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フルムーン夫婦グリーンパスで行く新幹線の旅|心ときめく“やきもの”フルムーン~岡山、有田、笠間、京都、金沢をめぐる4500kmの旅~

  • 1日目|岡山では備前焼渋さに惚れ惚れ
  • 2日目|有田では有田焼そして、東京へ
  • 3日目|笠間では笠間焼日帰りで仙台も
  • 4日目|雅な京焼・清水焼風薫る京都の旅
  • 5日目|金沢では九谷焼百万石の華やぎ

1日目|新幹線の車窓を流れる備前焼の里岡山で備前焼に魅了され、博多へ|東海道・山陽新幹線[東京⇒岡山]/山陽新幹線[岡山⇒博多]

  • 東京駅で700系新幹線が出発を待っていた。スピード感にあふれ流れるようなラインが印象的

  • 備前焼の里は山陽新幹線からも見える。相生~岡山間、伊部(いんべ)付近を通過中に撮影

  • 岡山のギャラリーで購入した備前焼の「ぐい呑み」。土の力強さが宿った素朴な味わいがいい

  • 岡山で名物ランチといえばデミカツ丼。備前焼に似た色合いのデミグラス・ソースが特徴的

  • N700系「さくら」グリーン車、各座席にはモバイル用コンセントがありPC等の電源に利用可

  • 博多駅に到着したN700系「さくら」。岡山~博多間442kmを2時間とかからずに走る弾丸列車

 4月からスタートする新年度。ここは気分一新、器も新しいものを揃えてみたい。湯呑みにしても茶碗にしても、なぜか新しいものに替えた時、人は春風のように心ときめく。つまり「春はやきもの」、日本全国のJR線に乗り放題できるフルムーンパスで、お気に入りのやきものを探す旅にぜひお出かけを。

 有効期間5日間のフルムーンパスを使う旅、4泊5日で一気に列島をめぐる旅もできれば、1泊2日や日帰りを組み合わせた旅もOK。ただ、各地でやきものを探す旅ならば、短い日程の組み合わせがおすすめ。こわれものをずっと携行せずに自宅に持ち帰れ、発送等の手間もかからない。旅装が少なくてすむ分、いろいろと買い物が楽しめる。

 旅の前半は1泊2日。備前焼の岡山と有田焼の有田(佐賀県)を訪ねてみよう。備前焼の産地は、知る人ぞ知る山陽新幹線の沿線にある。相生(あいおい)駅を出発した下り列車がいくつかトンネルを越えたあたりで、突如、レンガ煙突が特徴の窯元が並ぶ伊部(いんべ)付近を疾駆。高速の車窓を飛ぶように流れる風景を目にすれば、備前焼の風合いが浮かび旅情がかきたてられる。

 渋さが味わい深い備前焼。もっと岡山で時間をとり、産地である伊部(最寄は赤穂線伊部駅)へ行ってみるのもいい。岡山駅やその周辺にも備前焼のギャラリーがあり、こちらでもお気に入りの器をゆっくりと探せる。

 岡山で名物といえば食べたいのはデミカツ丼。備前焼の色合いに似たデミグラス・ソースがかかったカツ丼だ。お気に入りの備前焼を手にお腹も満たし、「さくら」に乗って九州へ行こう。

1日目●乗車距離:1174.9km 運賃合計2人分:77,700円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
東京~岡山:@22,150円(乗10,190円 特グ11,960円) 乗車距離732.9km
岡山~博多:@16,700円(乗7,140円 特グ9,560円) 乗車距離442.0km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数

モデルコース

東京発5日間・前編 【旅の1日目】
心ときめく“やきもの”フルムーン 1日目

1

発着駅 時間 メモ

東京から岡山に立ち寄り博多へ(博多泊)
~ 700系、N700系に乗車 ~

東京 発 8:03 東海道・山陽新幹線【ひかり463号】グリーン車(700系)
岡山 着 12:23 岡山でランチ&「備前焼」のお気に入りを探します
岡山 発 15:46 山陽新幹線【さくら561号】グリーン車(N700系)
博多 着 17:34 この日は博多泊

旅のメモ

観光の問合せ
■岡山:岡山市観光案内所(岡山駅構内) TEL.086-222-2912

やきものコラム (1) 備前焼(岡山県)

 伊部(いんべ)など岡山県備前市あたりで作られる陶器、備前焼。日本六古窯の一つに数えられ、1000年の歴史を持つという。
 備前焼の特徴はなんといっても釉薬(ゆうやく=器の表面にかける上薬)を用いず、伝統的な焼締めの技法を守り抜いているところ。そして、土そのものの力を感じさせる渋い色合いにも味わいがある。言ってみれば、鬼退治に挑む桃太郎のような男性的な出来栄えの作品が多いように思う。一方、現代的でモダンな感じのビアマグ(ビール用マグカップ)やフリーカップなどもあり、色彩もやや青みを帯びたものもある。しかし、底流にはしっかりと土の強さが息づいていて頼もしい。
 備前焼の里を疾駆する山陽新幹線。新幹線から見えるやきものの一大産地、この点も備前焼の特徴の一つになるのだろう。

