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日本初の新在直通運転用車両として登場した400系。平成22年4月から新世代のE3系2000番台にバトンタッチする山形新幹線にスポットを当てて紹介します。 (文=結解喜幸 写真=結解学)

What’s 新在直通運転?

 現在のJRの路線の線路幅(軌間)は2種類あり、在来線が1,067mmの狭軌、新幹線は1,435mmの標準軌となっています。軌間の異なる新幹線と在来線を直通運転することは利便性とスピードアップが図れるため、車両の車輪の幅を変更できる「フリーゲージトレイン」の研究開発が行なわれていました。
 しかし、フリーゲージトレインの実用化には時間を要するため、JR東日本では在来線の軌間を1,435mmに改軌して新幹線との直通運転をするミニ新幹線方式を検討。奥羽本線福島〜山形間の軌間を変更して新幹線車両を運転することになり、平成2年度から同区間で改軌工事を開始しました。
 平成3年11月5日には福島〜山形間の単線の標準軌化が完成し、同区間の快速・普通列車用として1,435mmに対応した台車を履く719系5000番台が登場。また、当時の蔵王〜山形間には仙山線経由の貨物列車があったため、複線区間の下り線は1,067mmと1,435mmを組み合わせた三線軌条方式を採用。軌道上に3本のレールを配置し、内側の1本を1,067mm、外側の1本は1,435mmが使用するスタイルになりました。
 平成4年7月1日、東京〜山形間を直通運転する山形新幹線400系「つばさ」が営業運転を開始。車体寸法を在来線の車両限界および建築限界に合わせたミニ新幹線車両が、在来線区間に乗り入れる新在直通運転がスタートしました。
 平成9年3月22日には秋田新幹線盛岡〜秋田間(田沢湖線および大曲〜秋田間の上り線が1,435mmに改軌・神宮寺〜峰吉川間は三線軌条化)で新在直通運転が開始され、E3系を使用した秋田新幹線「こまち」が登場しました。
 さらに平成11年12月4日には山形新幹線の新庄延伸が行なわれ、「つばさ」用のE3系1000番台が登場。山形〜北山形〜羽前千歳間では左沢(あてらざわ)線と仙山線の線路幅が在来線規格の車両が運転されるため、下り線が1,067mm、上り線が1,435mmとなり、羽前千歳駅の手前では線路がクロスして逆側に移動する配置となっています。
 このように、在来線を1,435mmの線路幅に変更し、車両限界や建築限界を在来線に合わせた車両を直通運転するミニ新幹線方式の採用で、東京と山形・新庄・秋田方面が乗り換えなしで結ばれる利便性とスピードアップが図られています。

奥羽本線福島〜山形間が軌間1,067mm時代の板谷峠を走る485系特急「つばさ」

奥羽本線が改軌されたのにあわせて登場した軌間1,435mm対応の719系5000番台

初の新在直通運転車両として登場した山形新幹線400系「つばさ」

 平成4年7月1日の山形新幹線開業に合わせて登場したのが、初の新在直通運転車両となる400系です。車両分類は新幹線ですが、車体のサイズは在来線の車両限界および建築限界を適用しているため、車体の長さは20,000mm、車体の幅は2,945mmとミニサイズになっています。東京〜福島間で併結して走る200系と比べると小さな車体ですが、新幹線と在来線の両規格に対応するための機器を搭載。電源は在来線の交流20,000Vと新幹線の交流25,000V、保安装置は在来線のATS-Pと新幹線のATC(後にデジタル方式のDS-ATCに変更)、最高速度は在来線の130km/hと新幹線の240km/hの両方に対応したパンタグラフや台車、ブレーキ装置を装備するなど、ミニ車体に各種機器を搭載しています。
 車体幅が在来線規格のため、普通車は2+2席配置、グリーン車は2+1席配置のリクライニングシートを装備。新幹線ホームでは車体とホームの間に隙間が生じるため、新幹線ホームに停車する時には可動式のステップが出るようになっています。また、車体はスピード感を強調した流線型で、東京寄りの先頭車両となる11号車の411形には、200系車両(現在はE4系)と併結するための電気回路を装備した連結器を自動開閉式のカバー内に装備しています。
 現在の編成は11号車がグリーン車の411形、12号車はパンタグラフを装備した426形200番台、13号車は425形、14号車はパンタグラフを装備した426形、15号車は平成7年12月に7両編成化する時に増備した429形、16号車は425形200番台、17号車は422形。12〜15号車はシートピッチ980mmの普通車指定席用のリクライニングシート(15号車はE3系1000番台と同様の新座席を配置)、16・17号車はシートピッチ910mmの普通車自由席用のリクライニングシートを配置しています。なお、登場当時は窓まわりに濃いグレーの帯とグリーンの帯を配したデザインでしたが、平成7年12月登場のE3系1000番台と同じデザインに順次変更されました。

