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久住 昌之 Kusumi Masayuki(文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。文庫版『ひとり飲み飯 肴かな』(日本文芸社)発売中。

上信電鉄 じょうしんでんてつ

高崎(群馬県高崎市)から下仁田(下仁田町)までの33.7㎞、21駅。明治30年(1897)に全線開通。沿線には富岡製糸場があるように、生糸の運搬に活躍した。今回は東富岡から下仁田まで歩いた。

 おっ、あれは車掌車! 最近見なくなった貨物列車の車掌車が、民家の庭に鎮座している。錆び上がっていい焦げ茶色。周りを緑が包んでいる。鉄チャンなら家に1両欲しい、という叶わぬ夢を実現させた猛者がここにもいる。あの中はどうなっているのだろうか。どうやって運んで設置したんだろう。


おお! 個人で車掌車を自宅に所蔵している人が!
錆色さえも風格

 道はさらに広い車道に吸収された。上州一ノ宮駅。ここも木造瓦屋根だが新しい。
 いつの間にか山々が左右だんだん迫ってくる。この平地が山の中にV字に食い込んでいるのがわかる。線路の向こう側は高い土手になっていて大きな川が流れているようだ。
 またしばらく歩くと踏切音。今度はどんな車両だ。お、最新型に見える赤いのがやってきたぞ。「祝・世界遺産登録」号だ。


「祝・世界遺産登録」と書かれた赤いラッピング電車

 さらにお腹が空いてきたところにこれまたシブイ看板の「佐俣食堂」。またもやっていない。ついてない。
 前方の踏切が鳴り、ジオパーク号が通り過ぎる。「ネギとコンニャク ジオパーク」と書いてある語呂が面白い。踏切で見ると線路の先の山がずいぶん近くになった。山とぶつかるあたりが下仁田か。

 車道を歩いたり、裏通りが行けそうな道は細い道を気ままに歩く。「宇藝(うげ)神社」とある大きな鳥居があり、その鳥居の向こうに踏切が開いている。神社本体が見えない事もあって、なんだかシュールな感じがした。

 と思ったら、その踏切が鳴り出し、前から赤い上信電車。ナイスタイミング。今日は食堂にはフラれ続けているが、つたい歩きながら上信電鉄のいろんな車両に出会えている。

 高速道路の高架下を潜る時、壁に縄文人が槍を投げたり耕作をしているユーモラスな壁画があった。なんだろうと思うと、解説があり、ここは「南蛇井(なんじゃい)増光寺遺跡」という場所らしい。川は鏑川(かぶらがわ)というのか。このあたりの川の流域は関東から中部への交通の要所として開け、縄文時代から平安時代までの竪穴住居や土器や石器が大量に出土されたらしい。


南蛇井も、平仮名で書かれるとマンガみたいだ。
それがなんじゃい!

 少し行くと南蛇井駐在所があり、南蛇井郵便局があり、南蛇井駅に着いた。なんじゃい、なんじゃいと面白い。

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