をうまく利用し、ぱっと見にはわからないよう隠されているのです。昨夜のことがまるで夢のように、ただ静かで豊かな森が広がっていました。途中でひょっこり現れたエゾシカだけが、最後のシーンで森に戻ってきてくれた動物たちの姿と重なります。
この森の自然環境は「カムイルミナ」の開催期間中も大切に守られ、過去には希少なクマゲラの繁殖行動が確認されたことを理由に、開催を延期したこともありました。
あくまで自然環境の保全を第一に考えながら、阿寒湖の自然・文化の尊さや共生の大切さを伝える「カムイルミナ」。道東を訪れたなら、ぜひ体験してほしいプログラムです。
カムイルミナ
問い合わせ先 | 0154-65-7121(阿寒アドベンチャーツーリズム) |
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時間 | 〜8月30日は19時〜21時30分、8月31日〜9月13日は18時30分〜21時30分、9月14日〜30日は18〜21時、10月1日〜11月3日は17時30分〜21時、11月4日〜9日は17時30分〜20時30分/15分毎(11月4日〜は1時間毎)にスタート |
定休日 | なし(雨天決行/雨の場合は傘の利用は禁止・レインコート着用) |
交通アクセス | 根室本線釧路駅から阿寒湖温泉行き阿寒バス約2時間の阿寒湖温泉下車、徒歩約6分の阿寒観光汽船「まりもの里桟橋」 |
値段 | 前売り券3000円、当日券3500円(阿寒湖地区のホテルでは宿泊者特典として当日券も前売り券と同額販売)※WEB購入または現地で購入 |
URL | https://www.kamuylumina.jp |
この記事を書いた人
- ※記事中の情報は2024年8月時点のものです。
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