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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。土山しげる作画による『野武士のグルメ』マンガ版が幻冬舎より好評発売中。

鳴門線 なるとせん

池谷から鳴門(いずれも鳴門市)までの7駅。8.5km。全線鳴門市内を走る路線だが、高徳線へ直通運転しており、徳島方面へ行くのが容易。終着の鳴門駅からバス20分の鳴門観光港からは観潮船も出る。

 

 水の豊かな川を渡って少し行くと巨大なお寺のような屋根が見えた。近づくと「天理教撫養(むや)大教会」だった。そして、その門からまっすぐ出てきたところに教会前駅があった。小さな小さな無人駅だが、自転車がいっぱい停めてある。ほとんどは小中学生用かママチャリ。大人は車なのだろう。

 またしばらく歩く。街道っぽいな、と思っていたら木の壁に「旧撫養街道遍路道」と書いてある。こんなところもお遍路するのかぁ。文化遺産っぽい日本家屋が並ぶ。
 金比羅前(こんぴらまえ)駅を過ぎると、線路の南側に大きな川が現れた。線路の南側に移る。ガードレールから水面をのぞくと、何かがワシャワシャワシャッと一斉に動いた。ギョッとした。カメだった。アカミミガメ。甲羅干ししていたのが、ボクを見て水に逃げ込んだらしい。カメも冬眠明けからまだ日が浅いのか。でもものすごい数。何百匹という単位。

 だんだん家が増えてきた。でもいつの間にか北側の低い山も近づいてきている。「鳴門渦潮高等学校」があった。すごい校名だ。河原の遊歩道を歩く。桜がまだ咲いている。
 鳴門市街地に入ったあたりに「東浜温泉」というシブイ銭湯を発見。千載一遇、入ろうか、と思ったが、まず駅に行って、電車の時刻を見てからにしようと思った。何しろ本数が少ないから、乗り損ねたら帰りの飛行機に間に合わない。


銭湯発見。シブさにたまらなくそそられた

 しかしそこから駅は意外に遠く、鳴門駅に着いた時は午後1時半で「お腹も空いたし、昼を食べたら、銭湯まで戻れないな」と思い、非常に残念だった。今でも、あそこで入っていればよかったかなぁ、と悔しい思いが残る。

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