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『秘蔵記事から読み取る時代のカケラ プレイバック交通新聞』 交通・運輸業界唯一の総合専門紙「交通新聞」。そこには時代の流れが詰まっている。記者暦ウン十年の上地が当時を振り返りつつ、今を、そして未来の鉄道を考えていこうという連載です。

第1号 昭和34年4月21日付の記事より修学旅行電車 晴れの門出

春の修学旅行。東京地区の中学校を例にとれば4月から6月までの3カ月間に90%近い学校が実施しているそうだ。

修学旅行で思い出されるのが修学旅行専用電車「ひので」「きぼう」である。今から半世紀前の昭和34年4月20日から東海道線品川~大阪間に運転されたツートンカラーの車両には中学生の夢と期待が満ち溢れていた。

この記事は品川、大阪駅での出発式の様子であるが、出席者の顔ぶれを見ると、関係者の力の入れようがよくわかる。国民も戦後の混乱期からようやく立ち上がり、昭和30年代後半からの高度成長期へと移行する時期だが、ベビーブーム世代が中学生となるため、輸送需要の激増に対処するための投入だった。

昭和37年5月に「ひので」で関西方面への修学旅行を体験した団塊の世代の男性は「カラフルでカッコいい『ひので』に乗っての修学旅行は楽しかった。戦後17年が経っていたが、みんな米を持って行った記憶があります」と当時を懐古する。

ここで修学旅行専用電車「ひので」「きぼう」を紹介する。

旧国鉄では155系電車と言われるもので、3次まで48両が製造されたが、1編成は12両で、東京からの出発が「ひので」、関西からが「きぼう」の愛称で呼ばれ、東京からの場合、行きの下りが昼間、帰り上りが夜行で運転された。所要時間は7時間30分、当時の急行並みのスピードと居住性であった。また、座席は6人と4人掛けのボックスシートで、跳ね上げ式の大型テーブルを設け、机替わりに使用できた。

その後、中京地区からの「こまどり」、中国地区の「わかあゆ」、近鉄の「おおぞら」なども運転されたが、東海道新幹線や東名・名神高速道路の開通で「ひので」「きぼう」は昭和46年10月の運転を最後に13年の歴史に幕を閉じた。

しかし、この間に約420万人の中学生が、修学旅行の思い出を刻んだ。

もうひと声 修学旅行は遠距離化、JRでは毎年出発式を開催

平成20年5月9日付の交通新聞掲載の写真。
東京駅丸の内地下南口にて出発式

 鉄道の開業は多くの児童・生徒・学生に全国各地の体験を実現するが、さらに高速化で、修学旅行の遠距離化が進むことになる。新幹線を利用するのは昭和45年から。昭和62年の教育の国際化提言で、中国、韓国を中心に海外への旅行も増えている。JRでは毎年、東京駅で春の修学旅行シーズンの幕開けを祝って出発式を行なっているが、今年も東海道・東北新幹線などを利用して500校を超える公立学校が、思い思いの目的地に出かける。

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