『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

『フルムーン夫婦グリーンパスで行く 世界遺産ふたり旅~遥かなる時を超えて 7つの世界遺産を周遊する2500キロの旅~』夫婦の合計年齢が88歳以上で利用できる「フルムーン夫婦グリーンパス(以下、フルムーンパス)」。JR全線が乗り放題、しかも、新幹線を含めて快適なグリーン車に何度でも乗車できる(一部例外あり)。そんなフルムーンパスを使って、日本の14ある世界遺産のうちの7つを縦横無尽、ご当地グルメにも舌鼓。リッチでお得な「大人の修学旅行」に出かけよう。

  • 1日目 日光日帰りで夫婦円満祈願
  • 2日目 厳島神社と広島の旅
  • 3日目 奈良・斑鳩 古都の社寺へ
  • 4日目 高山・奥飛騨 名湯でゆったり
  • 5日目 白川郷に感動 帰路へ

3日目 いにしえの奈良、そして斑鳩 歴史ロマンあふれる古都の旅 東海道山陽新幹線・関西本線[広島⇒奈良…法隆寺]

  • 広島に到着した「ひかりレールスター」。フルムーンパスでは4人用個室も夫婦で利用できる

  • 「ひかりレールスター」の4人用個室にはパソコン用のコンセントもあってネット接続も可能

  • 大阪から奈良は、大和路快速が便利で楽だ。乗り換えもなく45分ほどで着いてしまう

  • 奈良では大和地鶏も味わってみたい。脂がのっており、旨味も満点の照り焼き丼でした

  • 奈良といえば名物の「茶粥」(ちゃがゆ)。ほうじ茶などでお米を炊いた身体に優しい料理です

  • 猿沢池のほとりでちょっと一休み。柳の並木の奥にそびえ立つ興福寺の五重塔が美しい

 二人で歩く奈良公園。奈良の鹿は宮島の鹿より大きい気がする。鹿と一緒に記念写真も写し、東大寺や興福寺へ。そして、斑鳩(いかるが)の里にも足を伸ばしてみよう。 広島発9時15分「ひかり546号」で新大阪へ向かう。レールスターには普通車だが4人用個室もあり、フルムーンパスなら夫婦二人だけで利用できる。大型のテーブルにはパソコン用コンセントも設置され、インターネット環境を持参すれば個室で旅先の検索も可能。

 途中、姫路には世界遺産、姫路城が立つ。今は修復工事中だが、このタイミングでなければ見ることのできない光景も。広島発7時15分「ひかり542号」ひかりレールスターで早出すれば姫路には8時22分に着き、お城をまわる時間が作れる。姫路発9時59分「ひかり468号」に乗車して新大阪10時38分着。ここでもともとのプランにも戻れる。

 新大阪から大阪へひと駅移動し、奈良へは乗り換えなしの大和路快速が便利だ。奈良到着後はホテルに荷物を預け、身軽な装いに。

 奈良公園一帯で世界遺産の社寺を訪ね、斑鳩の里へ。JR関西本線(大和路線)で法隆寺駅は奈良駅から10分ほどの近さ。世界遺産、法隆寺は駅から歩いても行ける。正岡子規の俳句「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」で知られる法隆寺は、見事な伽藍(がらん)もさることながら、周辺の町並みにも歴史が感じられる。静かな斑鳩の里を散策すれば、法隆寺の鐘の音も聞こえてくるかもしれない。

3日目●乗車距離:388.6 km 運賃合計2人分:2万1780円

モデルコース

いにしえの古都、奈良へ (3泊4日旅の2日目) 奈良泊
3日目 発着駅 時間 メモ
広島 発 09:15 山陽新幹線【ひかり546号ひかりレールスター】 4人用個室も利用可
新大阪 着 10:44 在来線に乗り換えて大阪へ
新大阪 発 10:54 東海道山陽本線「新快速」(平日・土休日とも同じ時刻)
大阪 着 10:58 乗り換え
大阪 発 11:03 奈良までは直通の「大和路快速」が便利(平日・土休日とも同じ時刻)
奈良 着 11:50 途中、法隆寺駅にも停車(11:39着)
古都、奈良や斑鳩の里を気ままに歩きます

旅のメモ

観光の問合せ
奈良市観光情報センター TEL.0742-27-8866
斑鳩町観光協会 TEL.0745-74-6800

とっておきの奈良

 平城遷都1300年祭で盛り上がる古都、奈良。マスコットキャラクターの「せんとくん」もすっかり馴染んでいる。奈良といえば多くの観光客が必ずと言っていいほど東大寺や興福寺もある奈良公園一帯へ行くと思う。あちこちにいる鹿も愛らしく、たくさんの人で大賑わい。法隆寺も同様で修学旅行生をはじめ人々がひっきりなしに訪れる。それが奈良だと印象付けられてしまいそうだが、ちょっとした時間のやりくりで「とっておきの奈良」と出会うことができる。