山陽新幹線から撮影した備前焼の里。山陽新幹線はやきもの産地のど真ん中を駆け抜けていく

2日目|佐賀県有田は、日本磁器発祥の地有田焼の店が並ぶ歴史的な町並み|鹿児島本線・長崎本線・佐世保線[博多⇒有田]/佐世保線・長崎本線・九州・山陽・東海道新幹線[有田⇒新鳥栖⇒新大阪⇒東京]

  • 博多駅停車中の特急「みどり」。新緑の季節、特急「みどり」のグリーン車と、緑がいっぱい

  • やきものの店が連なる有田の町並み。国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている

  • 有田は裏通りも魅力的。トンバイ塀(耐火レンガや陶片を塗り固めた塀)の路地はいい雰囲気

  • 有田焼陶祖の神として信仰を集める陶山神社。ここは佐世保線の線路を渡って行くのが面白い

  • 有田で購入の有田焼「そばちょこ」。帰りの特急「みどり」車内で手に取り、思わずにんまり

  • 名物の「有田焼カレー」は第7回「九州の駅弁」でグランプリ。味も有田焼の器もGOODです!

 新緑の季節、旅の2日目は博多からその名もずばり特急「みどり」のそれもグリーン車に乗って、日本磁器発祥の地、有田へ出かけ、歴史的な町並みを歩きつつ、お気に入りの器を見つけてみよう。

 やきものには陶器と磁器があるが、この違いをざっとおさらいすると、練った土(粘土)を焼いたのが陶器で、石英等を含む陶石を砕いた粉で焼き作るのが磁器。つまり、土っぽい風合いが陶器の特徴であり、光沢のあるガラスっぽい風合いが磁器の特徴。前日の備前焼は陶器、それも日本を代表する陶器の一つといわれ、有田焼は磁器の代表といえる。

 深い歴史を持つ有田焼。有田の磁器は江戸時代、遠くヨーロッパでも高貴な人々に愛され数多く輸出された。その栄華が今も残る町並みは国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定、どっしり重厚なたたずまいの店が連なる通りはやきもの散歩がとても楽しい。

 楽しいといえば裏通りもいい。トンバイ塀(耐火レンガや陶片を塗り固めた塀)の路地はやきものの町らしさが漂う。そして、佐世保線の線路を渡っていく陶山神社もお見逃しなく。こちらは有田焼陶祖の神として信仰を集めている。

 陶器市(4月29日~5月5日)が開かれる有田。ただ、この期間はフルムーンパスが利用できない。有田焼の「そばちょこ」を購入したお店でお茶をいただきながら話を伺えば、陶器市でない普段の時のほうがゆっくり見て回れるとお店の方が笑った。

 「有田焼カレー」がいまや名物駅弁となった有田。熱々のカレーを頬張ればやきものの町のパワーに全身が満たされる。

2日目●乗車距離:1364.8km 運賃合計2人分:95,180円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
博多~有田:@3,670円(乗1,770円 特グ1,900円) 乗車距離96.4km
有田~新鳥栖:@3,050円(乗1,250円 特グ1,800円) 乗車距離64.9km
新鳥栖~新大阪:@22,480円(乗9,620円 特グ12,860円) 乗車距離650.9km
新大阪~東京:@18,390円(乗8,510円 特グ9,880円) 乗車距離552.6km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数

モデルコース

東京発5日間・前編 【旅の2日目】
心ときめく“やきもの”フルムーン 2日目
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発着駅 時間 メモ
有田へ出かけ「有田焼」を購入し、
一旦、東京へ(自宅泊)
~ N700系、700系に乗車 ~
博多 発 8:34 特急【みどり3号】グリーン車
有田 着 9:55 有田で町並みを散策し、お気に入りの「有田焼」を購入
有田 発 15:12 特急【みどり20号】グリーン車
新鳥栖 着 16:07 乗り換え
新鳥栖 発 16:24 九州・山陽新幹線【さくら564号】グリーン車(N700系)
新大阪 着 19:21 乗り換え
新大阪 発 19:40 東海道新幹線【ひかり482号】グリーン車(700系)
東京 着 22:40 この日は自宅泊

旅のメモ

観光の問合せ
■有田:有田観光案内所(有田駅構内) TEL.0955-42-4052

やきものコラム(2) 有田焼(佐賀県)

 やきものと聞くと、真っ先に思い浮かぶ一つが有田焼だろう。17世紀初め頃、当地の泉山にて磁石(じせき=磁器の原料となる陶石)が見つかり、ここで日本初の磁器が誕生。江戸時代にはヨーロッパにも盛んに輸出され、有田発展の礎となった。
 当時の繁栄の様子を今に残す有田の町並み、ここはやきもの散策が本当に楽しい。やきものの店がこれほど集まる町は、日本広しと言えどそうはないと思う。
 有田焼は土っぽい陶器とは異なり、磁器ゆえの光沢からスマートな印象。普段使いの器から高価な作品まで実に幅広く、最近では猫をモチーフにした作品も。
 博多から有田へ向かう際、上有田の町並みは佐世保線からもよく見える。進行方向右側の車窓をご覧あれ。

有田駅に設置されていた有田焼の磁石(じせき)。この石が原料となって有田焼は作られる

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