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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。旅先ならずともちょっと出かけて朝風呂に入り、ついでに一杯飲んで帰るという新刊、『ふらっと朝湯酒』(カンゼン)発売中。

指宿枕崎線 いぶすきまくらざきせん

九州新幹線の終着駅、鹿児島中央(鹿児島市)から山川(指宿市)を経由し、枕崎(枕崎市)までの36駅。87.8km。鹿児島湾に沿って走る。西大山(指宿市)はJRで最も南にある駅だ。

 

 指宿に到着。張り子の竜宮城があり、ハワイアンが流れている。だけど足湯もある。指宿駅前、イメージが混乱している。
 意地で宿まで歩き、まだ部屋に入れなかったので砂蒸し温泉までさらに歩く。頭だけ出して砂に埋められると、砂の重さで自分の鼓動がドクンドクンするのがわかった。ほかほか温かい。でも浴衣のまま埋められることと、たった10分間という短さが予想外だった。日本人の彼女と来ていた若い白人男性は、怯えた眼で砂に埋もれていた。ボクも、むしろ出た後のお湯の温泉のほうが気持ちよかった。

 宿の部屋であらためてくるぶしを見たら紫色になっていて驚く。靴擦れというより打撲だ。足首を回しただけでも鈍痛がする。合わない靴の恐ろしさを思い知る。


指宿の宿で見たらくるぶしがこうなってた。
痛いはずだ

 夜は駅前で当たりを付けておいた「青葉」で食べる。旬のそら豆のポタージュがすっごくおいしかった。焼きそら豆で薩摩ビール。最強。新しい店だったが、予想通り昭和28年「若草食堂」として創業したと書いてある。黒豚はスペアリブを頼んだ。と芋焼酎「利八」。スペアリブ、たしかにビーフじゃないがポークって感じでもなく、食べているうちどんどんおいしくなっていく不思議な肉だった。帰りは無理せずタクシーで宿へ。宿の温泉に浸かって、早めに寝る。


つたい歩き中に桜島大根発見! 
デッカイ。なんだか感激

残念すぎる開聞岳。ああ、晴れていたら絶景なのに。
菜の花は咲いてるが寒い

 翌日、歩くのはやめるつもりだったが、意外にもくるぶしの痛みはかなり引いていた。砂蒸しと温泉と黒豚効果か。かかとにハンカチを敷き、線路につたい歩き出す。畑に桜島大根があって、おお! と思う。やがて線路と離れたが、海沿いの道路歩きが気持ちいい。1時間半ほどで山川駅到着。小さな漁港の町だ。
 小雨が降って来たので、足をいたわってここで電車に乗る。そして日本最南端のJR駅・西大山に到着。ホームからドーンと開聞岳(かいもんだけ)が見える絶景プレイスなはずが、雲で山頂が隠れていて残念無念。菜の花も咲いていて、晴れていたら最高なんだろうなぁ。

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