 "早起きは三文の徳"ではないが、猿沢池を含む奈良公園は人々が起き出す前の早朝がいい。静かで爽やかな空気が古都の景観をより一層美しく見せる。法隆寺は閉門間近、やはり大半の観光客が帰った頃がいい。静寂を取り戻した境内を飛鳥の風が吹く。法隆寺の周辺、法起寺にかけて斑鳩の里には古い町並みが残っており、ここもゆっくり散策したい。歴史の深さが随所に感じられる。

静けさ残る早朝の奈良を歩き、京都を経て、奥飛騨の名湯・平湯温泉へ 奈良線・東海道新幹線・高山本線[奈良⇒京都(宇治)⇒高山…奥飛騨]

  • 特急「ワイドビューひだ」グリーン車で一路、高山へ。広い窓からの景色を楽しみたい

  • 高山駅の真ん前にある観光案内所。ここで飛騨高山地方のいろいろな情報が入手できる

  • 飛騨地方らしく朴葉の上に盛られた「飛騨そば」。山菜の風味もよく、なかなかの美味

  • 古い町並みでの食べ歩きも魅力の飛騨高山。「飛騨牛たたきの握り」は上品な味わい

  • 宮川に沿った三町あたりの古い町並みはいかにも飛騨高山らしい。和の情緒に満ちている

  • 夕食の「飛騨牛朴葉焼き」。各地のおいしい料理を味わうのもフルムーンの旅ならでは

 奈良から京都、名古屋を経由して高山、平湯温泉へ行く旅の4日目。この日、奈良を遅めに出発するのには訳がある。まだ人々が起き出す前の静かな奈良を散策してみたいから。

 早朝の奈良、朝日を浴びる五重塔、柳が風にそよぐ猿沢池。水面に姿を映す五重塔はことさら美しく、古都の風情に満ちている。

 宿に戻って朝食を食べ、平日10時8分発の「みやこ路快速」で京都へ向かう。京都にも数多くの世界遺産があるが、少しだけプランを変更すればその一部を垣間見ることができる。奈良発8時8分(平日)の電車に乗ると宇治駅8時46分着。歩いて約10分の世界遺産、平等院を訪ね、宇治駅10時40分発の電車に乗れば、それはもともとの奈良発10時8分の「みやこ路快速」だ。京都から名古屋へ行く「ひかり514号」は700系。300系よりも世代が新しく、グリーン車の乗り心地も一段といい。時刻表ではどの列車が700系かわかるので、できれば700系を選んで乗車したい。名古屋からは在来線特急「ワイドビューひだ11号」で高山へ。大型の窓からワイドに風景が眺められる。

 飛騨の小京都、高山。宮川沿いの古い町並み、三町(さんまち)に漂う和風情緒……。ここは食べ歩きも楽しい町。この地方の銘柄牛である飛騨牛の握り寿司など、青春時代のデート気分でお腹も満足。そしていよいよ奥飛騨の名湯・平湯温泉へ。高山発16時40分のバスなら17時37分に平湯に着く。旅の最後の夜は源泉かけ流しの温泉に浸り、飛騨牛を味わいたい。

 

4日目●乗車距離:369.6 km 運賃合計2人分:3万2640円

モデルコース

奥飛騨の名湯でのんびり (3泊4日旅の3日目) 平湯温泉泊
4日目 発着駅 時間 メモ
ちょっと早起きして、早朝奈良散歩。その後、朝食をとり出発!
奈良 発 10:08 「みやこ路快速」で京都へ(平日ダイヤ。休日は10:09発)
京都 着 10:56 乗り換えの時間を利用し、京都駅を少し見学
京都 発 11:29 東海道新幹線【ひかり514号】 グリーン車 (700系)
名古屋 着 12:21 ゆっくりと乗り換え
名古屋 発 12:48 特急【ワイドビューひだ11号】 グリーン車
高山 着 15:05 古い町並みを散策し、バスで奥飛騨の名湯、平湯温泉へ
平湯温泉でのんびり 最終日はゆっくりの出発に

旅のメモ

観光の問合せ
飛騨高山観光協会 TEL.0577-32-5328(飛騨高山観光案内所)

フルムーン版「宿選びのコツ」

 フルムーンパスの旅は夫婦一緒の二人旅。せっかくだから、できれば宿選びで大失敗はしたくない。通常の運賃よりもかなりお得な旅ができるフルムーンパスでお得になった分、普段なかなか泊まれない各地の名旅館を訪ねてみるのもいいだろう。

 ここで宿選びのコツを少々。団体客が大勢やってくる大きな宿よりも、隠れ家みたいにこぢんまりとした宿のほうが夫婦旅に向いていると思う。大浴場が混み合うことも少なく、夕食は部屋食のところも多い。また、夫婦で貸切にできるお風呂や、部屋に専用露天風呂が付いている宿も選択肢の一つ。ただ、ここで注意したいのは、温泉地であっても温泉ではないお風呂があったりすること。できれば源泉かけ流しの良い温泉を選びたい。

 最近は宿もホームページなどで情報を公開しており、それらもぜひ参考に。そして、最寄駅からの送迎についても要確認。駅から送迎をしてもらえると楽ちんだ。

5日目 旅のクライマックスは、白川郷 合掌造りに重ねる夫婦の絆 高山本線・東海道新幹線[奥飛騨…白川郷…高山⇒東京]

