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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。

中央本線 ちゅうおうほんせん

東京から塩尻(塩尻市)を経て名古屋までの396.9㎞、112駅(岡谷~塩尻の支線のぞく)。
今回は山梨市(山梨市)から勝沼ぶどう郷(甲州市)まで、10㎞程度を歩いた。

 


もう手を伸ばせば、ブドウがちぎれる。真っ盛り!

 ブドウの季節のまっただ中に、中央本線につたい歩くことにした。勝沼ぶどう郷駅と山梨市駅間を歩くことにしたのだが、まず東京から山梨市まで行ってしまい、そこから引き返すように勝沼を目指すことにした。というのは、ゴールにブドウ畑が来たほうが盛り上がると思ったからだ。

 山梨市駅に着いたのは午前11時。駅を出ると、いきなり小さなブドウ棚をくぐるようになっている。これはいい演出。ちゃんと本物の緑色のブドウがなっている。でも他の季節は?と余計な心配。

 まず腹ごしらえに、名物ほうとうを食べることにした。探しまわるのも時間がもったいないので、駅から0分の「のんきばぁーば」という店に入る。田舎調でも民芸調でも老舗っぽい雰囲気でもない店で、全然期待しないで入ったが、出てきたほうとうが、ものすごくウマくてビックリした。麺も手打ちということでおいしかったが、なにより汁が、驚くほどおいしかった。今まで自分がほうとうをどこか馬鹿にしていたことに気づく。自家製の唐辛子を入れて食べるとさらにウマさが加速した。あっという間に食べ終わってから、そのほうとうの写真を撮り忘れていることに気づく。なってない。仕事しろ、俺。

 駅前はとくに何もない。さっそく道路を東へ歩き始める。道端に地元産であろう新鮮な桃やキュウリ、ネギ、ナス、インゲンが売られている。すごく安い。駅を少し離れると視界が開け、見回すと360度、遠くに山がつらなり、ここが甲府盆地の一部であることが、ハッキリわかる。薄く雲がはり、まだ残暑だが涼しくて歩きやすい。

 国道沿いの農機具店の店頭に、モデルハウスならぬ「モデルパイプハウス」があり、あらためて山梨が農業県であることを感じる。

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