『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

駅弁の女王小林しのぶが選ぶ 絶対に食べたい駅弁

旅情に人情味をプラスした感涙ものの一品 おふくろの味 上野弁当 上野駅

 2002年から販売されている上野駅限定の駅弁。同駅が2008年に開業125周年を迎えたのを機に内容をリニューアルした。

 ふだんから特色のある駅弁を見慣れているだけに、「シャケ弁ですか?」と突っ込みたくなるほどのシンプル過ぎる中身にとまどってしまう。けれどよく見るとおかずのバリエーションは多彩で、駅長が推薦する焼たらこ、高菜炒め、うずらの卵のほか、一口ヒレカツ(上野はトンカツの発祥地といわれる)、蓮根金平(不忍池の蓮池に掛けて)、ごま昆布佃煮(上野の漬物店「酒悦」製)など、上野にゆかりのある料理まで盛り込まれている。

 肝心の味覚は、白米の上で存在感を主張するサーモントラウトの塩焼がとにかくうまい。適度に脂ののった身は厚みがあり、塩辛さを抑えた上品な味わいを堪能できる。筑前煮やヒレカツの味付けもあっさりしており、見た目以上に健康志向なのもうれしい。母親の手作り弁当を思い起こさせる素朴な味わいに、旅情というより人情の温かさを感じた一品である。

Data
価格:1,000円
種類:幕の内
調製元:(株)日本レストランエンタプライズ
電話:0120-658-078

トレたびセレクト このきっぷ×駅弁でおでかけ「首都圏の梅まつり・桜まつり巡りにはコレで! ホリデーパス」

古代米を使ったヘルシー駅弁の火付け役 うわさの弁当 古代米入り 宇都宮駅

 女性たちがヒソヒソ話をしているような掛け紙のイラストはインパクト大。中身を知りたくなるこの弁当名は、「古代米を使った弁当があるらしいという、うわさが広まって売れてほしい」との願いから付けられたという。

 鮮やかな赤紫色のご飯は、コシヒカリ米に古代米(赤米、黒米)、緑豆、キビ、ソバなどを混ぜて炊き込んだ雑穀米。おかずも健康に気を配っており、山菜、タケノコ、コンニャク、そして野菜の煮物と揚げ物を入れずにまとめている。ベジタリアンでも食べられるように配慮されており、醤油やザラメ、ダシを使って焼肉風に仕上げたグルテンミートなども入っている。メイン食材は、赤飯のようにも見える雑穀米だ。一粒ずつ丁寧に噛み締めていくと、穀物の甘さがじわじわと口中に広がる。雑穀ならではの歯ごたえのよさも面白く、食べ終えるのが惜しくなるほど。

 健康食品がブームになりはじめた1999年に誕生した駅弁で、雑穀や古代米入り駅弁の火付け役となった。調製元の願いどおり、その存在は口コミで広がり、いまではだれもが知るヘルシー駅弁の代表格である。

Data
価格:700円
種類:幕の内
調製元:松廼家(まつのや)
電話:028-634-2426

トレたびセレクト このきっぷ×駅弁でおでかけ「去り行く冬と早春をおトクに楽しむなら ウィークエンドパス」

ユーモラスな庄助さんをイメージした二段重の駅弁 小原庄助べんとう 郡山駅

 民謡『会津磐梯山』に「朝寝・朝酒・朝湯が大好き」とうたわれた伝説の人物・小原庄助さん。実在していたとすれば、楽天的ニートといえそうなキャラクターである。

 「小原庄助べんとう」は、そんなユーモラスな庄助さんをイメージした二段重の駅弁だ。お重を収めた箱型容器は、徳利と一緒にぶら下げるのが似合いそうな手提げ形で、イラストには、満面笑顔の庄助さんが描かれている。

 内容を見ていこう。二段重の上段にはエビ天やサケの塩焼き、カマボコ、調製元自家製の牛糸こん煮や豆みそなどのおかず、下段にはシメジご飯と地元産あさか舞(コシヒカリ)の白飯の2種類が詰められている。あさか舞は郡山産のブランド米で、全国にもファンがいるうまい米だ。二段重にしたのがミソで、一つひとつのおかずは酒の肴にぴったり。福島の地酒はどれもおいしいので、どうしても酒のピッチが早くなる。庄助さんのようにほろ酔いになったら、食事もひと休み。ガタゴトという列車の揺れも心地よい。目が覚めたら、下段のご飯をいただこう。シメジご飯にのせられた菜の花の塩加減もほどよい仕上がりで、すっかり満足できる。

Data
価格:1,000円
種類:幕の内
調製元:(株)福豆屋
電話:024-943-0528

トレたびセレクト このきっぷ×駅弁でおでかけ「南東北をリーズナブルに遊ぶなら W(ダブル)きっぷ(2枚つづり)」

盛岡ならではの名産品を集めた幕の内弁当 盛岡味づくし 盛岡駅

 味に対する自信の表れだろうか。長方形の発泡材容器に巻かれているのは、弁当名を記しただけの極めてシンプルな掛け紙だ。

 内容は、細かく仕切られた容器の中に盛岡ならではの名産を盛り込んだ幕の内弁当。おかずの種類は豊富で、帆立、牛肉味噌焼き、鶏肉旨煮、煮鮭と卵焼き、ひじき煮、高野豆腐や椎茸、絹さやなどの煮物、五穀こんにゃく、山菜水煮など10種類以上を収める。

 帆立や牛肉、鶏肉などは東北の駅弁らしく濃い目に味付けられており、俵型に盛り付けたご飯をよどみなく進ませる。一方で煮物は薄味に仕上げるなど、全体を通じた味覚のバランスは見事。好き嫌いのない人なら、デザートの洋梨のコンポートまでしっかり味わい尽くせるだろう。

 ご飯を後にまわし、おかずをつまみに飲酒モードに浸るのもお勧めだ。多品種を詰め込んだ幕の内スタイルの弁当は、左党に大きな喜びもたらす。どれにしようかと思いをめぐらせて、迷い箸になりそうな瞬間もまた至福である。

Data
価格:1,050円
種類:幕の内
調製元:(株)ウェルネス伯養軒 盛岡支店
電話:019-658-1014

トレたびセレクト このきっぷ×駅弁でおでかけ「なんと7日間乗り降り自由 北海道&東日本パス(普通列車限定)」

※掲載されているデータは平成23年2月現在のものです。

小林しのぶ(旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家)

 駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから"駅弁の女王"と呼ばれる。全国各地の調製元と新作駅弁の共同開発を手がけるほか、新聞、雑誌、ウエブ等に連載多数。プロデュースした駅弁は「1000号はっこう弁当」「東京もちべん」(東京駅)ほか。

 フードアナリスト。日本旅のペンクラブ会員。千葉県佐原市出身。

 近著に『全国美味駅弁 決定版』(JTBパブリッシング)、『五つ星の駅弁』(東京書籍)、『どんぶりこ』(交通新聞社) 、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『すごい駅弁!』(メディアファクトリー)などがある。NEXCO東日本で展開している「どら弁当」の監修者でもある。

バックナンバー

このページのトップへ