『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

鉄道が嫌いじゃない貴女におくる、女子力アップのヒント集『鉄子の部屋』 近頃認知度急上昇中なのが、女性鉄道ファン・通称“鉄子”。男性鉄道ファンに比べると、マニア度や緻密度においてはひけを取るかもしれませんが、情熱や遊び心は全く負けてない! 『鉄子の部屋』は全く新しい、女子のための楽しく明るい鉄道エッセイです。(注)鉄道が好きな女性を愛称で“鉄子”と呼びます。

*第2鉄* 列車を降りたらバーベキュー『比羅夫駅のホームでジンギスカン、丸太の風呂に入り、そのまま駅に泊まる。Part1』

含まれる鉄分
★貫通扉 ★振り子式車両 ★函館本線 ★駅舎の宿 など

文=神田ぱん

 短い函館観光を終えて、比羅夫(ひらふ)駅へ向かう。〔スーパー北斗〕か。JR北海道の「スーパー○○」って、みんなこの顔だな。細長くて口をくわっと開けて疾走する。目のない深海魚・ヌタウナギそっくり。もちろんヌタウナギをイメージ……なわけなく、連結しやすいよう貫通扉をつけ、運転席を上に持ってきたからだそうだ。でもディーゼルなのに最高130km/hの驀走列車で、顔の横には白く「FURICO281」と大書してあったりしてトラック野郎テイストだ。イカつい。はっ、またイカぐせが出てしまった、イカん。
 車内は、なんで今日あたり? と思うほど混み混みで指定席がありがたい。「せっかくだから指定乗る?」とH岩がみどりの窓口に走ってくれたのだ。〔スーパー北斗〕のふかふかシートと、FURICO、すなわちカーブでバイクみたいに車体が傾く振り子機構の振動が心地いい。この振り子で酔う人もいるらしいが、私はすぐさま爆睡した。

列車を降りたらバーベキュー

「もう着くよ、起きて!」とH岩に揺すられて、目覚めたら長万部(おしゃまんべ)駅。おお~ここがあの、おしゃ・まんべの! おしゃまんべですか! って地名以外、長万部に関する情報は持っていなかった。待ち合わせ時間を利用し、何か情報を得たいと思ったが、折悪しく雨。おとなしく座って待つことにしたが、折悪しく満席。H岩はさっさとカバンを床に置いて、その上にどっかと座っている。
 ローカル線の退屈な長い待ち時間は、いい。自分の無力さを感じてどんどん謙虚になるのが、いい。こぢんまりした待合室も懐かしくて、いい。小樽行き普通列車は、車両がキハ150形で新しめだけど、通勤通学の足という感じが、いい。二股(ふたまた)駅や蕨岱(わらびたい)駅は、駅舎はコンテナ車みたいで、いい。雪除けのトンネルみたいのがあるのも、いい。
 車窓に打ちつける雨を眺めながら、心細くて切なくて、なのにワクワクする。どんどん「旅」にはまり込んでいく。ウ・レ・シ・イ。特急だとこれがないんだよ、快適過ぎんだよ。前戯なしのホンバンみたいなもんだよ。やっぱ旅は各停に限るよ、ねぇ!? とH岩を見たら、寝てた。
 そろそろ比羅夫駅が近くなってきた。本日泊まるのは『駅の宿 ひらふ』。サイトには「日本でただ一つ 駅舎が民宿!」「プラットホームでバーベキュー」とあった。え、どういうこと。予約を入れたら「では17時48分到着のご予定ですね」と言われた。チェックイン時間を「48分」という細かさで指定するとは。期待に胸がふくらんだ。
 で、比羅夫駅。降りたらいた! ひとりぽつねんとバーベキューしてる男性がホームに! 脱兎と駆け寄り「こんにちは! あの、写真、写真いいですか!」といきなりのH岩。何せ本数のない函館本線、列車が停車しているうちに写真を撮らねばと焦る。何がなんだかわからずおびえる男性。何この人たち。鬼? 突如襲来した中年女に迫られて断れるわけもなく「あ。ハイ……」とうつむく。あー暗いー撮れないー、ストロボたきなよストロボ! とか言ってるうちに、列車は走り去り、我に返った。あれ。もしかして私たち、ものすごく失礼なことしてない?
 ヤダごめんなさ~い、えーっと。チェックインどうすればいいのかしらぁ~? 誤魔化してたら、オーナーさんが「いらっしゃいませー」とにこやかにやって来た。ふう。バレてないバレてない。「とりあえず宿帳お願いします」とオーナーに促され、駅舎へ入る。待合室とおぼしき場所は素っ気ない造りだが、猫のエサや寝床が置いてある。猫がいるんだな、へへ、うれしい。
 待合室に隣接したログハウス風のドアを開けるとフロント、というより居間のような部屋。ウッディでパッと見はペンションとか喫茶店みたいだけど、ストーブや階段の感じは『鉄道員』(ぽっぽやの方ね)で見た駅舎のそれだあ!
 宿帳を書き、いよいよホームでバーベキュー。ビールなどはフロントの冷蔵庫からセルフで出し、自己申告で清算する方式。食べよ、食べよ! とビールを抱えてホームに出たら、さっきの男性が肉を焼いている。あ。やべ。忘れてた……。

次回に続く

主な“鉄子”

神田ぱん
1963年生まれ。おひつじ座のO型。茨城県日立市出身。三児の母。ミニコミ『車掌』(内容は非鉄)の営業部員という顔も持つ。「ケータイ国盗り合戦」ではまだ武将止まり、目指せ太閤。文筆業。
屋敷直子
1971年生まれ。おとめ座のO型。川崎市生まれ、福井市出身。故郷を愛するあまり「ふくいブランド大使」に登録。会員番号05121359。特技はピアノ。0系新幹線ラブ。文筆業。
さくらいよしえ
1973年生まれ。てんびん座のA型。大阪府交野市出身。『日刊ゲンダイ』で連載。著書に『立ち飲み天国』(ライブドアパブリッシング)『読みキャベ』(交通新聞社)。転換クロスシート愛好家。文筆業。
H岩美香
1972年生まれ。しし座のA型。東京都目黒区出身。株式会社弘済出版社(現交通新聞社)入社後、時刻表編集部、月刊『散歩の達人』を経て、月刊『旅の手帖』編集部へ異動。忘年会はお座敷列車希望。サラリーマン。

書籍紹介

鉄子の部屋
『JR時刻表』『交通新聞』『鉄道ダイヤ情報』などでおなじみの交通新聞社が、満を持してお届けする、女子による女子のための鉄道エッセイ&ガイド本。
●定 価 1,365円(税込)
●仕 様 A5版160ページ

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