  • 平湯温泉のバスターミナルは「道の駅」みたいだ。源泉かけ流しの温泉まで備えている

  • 秋の白川郷に広がる日本の原風景ともいえる景色。合掌造りの民家が並び、郷愁を誘う

  • 平家の落人伝説も残る奥飛騨、白川郷。合掌造りの屋根は本当に両手を合わせたようだ

  • 飛騨地方の郷土料理といえば「朴葉みそ」。朴葉にのせて焼くと香ばしくご飯がすすむ

  • 高山駅で発車を待つ、特急「ワイドビューひだ」。高山と名古屋を2時間半ほどで結ぶ

  • 名古屋駅では乗り換えの際、名物の「みそかつ」をテイクアウト。「でらうま」でした

 奥飛騨・平湯温泉で朝を迎えた旅の最終日。せっかくの夫婦旅行で、せっかくの温泉だから、貸切のお風呂で朝湯を楽しむのもよし、フルムーン世代なら演歌の名曲「奥飛騨慕情」を口ずさむのもよし。チェックアウトの時間までのんびり滞在したい。

 平湯温泉10時30分発のバスで高山11時27分着。白川郷へは高山11時50分発のバスで12時50分に着く。世界遺産、白川郷・五箇山の合掌造り集落。これまでに訪ねた社寺などの世界遺産とは違い、こちらは人々の暮らしの歴史そのものが文化遺産になっている。掌を合わせ、合掌した形に似た屋根を持つ民家。目の前にすると、その大きさ、そして、一つ屋根の下に暮らしてきた家族の絆が感じ取れる。夫婦であれば、掌を合わせた様は二人が支えあって生きてきた姿にも重なるだろう。

 秋の白川郷。その眺めは日本の原風景そのもの。また、例年「どぶろく祭り」が開かれ、芳醇な味わいは飲む世界遺産かとも思う。

 日光、宮島、広島、奈良、白川郷……。世界遺産をめぐるフルムーン旅行もそろそろ帰京の時が来た。白川郷15時ちょうど発のバスで高山15時50分着。またまた食べ歩きをしたり、おみやげなどを買い求め、高山発16時44分「ワイドビューひだ18号」グリーン車で名古屋へ。名古屋では名物の「みそかつ」をテイクアウト。旅の思い出とともに新幹線グリーン車で頬張ると、それは"でらうま(名古屋弁でとてもおいしい)"だった。

5日目●乗車距離:546.3 km 運賃合計2人分:4万4200円

モデルコース

白川郷をめぐり、東京へ (3泊4日旅の4日目)
5日目 発着駅 時間 メモ
バスで高山に行き、同じくバスで白川郷を訪ね、再び高山に戻ります
高山 発 16:44 特急【ワイドビューひだ18号】 グリーン車
名古屋 着 19:02 東海道新幹線に乗り換え
名古屋では時間に余裕をもたせ、名物の「みそかつ」のお弁当をテイクアウト
名古屋 発 19:33 東海道新幹線【ひかり484号】 グリーン車 (700系)
東京 着 21:40 世界遺産をめぐる旅の終わり

旅のメモ

白川郷観光協会 TEL 05769-6-1013

路線バスで“小さな旅”

 狭いようで広い国、日本。JRの全線が乗り放題できるフルムーンパスとはいえ、鉄道だけでは回りきれないところもある。例えば飛騨地方。この地方を旅する場合、中心都市、高山まで鉄道(高山本線)を利用し、そこから先、奥飛騨温泉郷や白川郷などへはバスで行くのが一般的な行程だと思う。都市間の高速移動、つまり"大きな旅"は鉄道で、地域内のこまごまとした移動、つまり"小さな旅"には路線バスも向いている。

 時間がよくわからず、乗りづらい印象を持たれがちな路線バス。しかし、『JR時刻表』のような大型の時刻表であれば、大概の時刻が掲載されており、事前にプランを組み立てる際に役立つ。また、バス会社もインターネット上に時刻やお得なきっぷなどの案内を出していたりするので、それらもチェックするとより安心できる。

 鉄道は環境に優しい交通機関といわれている。フルムーンの旅も環境に配慮し、路線バスも含め公共交通機関を上手に活用したい。

● 旅人(著者)紹介 相澤秀仁&相澤京子

写真家、パズル作家。日本のすべての都道府県を夫婦で3巡している。これまでに70日以上「フルムーン旅行」をし、JR路線も約70,000km乗車。著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』、『わらいねこ』をはじめ、『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。また、英語クロスワードパズルを新聞に17年に渡って連載。 ●ホームページ http://www.aizawa22.com

世界遺産・日光「二荒山神社」の夫婦円満の象徴「夫婦杉」前にて

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文・撮影:相澤秀仁&京子
※掲載されているデータは平成22年9月現在のものです。
※運賃は通常期で算出(すべてJR区間)。
※運賃計算キロ(JR西日本宮島フェリーは営業キロ)で算出

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