平成11年12月の新庄延伸で増備された山形新幹線用E3系1000番台

 新在直通運転の利便性がアピールされた山形新幹線は利用者数が増加し、さらに山形県北部エリアの交通の要衝となる新庄への延伸も計画されました。路線の延伸工事の進捗に合わせ、開業時に必要となる400系2編成の増備を検討。すでに秋田新幹線「こまち」用としてVVVFインバータ制御装置を搭載した新世代のE3系がデビューしていたため、山形新幹線の400系の性能に合わせたE3系1000番台が増備されることになりました。東北新幹線のE2系と併結する秋田新幹線用のE3系は最高速度275km/hですが、山形新幹線用のE3系1000番台は400系および併結するE4系と同じ240km/h(性能的には275km/h運転が可能)になっています。
 先頭部分は400系と比べるとシャープな流線型車体となり、車体がシルバーメタリックを基調に腰の部分にグレーとグリーンの帯を配するデザインに変更となっています。車内のデザインもE3系に準じたものとなり、グリーン車の座席配置は2+1席から2+2席に変更して定員増加を図っています。平成11年12月4日から東京〜山形・新庄間の「つばさ」で2編成がデビューを飾り、平成17年にはVVVFインバータ制御装置を最新のIGBT素子に変更した増備車が1編成登場。計3編成が山形新幹線「つばさ」用として活躍を続けています。

400系置換用として登場した山形新幹線用E3系2000番台

 200系車両と同等の性能で登場した400系は約18年間活躍を続けてきましたが、JR東日本の新幹線車両も新世代のEシリーズが活躍する時代となり、平成20年12月からE3系2000番台を新造して400系を置き換えることになりました。新庄延伸時に増備したE3系1000番台をベースとして、乗り心地の向上や車内の快適性の向上を図っています。
 まずは新幹線区間での左右振動を軽減するために、動揺防止装置のアクティブサスペンションを全車両に装備。快適な車内環境を得るための空気清浄機の装備や多目的トイレへ更衣台・姿見鏡の設置、大型フルカラーLEDによる情報案内装置の設置、グリーン車全座席と普通車窓側・車端部席に電源コンセントを設置、A4サイズパソコンに対応したテーブルの装備、出入り口付近に防犯カメラが設置されるなど、最新のサービス設備を装備。また、電動車椅子で使用可能なトイレの設置や出入口ドアが開く時に音声とランプで案内するなど、バリアフリーにも対応した車両となっています。
 平成22年4月1日現在、400系からE3系2000番台に11本が置き換えられており、400系で残るのはL3編成1本となっています。4月にはE3系2000番台1本が投入され、400系も全車両が引退することになりました。このため、4月18日には「さよなら400系」として新庄→東京間の「つばさ18号」(全車指定席・新庄発8時46分→東京着12時48分)で特別運転が行なわれます。なお、400系はE3系2000番台が1本増備される4月中に完全引退する予定になっています。

日本初の新在直通運転用車両となった400系。登場当時はメタリックな塗装であった

新幹線区間の各駅では列車とホームの間にできる隙間に対応したステップを使用する

東北新幹線東京〜福島間ではE4系8両編成の「Maxやまびこ」と併結して走る

福島駅の新幹線ホームでは400系(E3系)とE4系の分割併合シーンを見ることができる

山形新幹線新庄延伸にあわせて登場した精悍なスタイルのE3系1000番台

2010年4月で引退する400系の置換用として登場した最新鋭のE3系2000番台

 

写真協力:裏辺研究所(E3系2000番台)
※掲載されているデータは平成22年4月現在のものです。

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