『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。

弥彦線 やひこせん

東三条(三条市)から弥彦(弥彦村)までの17.4km、8駅。
今回は上越新幹線が停車する燕三条から新潟平野の水田地帯を抜け、越後一ノ宮・彌彦神社の境内にある弥彦までを歩いた。

 

 道端の桜が紅葉している。ボクはカエデの真っ赤な紅葉もいいが、桜の紅葉も大好きだ。赤と黄色とオレンジと緑が混じった感じがいい。もう散り始めている。車道に「弥彦温泉10km」と出ていた。温泉があるのか。というか、10kmもあるのか。

 歩いている車道は、いつの間にか弥彦線からずいぶん離れて並行し走っている。そこで、もう少し線路に近い田んぼの中の道に移る。舗装されているが車も家もない道。まっすぐ山に向かっている。弥彦というのは、平地にどんと唐突に立っている山のようだ。向こうは海のはず。やっぱり特殊な山、神様扱いされやすい山なんだな、とわかった。弥彦線も並行している。ここで列車が来てくれたら弥彦山に一直線に向かうところか、やって来る最高のショットが撮れるのに! でも来る気配もない。

 時々現れる農家の木造家屋が皆似た造りで、がっしりと大きく立派。越後農家様式みたいなのがありそう。また家が増えてきて、ちょうどお昼、吉田駅に到着。この駅で越後線と交差している。父の郷里は、この越後線を柏崎方面に向かった小島谷(おじまや)という小さな駅から車で行く。宿を出た朝9時から歩き詰めだったので、駅の横の小さな公園のベンチで、途中の酒屋で買った、新潟のミネラルウォーター「麒麟山・山水」を飲んで休む。


一日歩いて、途中で列車に会えたのはただ一度

 線路に寄り添った道を歩いて行くと、踏切の音。この日初めて動いている弥彦線の列車を見た。2両編成の電車だ。

 30分ほど歩くと欄干が神社のように朱色の上西川橋が現れる。橋のたもとに「弥彦村」と大きな看板。おお、来た来た。田んぼが少しあったと思ったら脇道に「弥彦工業団地」の大きな立て看板。工業団地。意外。さらに車道を行くと、12時50分、道をまたぐ超巨大な鳥居が立ちはだかっている。近づいて仰ぐと「彌彦神社」と旧字で書いてある。


で、でかい。なんとビル10階分の高さなのだ!
前のページへ 次のページへ
旅の手帖mini

散歩の達人MOOK

バックナンバー

このページのトップへ