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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。平成21年から足掛け2年をかけて東京から大阪までを散歩した近著『野武士、西へ 2年間の散歩』(集英社)が発売中。

烏山線 からすやません

宝積寺(栃木県高根沢町)から烏山(栃木県那須烏山市)までの全8駅。20.4㎞。2014年春からは蓄電池を搭載した新型車両が走る予定。今回は高根沢町と那須烏山市を歩いた。終点烏山の先に流れる那珂川は鮎の漁獲量日本一を誇る清流。

 やがて、どこからか人が集まり始め、列車が来た。クリーム色の車体に緑のラインが入った古い2両編成。カワイイ。乗り込んだら、列車の窓が開いていて、天井で扇風機が回っていた。まだこんな列車があったのか。ゴトンゴトン走り出す。ご機嫌。車両のまんなか辺、座席の間にゴミ箱があった。そんな列車も初めて。しかもゴミ箱の上の窓の間に、小さな造花の花が飾ってある。タマラナイ。


楽しい烏山線車内。いろんな人が利用している。
ゴミ箱。造花。扇風機

滝駅の名の由来となった滝。大きくてビックリ! 
誰もいない。得した気分

 乗っているのは、女子高生、中学生、年配夫婦、そして明らかに鉄チャンの中年男性ふたり(ふたりは別々)。ひとりは、ビデオカメラを手に窓から風景を延々撮っている。どうするんだその動画。家に帰って、酒でも飲みながら大画面で延々観るのか。もうひとりもカメラは2台下げているが、今これに乗ってることを噛み締めているようだ。

 窓からの風と、扇風機の風のブレンドがちょうどよく涼しい。扇風機って、こんなによかったっけ? いや、空気がきれいなんだろう。このあと、同じ烏山線でクーラーの効いた車両、弱いクーラーと扇風機の車両にも乗ったのだが、この最初の車両が断然よかった。トンネルに入る時、車内アナウンスがあった。「この先トンネルに入りますと窓から強風が入りますのでご注意ください」。これは蒸気機関車か!
 途中の山の中に、三脚を立ててこの列車を撮ってる人を何人も見た。人気列車なんだ。

 30分弱の楽しい鉄道さんぽ。そして、終点ひとつ前の滝駅で下車。今回は最初と最後つたい歩き。こういうのもアリだな。
 滝駅から歩いて5分ぐらいのところに「龍門の滝」という駅名の由来になった滝があった。これが予想を超えて高さも幅も大きく、ビックリ。こんな場所に。降りて行くと、滝の飛沫が涼しい。こりゃマイナスイオンびんびんだな、と思う。しばらく無為に佇む。

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