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久住 昌之 Kusumi Masayuki(文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。作曲・演奏をした『孤独のグルメSeason4』サウンドトラック盤(地底レコード)発売中。

香椎線 かしいせん

宇美(宇美町)から西戸崎(福岡市)までの25.4km、16駅。今回は和白から西戸崎までを歩いた。
西戸崎そばの西戸崎港からは福岡市営渡船があり、志賀島まで18分、博多港まで15分で結ぶ。

 

 福岡にある香椎(かしい)線につたい歩きしてきた。帰ってきて調べてわかったのだが、香椎線は全長25・4kmと短いながら、JR線で唯一、起点でも終点でも他線との連絡がない路線だそうだ。そんなこと考えたこともなかった。また、香椎から先のこの線路の愛称は「海の中道線」。「海の中道」というのは、九州本土と志賀島(しかのしま)を繋ぐ大きな陸繋砂州(りくけいさす)。博多で地図を見て、てっきり細い半島だと思っていた。砂州の道か。

 しかし今回は、失敗が多かった。朝、博多から鹿児島本線で香椎駅に行き、香椎線に乗り換えて和白(わじろ)駅で降り、そこから歩く予定だった。それが、ホテルで朝食後、つい二度寝して、寝坊した。慌てて出かけ、香椎で乗り換えようとしたら30分ぐらい待たなければならなかった。すごいロスタイム。焦った。和白駅まではふた駅だ、じゃあ、ってんで慌てて駅を出てタクシーなんか使ってしまった。このオトナ大名移動の罰が当たった。

 タクシーが和白に着いたのは午前10時35分。和白駅は小さな駅だが、香椎線と西鉄貝塚線が隣接している。なんとかスタート地点に着いたと、高架になっていく線路に沿って歩き出した。で、道が土手の下を潜ったら、すぐ線路があり、原っぱみたいな広い土地を左手にグーッと曲がっていく。ああ、いい光景だな列車が来ないかな、と思ったが線路に沿った道がない。どうしたもんかな、と思ってから、はたと気がついた。あ、こっちの線じゃないじゃないか。土手の上が香椎線だった。どうもうっかりしている。今潜ったじゃないか、危ない危ないと戻り、土手沿いの道を歩き出した。


西鉄三苫駅にて。カワイイなあ、なんて撮ってたが、線路が違った

 高架だった線路はまた地上に降りてきて、それに沿った道路もある。しばらく歩いたら、踏切が鳴り出した。お、列車が来るぞと、カメラを準備して待つと、濃いクリーム色の車体に赤いラインの入ったカワイイ2両列車がやってきた。早々と列車カットが撮れた、と一安心し焦る気持ちが和らぐ。三苫(みとま)駅を越えてしばらく住宅街を歩く。道が線路と離れたり近づいたりやっかい。住居案内図があったので、見てみると鉄道に小さく「西鉄宮地岳(みやじだけ)線」と書いてあるではないか!(平成19年に貝塚線に改称) つたい間違えた! 時計を見ると11時38分! 1時間、約4kmの無駄歩き! 三苫駅まで歩いて戻る。遠い。タクシーになんか乗ったから、香椎線の車体を見てないから気づかなかったのだ。駅を出て線路を潜ったところで、香椎線と西鉄線は入れ替わったのだ。振り出しの和白駅に戻って駅を出たら12時8分。 

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