2025.11.25ジパング俱楽部小樽駅スタート!天狗山で北の大地のダイナミックな絶景を独占|鉄道で行く低山ハイク

天気のいい日は、列車に乗って気軽な日帰りハイキングへ。ここでは駅からのアクセスがしやすくて、体力的な難易度の低い、低山トラベラー・大内征さん監修の低山歩きコースを紹介します。
小樽駅から気軽にアクセスできる天狗山は、ロープウェイを使えば体力に自信がなくても安心で、登山道を歩けば北の森の深い緑と、港町ならではの開放感が待っています。大内征さんが実際に歩いた様子を紹介します。
天狗山
素朴な低山ながらダイナミックな絶景が魅力!
北海道小樽市
「小樽市重要眺望地点」に指定されている天狗山の第2展望台より
港と運河の町、小樽。札幌から函館本線で約50分というアクセスのよさと、海にまつわる名所や土地の名産に恵まれた観光地だけあって、コンパクトながらも活気のある雰囲気が魅力。
視点を変えると“坂の町”という個性もあります。町をとり囲むいくつもの山々が海に迫り、複雑な海岸線を浮き出させていてかっこいい。これぞ自然の成せる地形美。
こうした山の上から見下ろす小樽の町は、海と港のある開放的な風景が壮観です。そうときたら、山好きとしては町だけで旅を終わらせるわけにはいきません。さあ、登りますよ!
本記事のアドバイザー・大内 征(おおうちせい)さん
コース概要
| 所要時間 | 約3時間40分 |
|---|---|
| 歩く距離 | 約16.6キロ |
| 標高 | 532メートル |
| 低山ハイクの注意点 | 熊対策(熊鈴、ホイッスル、スプレー)は必須。ひとりでは歩かないこと。山麓から山上までロープウェイを利用することも可能ですが、山頂駅の乗り場から山頂までは山道を歩く必要があります。 |
スタートは函館本線小樽駅
旅のはじまりは、函館本線小樽駅。さっそく歩くスイッチを入れたいところですが、ここは坂の町・小樽。天狗山の登山口までは、アスファルトの坂道を1時間ほど登り続けることになります。
そこで、ロータリーの右手にある北海道中央バス小樽ターミナルから、バスに乗るのはいかがでしょう。約15分で小樽天狗山ロープウェイの山麓駅に到着します。
歩くもよし、バスでもよし。数ある選択肢の中から自分で考えて判断するプロセスもまた「歩き旅」らしくて、気分が高まります。もちろんぼくは歩きました。山に入る前にちょっと疲れちゃいましたけどね。
① ロープウェイ駅からが本当のスタート!
ロープウェイを使わず歩いて登ります。登山口はとてもシンプル!
ロープウェイ山麓駅からすこし山側に入ると、さっそく傾斜のある山道になります。歩くこと10分弱で、なんともシンプルな登山口の標識が出現。ここは分岐になっているので、そのまま左に真っすぐ登ってもいいし、右から森に入ってもOK。ぼくは右から入り、北の大地らしい森の雰囲気を味わいながら歩きました。
振り返れば、小樽の町
北海道の森は、関東や関西のそれとは雰囲気が異なります。針葉樹と広葉樹がまじりあった北方特有の様相で、樹木の色味が濃く、気のせいか葉が大きく感じられます。
ここはスキー場でもあるため、営業していない夏山期間は滑走路にススキが群生しており、そういうところも風景としておもしろい。登っている途中でくるりと背後を振り返れば、ススキ越しに小樽の町と海が広がっているというフォトジェニックなロケーション。写真好きな人なら、しばし立ち止まってレンズを向ける時間ですね。
② 神仏の神徳に思いを馳(は)せる
登山口から山道に入ってすぐ現れる愛染明王。ちょっとカワイイ
天狗と名のつく山ですが、歩き始めは山の信仰の気配を感じることはありません。かと思いきや、森に入るといきなり愛染明王の出迎えを受けます。明王とは、おもに如来から化身した憤怒相の仏さまのこと。
愛染明王は、その名から想起できるように恋愛や縁結びの神徳があるとされています。愛染を「藍染」と読んで染物や織物の職人さんから信仰されていたり、戦国時代ファンとしては、越後の直江兼続の兜にあしらわれた「愛」の一字が軍神としての愛染明王信仰からきている説も無視はできません。
なにしろ煩悩を否定せずに受け入れて、そのまま昇華させてしまうというのだから、度量の大きい仏さまです。いやむしろ、なんでも受け入れる愛染明王こそが一番の煩悩の塊なのかも……などと失礼なことを想像してしまいました。ごめんなさい。
おっと、ここでこんなに文字数を稼ぐ予定ではなかったのでした。前に進みましょう。
③ 山上のロープウェイ乗り場で「低い絶景」を堪能
観光客を満載するロープウェイ
山上までせっせと登ってくると、涼しい顔をした観光客が、ぞくぞくとロープウェイで上がってきます。こちらは軽めとはいえ山をやる服装と装備ですから、ひと目で登山者だと識別可能。「え、ここまで登ってきたの!?」という尊敬の目で見られます。それがまた気持ちいいのなんのって!
