『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。

真岡鐵道 もおかてつどう

下館(茨城県筑西市)から茂木(栃木県茂木町)までの41.9km、17駅。週末を中心に今もSLが定期的に走る。
今回は栃木県の真岡駅(真岡市)から益子駅(益子町)までを歩いた。

 

 SLの発車までまだ15分ある。駅のそばには大勢の人がいた。みんなSLを待っているのだろうか。そうなんだろうな。駅前には商店街などはなんにもなくて、せっかくのゴールだが、土産も何もない。きっぷを買って、駅前のベンチで本を読んで、待つ。


益子駅でパラグライダーに手を振られる

 時間が来て、全員がホームに入った。みんなが空を見ているので、見上げるとパラグライダーが飛んでいた。そして、SLがやってきて、乗り込むと、パラグライダーはなんとSLを追いかけてきた。しかもいつの間にか3機も。鋼鉄の蒸気機関車と、ナイロンのパラグライダーの取り合わせが不思議で新鮮。パラグライダーに乗っている人は、低い空から手を振っている。

 窓から列車に手を振る人がたくさん見える。おじいちゃんが孫を抱いて、土手の上で手を振っている。田んぼの中に三脚を立てて大勢の人が写真を撮っていた。いいポイントなのだろうか。ボクもそっち側から、煙を吐いて田園を爆走する蒸気機関車の勇姿を見たい。
 ボクの歩いた道がずっと窓の下に続いている。ああ、これもあった、あれもあったという、つたい歩いた者にしかわからない楽しさがある。汽車から見る田園も美しい。時々、景色に煙が流れる。


中学生に「そこの君」と注意された

下館で小さなお祭りの中、声をかけられる

 終点下館で降り、少し街歩きしてみることにした。ちょっとシャッターが閉じた店が多いのは地方都市の寂しさだが、どうも今日はお祭りをやっているようだ。人が来る方へ行ってみると、神社で「羽黒のさんま祭り」なるものをやっていて大勢の人で賑わっていた。ボクはここでテレビの大ファンという居酒屋の店主に声をかけられ、おいしいビールを2杯ご馳走になってしまった。

※「旅の手帖」2014年12月号より掲載しました。

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