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鉄道カメラマン太鼓判!ローカル線でぶらり紅葉狩り vol.4 北上線 車窓を流れる色づいた景色、のんびり走る列車。ご紹介する“紅葉列車”は鉄道カメラマン太鼓判!の路線ばかり。今年の秋は、ローカル線で紅葉狩りを楽しみませんか。

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  • 北上線[岩手・秋田]横手やきそば、北上コロッケ ご当地グルメをはしご

横手やきそば、北上コロッケ…ご当地グルメをハシゴ 北上線|北上→横手 紅葉の見頃:10月中旬~11月上旬(例年) 北上線は岩手と秋田を繋ぐ山間のローカル線。本数も少なく、途中下車すると次が来るまで2~3時間待つこともあるが、景色と温泉、ご当地グルメと3拍子揃った楽しみがあるのが魅力だ。

まずは、コロッケで腹ごなし。スッポン、古代米など変わり種グルメも

 旅の始発に選んだのは岩手県側の北上駅。翌朝早い時間から行動しようと、前日の夜からここにやってきた。夕食はもちろん、二子さといもをベースに、名産のアスパラガスと県内産牛豚を使用した「北上コロッケ」だ。もっちり粘っこいので腹持ちはかなりいい。

 翌日は朝6時過ぎの列車に乗るべく北上駅へ。土曜日のせいだろうか、駅に人影はほとんどない。案内に従い1番線に向かい、1両編成のワンマンカーに乗り込む。乗客は地元のお母ちゃんひとりだけ。やがて列車はジワジワと動き出し、柳原、江釣子(えづりこ)を経て、藤根ですれ違いのためしばし停車。実に静かな朝である。

 藤根を過ぎると心なしか列車のスピードが上がり、立川目、横川目あたりから次第に山の風情が漂ってくる。岩沢からはトンネルが増え、いかにも山間の駅名らしい和賀仙人(わかせんにん)を過ぎると本格的な山の風景に変わってきた。

 列車は次第に高度を上げ、朝もやの中を進んでいく。トンネルの切れ間から沢もチラチラ見えている。さらに進むと、突然視界が開けたような形で錦秋湖(きんしゅうこ)が姿を現す。周囲の山々が美しく彩られる秋は、絶好の紅葉スポットになる場所だ。

 思わず車窓にかぶりついてみるが、またすぐにトンネルへと入り、やがて、ゆだ錦秋湖駅に到着。駅名に湖の名が付いていても、ホームからは見えない。湖と紅葉の競演は、次のほっとゆだ駅までの間に凝縮されているといってもいいだろう。

 ゆだ錦秋湖を出た列車は右手に湖を見ながら進み、やがて赤い鉄橋を渡る。ここは鉄道マニアの間で絶好の撮影スポットで、シーズン中は様々な角度からレンズが狙っているという。

 次の停車駅、ほっとゆだは駅前にタクシーも数台、近隣の湯本温泉や湯川温泉に行くバスも出ている。列車に揺られお腹も空いてきたので、そろそろ途中下車を楽しむこととしよう。と、その前に、駅構内にある温泉にザブンと入り気分転換。湯上がりは地元の湯田牛乳をグイッと飲む。よし、これで食欲も湧いてきた!

ほっとゆだ駅内にある温泉施設「ほっとゆだ」。浴室の信号機が列車の接近を知らせてくれる
ほっとゆだ駅の売店では地元の湯田牛乳が各種揃う。風呂上がりはこれで乾杯! 牛乳やカフェオレ、牛乳寒天などがある

うどん、そば、焼きそば…。麺好きにはたまらない北上線。

 意表をつかれたのは、ほっとゆだ駅前の「湯夢プラザ」レストランにある各種スッポン料理だ。豊富な温泉資源を活用した養殖事業により提供されているという。他にも町内産の古代米を利用したメニューがあり、ひっつみ定食はお値段も手頃。秋におすすめなのは、地元の天然キノコを使った料理の数々。駅から徒歩3分ほどの「いろり」では、その山の幸をふんだんに使ったきのこ丼が絶妙にうまい!

 先を急ごう。ゆだ高原、黒沢、小松川、平石とひなびた駅を通過して相野々(あいのの)へ。このあたりは山内(さんない)地区と呼ばれ、名物はいものこ、そばだ。両方が食べられるポイントは平石駅近くの「道の駅さんない」。秋の味覚「いものこ汁」は定番中の定番。十割ながら喉越しのよい山内そばもたくさんのファンがいる。また、相野々駅に併設されたレストランでは、いものこを練りこんだうどんが静かな人気を博していた。

 相野々を過ぎれば、終点横手はすぐ近く。ローカル線の旅を締めくくるのは、名物の「横手やきそば」しかないだろう。ストレート麺に挽き肉とキャベツ、多めの汁(ウスターソース)で仕上げ、目玉焼きと福神漬がアクセント。最初は汁の多さに驚くが、すんなり入っていくから不思議だ。提供する店の数はかなり多く、居酒屋でも気軽に食べられるので一日の〆にちょうどいい。

黒沢駅。駅舎はあるが無人駅なので、待合室のみ利用可能
村さ来亭(相野々駅構内)のさんないいものこうどん。麺には名物のいものこを練りこんである。麺はほのかに甘い


なんばんや(北上駅から徒歩10分)のカレーコロッケうどん。コロッケの中身もカレー味なのが他の北上コロッケと違う点だ


ゆだ錦秋湖駅の待合室。無人駅ながらとてもきれいに使われている


ほっとゆだ駅。左の暖簾があるところが温泉、真ん中は売店への入口。一番右側は駅への入口となっている


湯夢プラザ(ほっとゆだ駅前)のすっぽんラーメン。もちろん肉も入っています。精力つきます、つかせます


ゆだ高原駅。奥の水色の建物が駅舎だ(無人駅)


横手のご当地グルメといえば「横手やきそば」。太く真っ直ぐな麺が特徴で、具にはキャベツや豚挽き肉、目玉焼きがのる


横手市内のスーパーで販売していた横手やきそばの麺とソース。全部あわせても500円でおつりが来た

路線データ

JR北上線
北上~横手61.1km/駅数17/普通運賃=北上~横手1,110円
新幹線も停車する岩手県北上駅と秋田県の奥羽本線横手駅を結ぶ路線。駅の多くは無人ながら、味のある駅舎が多数存在。蒸気機関車やトロッコ列車が走った実績もあるので、鉄道ファンにはお馴染みといえよう。

立ち寄り湯へ行こう!JR北上線の個性派“湯っこ(温泉)”めぐり

 北上線では温泉も要チェック。定番のほっとゆだ駅内にある「ほっとゆだ」をはじめ、ゆだ錦秋湖駅のすぐ近くには、洞窟と露天も楽しめる「穴ゆっこ」、槻沢温泉(JRほっとゆだ駅から車で約15分)には砂風呂が楽しめる「砂ゆっこ」などがある。

 「穴ゆっこ」は鉱山の坑道をイメージした洞窟風呂が名物で、内部はスチームバスのような熱気が満ちている。また「砂ゆっこ」には一般の浴室もあるが、砂湯目当ての客が多い。じんわり全身を温めてくれ、腰痛に効果ありとの評判だ。まずは個性豊かな3つの湯っこをめぐってみよう。

左=「砂ゆっこ」の砂風呂
右=「穴ゆっこ」はスチームバスのような洞窟風呂

TOP写真=マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ(北上線 ゆだ錦秋湖~ほっとゆだ駅間)
取材・撮影=西内義雄
※掲載されているデータは、平成21年10月現在のものです。
※月刊『旅の手帖』2008年10月号より転載。

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