『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

久住 昌之 Kusumi Masayuki(文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。文庫版『ひとり飲み飯 肴かな』(日本文芸社)発売中。

左沢線 あてらざわせん

北山形(山形県山形市)から左沢(大江町)までの24.3㎞、11駅。6月上旬?7月中旬に旬を迎えるサクランボをはじめ、8月のモモ、9月のブドウ、10月のラ・フランスなど果樹栽培が盛んな地域。今回は左沢から寒河江(寒河江市)まで歩いた。


最上川にかかる旧最上橋。
逆さに映った橋も含め美しい風景に見とれた

 駅で地図を見て、西部街道という道路で行けばだいたい左沢線に沿うのだな、と歩き出してすぐ間違えて国道458を歩いていた(この時は気づかない)。雲はあるが天気は悪くない。時には陽も出た。10分ほど歩くと最上川にぶつかる。最上橋とある。橋の上から隣にもっと古い美しい橋が見えた。今これを書くために調べたら、旧最上橋だそうだ。この橋を映した最上川の風景はここ大江町のビューポイントということだ。道を間違えたおかげでいいものを見られた。美しい風景に出会ってしばし見とれ、あとからそこが名所だと知ると、「自分は見逃さなかった」「自分でそこに美を発見した」という自己満足感に浸れる。これはしかし悪い気分ではない。と同時に、上から教えられて見た風景より、ずっと忘れない。

 それからまたしばらく歩き、たくさん見えたビニールハウスは、どうやらほとんどがサクランボらしいとわかった。しかも、もう収穫期に入っているようだ。まだオレンジ色の実がいっぱいなっている木が見えた。いい時期に来た。もうすぐ「さくらんぼマラソン大会」が開催されるようだ。
 歩いていて、どうも全然左沢線が見えなすぎるので、しかたなくiPhoneのGPSで現在位置を知り、まったく違った方向に歩いていたことを知る。道を折れてもう一度最上川を渡り、さらにもう一度曲がって歩いていくと、県道23に入った。たぶんこれが西部街道だ、と思ったら小さな無人駅「柴橋駅」があった。鉄道は車道より6?7m高い位置にあった。

前のページへ 次のページへ
旅の手帖mini

散歩の達人MOOK

バックナンバー

このページのトップへ