港町と海を一望する天空のベンチ
ロープウェイ乗り場の隣には、ベンチとチェアが設置されている「天狗桜展望台」があります。数が少ないので、まさに“特等席”です。よく観察していると、絶景を目の前にした人たちの反応がそれぞれで、とてもおもしろい。海外の観光客はアタマを抱えているし、日本人観光客はスマホを構えています。お国柄が出ていて興味深いですね。
ここから見わたす小樽の町は、三方を山に囲まれながらも一面は海という特徴的な地形が手に取るようにわかります。コンパクトで風光明媚な自然景観が素晴らしい。同じ北海道なら函館、関東近郊なら鎌倉や熱海あたりと似ています。
ちなみに、ここからの眺めは「北海道三大夜景」に数えられています。とくに第2展望台は小樽市重要眺望地点に指定されている絶景中の絶景で、天空のテラスという表現がピッタリ。山好きとしては、わざわざ自分の足で登ってくる価値大です。
④ 小樽天狗山神社で、「導きの神」にご挨拶
森に囲まれた小樽天狗山神社
ロープウェイ乗り場の真正面に鎮座しているのは小樽天狗山神社。豊かな樹木に囲まれた、大変さわやかな神社です。祭神は猿田彦大神で、天狗のモデルとなったと伝わる異形の神さま。
猿田彦大神は、九州の高千穂峰に降臨した天孫・ニニギノミコト(瓊瓊杵尊)を出迎え、日本各地を道案内してまわったという「導きの神」です。そんな神話がベースとなって、猿田彦さんに正しい道へと導いてもらおうという信仰につながっていくわけですね。登山口近くにあった愛染明王の縁起と思い合わせると、この山には「ご縁」とか「導き」の神徳があるのかも? 信じる者は救われる、ですね。
⑤ 樹々のドームに囲まれた天狗山の山頂
標高532メートルの天狗山。展望のない山頂
そんなこんなで、いよいよ山頂へ。小樽天狗山神社の脇に目を向けると、森へと入っていく小径がついていることがわかります。ここから15分ほど登っていけば、標高532メートルの天狗山山頂に到達。とくに景色は見えないけれど、樹木に囲まれた森のドームのようで、とても静かな山頂です。新緑や紅葉の最盛期は、さぞかし気持ちがいいことでしょう。しばし観光客のにぎわいから離れて、自然の中でのぜいたくな静寂を楽しみます。
東側に開けた第3展望台より
後は安全に下山して旅を締めくくるばかり。登ってきた道のりを逆に戻る「ピストン」でもよし、山頂から裏側をぐるりと周りこむコースから下山するもよし。途中からロープウェイを利用するという手も、もちろんOK。自分の体力や下山後の計画にあわせて、これらの選択肢を有効に生かしましょう。
ぼくは山頂からロープウェイ乗り場まで周回するコースを歩いてみました。眺望のない代わりに木々の雰囲気がとてもよく、歩き足りない気分を満たしてくれる好ルートです。おまけに、その途中では「第3展望台 満天ステージ」を発見。ここからの眺めも絶景で、小樽の東側に展望が開けていました。
⑥ バスに乗って、小樽駅でゴール!
そんなわけで、素朴ながらも抜群の絶景が楽しめる天狗山をしっかり満喫。さらに歩いてロープウェイの山麓駅まで下山し、バスで駅へと向かいます。山から見下ろした小樽の町に戻ったら、一杯やって帰るのが楽しみです。
下山後のお楽しみ
小樽三角市場
朝早くから買い物客でにぎわう小樽駅前の名物市場
朝から独特の熱気を味わうことができる人気の市場。土地と屋根の形が三角形だったことが名称の由来だとか。中は全長200メートルほどの坂の路地になっており、海産物はもちろん、みやげ物や食堂などの店が左右に十数件ひしめき合っています。小樽駅から徒歩1分圏内という抜群の立地にあり、観光客にも地元の買い出し客にも人気です。ここで朝食をとってから天狗山に向かうプランもおすすめ。
小樽三角市場
| 問い合わせ先 | 0134-23-2446 |
|---|---|
| 時間 | 6~17時(お食事処は7時~) |
| 定休日 | なし |
| 交通アクセス | 函館本線小樽駅から徒歩約1分 |
| URL | http://otaru-sankaku.com/index.html |
松月堂(しょうげつどう)
名物の「生どら焼」と「マロンどら焼き」。どちらもおいしい!
小樽駅から徒歩約5分。駅前のビル群の中にひっそりとたたずむ、大正時代の面影が色濃い老舗(しにせ)の銘菓。お菓子は「日持ちしないのが自然」という哲学のもと、保存料などを使用しない体でつくられています。和菓子が中心かと思いきや、ロールケーキや焼き菓子といった洋菓子も充実。名物は「生どら焼」260円。個人的には「マロンどら焼」260円もハズしたくない美味。天狗山に持っていくなら、保温ボトルにホットコーヒーも忘れずに。
松月堂
| 問い合わせ先 | 0134-32-2220 |
|---|---|
| 時間 | 9時~18時30分 |
| 定休日 | 不定休 |
| 交通アクセス | 函館本線小樽駅から徒歩約5分 |
| URL | https://otaru-shogetsudo.com/ |
紹介スポット一覧マップ
文・写真/大内 征
- ※記事中の「歩く距離」はスタート駅からゴール駅までの徒歩での移動距離を記載しています。「所要時間」は食事や休憩や見学の時間を含まない時間を記載しています。
- ※本記事の地図はコース概要を示したもので、実際の登山道の詳細をすべて網羅したものではありません。安全のため、登山の際は必ずGPS対応の登山アプリや登山地図を携行し、現地の案内表示を確認しながら行動してください。
- ※記事中の情報は2025年11月時点のものです。
- ※列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
- ※花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
- ※店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
- ※同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。

