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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化もされた『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。平成21年から足掛け2年をかけて東京から大阪までを散歩した近著『野武士、西へ 2年間の散歩』(集英社)が発売中。

土佐くろしお鉄道(ごめん・なはり線)

後免(高知県南国市)から奈半利(奈半利町)まで全20駅。42.7km。ほぼ高架線で土佐湾沿いを走る。 オープンデッキのあるしんたろう号、やたろう号はともに1日1往復。天気のいい日にぜひ乗ってほしい。

 

 物部(ものべ)川を渡り香南(こうなん)市に入る。高知黒潮ホテルの前に無料の足湯があり「巡礼の足湯」と書いてある。そこで高知に来て初めて「あ、お遍路か」と思った。すっかり忘れていた。お遍路さんもこの道を通るのか。そのあたりから、線路と少し離れてしまった。でもきっとまた会うはずだ。石材店の前で、二宮金次郎と小便小僧が並んでいたのがおかしかった。勤勉に小便。

 昼になり腹も減ってきたところに、一軒のレストランが現れた。店の前に樹脂で作られたステゴサウルスとトリケラトプスがいる。そして恐竜より大きなカサゴもいて、その下にはワニもいた。なんじゃこの店。入るしかない。各種定食ラーメンカレーそばうどんと、なんでもある。ゴキゲン。メニューに「中日そば」なる一品発見。店員に聞くと、和風だしのラーメンという。あ、中華と日本か。ドラゴンズそばかと思ったぜ。もちろんそれを注文する。

 出てきたのは、うどんの汁にラーメンの麺が入ったものだった。具が油揚げとナルト、そしてとろろ昆布。別皿のちりめんじゃこを入れながら食べてください、と言われる。しらすだ。高知では、しらすもちりめんじゃこも、ちりめんじゃこというそうだ。コショーと七味、どちらをかけるべきか迷い、結局コショーにする。これでぐっとラーメン寄りになった。にゅうめんの、もう少しひっかかりのあるものをすすっている感じもする。しらすが麺に絡んで面白い。軽くておいしい。ぺろりと完食。気に入った。


恐竜が招くお食事処。よく見たら下に台車。
こんな店、入るしかない

これが「中日そば」だ。しらすを入れながら食べる。
おやつ麺だ

 店を出て少し歩くと、石の杭があり「へんろ道27 神峯寺(こうのみねじ)まで34km」とあった。やはりここを歩くのか。オレは今お遍路している状態なのか。

 建物に大きく「絵金とどろめのまち赤岡」と書いてある。絵金。どろめ。どっちも知らない。
少し歩くと国道と並行して旧道があり、そちらに入る。個人商店が並び、イイ感じ。絵金は、江戸時代の絵師・金蔵のことだった。
どろめというのは、ここで獲れるマイワシやウルメなどの稚魚で「どろめ祭り」というのも行なうようだ。この祭りでは、男は1升、女は5合の日本酒の早飲みコンテストがあるらしい。さすが土佐。ボクにはとても無理。ぶっ倒れて救急車だ。

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