トレたび JRグループ協力

2024.08.27ジパング俱楽部竹久夢二生誕140年!都内唯一の常設美術館で企画展開催|現地発!おすすめ旅ネタ情報

現地発・おすすめ旅ネタ情報

このコーナーでは、旅好きライター・観光ナビゲーターが、ご当地ならではのおすすめスポットや旅ネタ情報をお届けします。

今回紹介するのは、2024年で生誕140年を迎える竹久夢二ゆかりの美術館「竹久夢二美術館」。都内で唯一、夢二作品を常設している美術館です。

美人画だけじゃない、夢二の多彩な魅力を再発見!

大正ロマンの画家・詩人として絶大な人気を誇る竹久夢二(たけひさゆめじ)。

その恋多き人生や「夢二式美人」と呼ばれるしなやかな女性像で知られていますが、実はいろいろな作風やメディアを横断して活躍し、今でいう「マルチクリエーター」的な存在でもありました。

2024年は夢二の生誕140年にあたる記念の年。夢二の新たな魅力にとっぷりつかってみませんか?


竹久夢二 プロフィール

1884(明治17)年、岡山県本庄村(現・瀬戸内市)に生まれる。画家・詩人。

正規の美術教育を受けることなく独学で自身の画風を確立。「夢二式美人画」と称される叙情的な美人画によって人気を博す。

雑誌や本の装丁、詩・童話などの分野でも多くの作品を手がけ、またデザインの分野でも活躍した。1934(昭和9)年没、享年49。

都会の狭間に立つ美術館で夢二沼にひたる「竹久夢二美術館」


緑に包まれた美術館では年4回3カ月ごとに企画展を開催 緑に包まれた美術館では年4回3カ月ごとに企画展を開催

今回の展示はほとんど撮影OK。フォトスポットもあり 今回の展示はほとんど撮影OK。フォトスポットもあり

東京・本郷の東大弥生門前に立つ「竹久夢二美術館」。上野からほど近い地でありながら、都会の喧噪から離れ昔の風情を留めるこの界隈は、夢二が最愛の女性・笠井彦乃(かさいひこの)と逢瀬を重ねた場所だと伝わっています。

私がこの美術館を前回訪れたのは8年前の2016年頃ですが、今もその記憶と変わらず静かにゆっくりと鑑賞できる雰囲気で、ひとりで来館する方も多いというのも頷けます。定期的に展示が入れ替わるため、何度来ても楽しめそうです。

東京で唯一、夢二の作品を常時鑑賞できるこの美術館では、「生誕140年記念 竹久夢二の軌跡」を開催中(2024年9月22日まで)。約3300点もの所蔵作品から、夢二の生涯をたどる約280点が展示されています。


笠井彦乃をモデルに描かれた『夏姿』1915(大正4)年頃 笠井彦乃をモデルに描かれた『夏姿』1915(大正4)年頃

『(仮)薔薇と少女』昭和初期 『(仮)薔薇と少女』昭和初期

特に注目したいのが、新収蔵品となった4点です。
企画展の冒頭を飾る『(仮)薔薇と少女』は、とても愛らしくモダンな印象。ベリーショートの髪型は当時若い女性に流行っていたそうで、今見てもカッコイイ!と目を引く新しさです。

夢二はその印象とは裏腹に、こどもに関する作品が全著作の約3分の1もあるそう。また、『ウツクシイ コトリノウタ』はこども向けの雑誌『日本幼年』に掲載されたもので、詩も夢二が書いています。

こどもの感性を育てるために質の高い作品をつくる必要性を唱えていた夢二。息子との生活からインスピレーションを得て、次男を対象に創作した作品も著作本に収録されました。こどもを愛おしむお父さんとしての顔もあったのですね。


『ウツクシイ コトリノウタ』1923(大正12)年 『ウツクシイ コトリノウタ』1923(大正12)年


『黒猫を抱く女』1920(大正9)年 『黒猫を抱く女』1920(大正9)年

『(仮)まてどくらせど』掲載誌・制作時期不詳 『(仮)まてどくらせど』掲載誌・制作時期不詳

企画展のメインイメージともなっている『黒猫を抱く女』。着物と猫の輪郭に注目してください。
このギザギザは、夢二がイギリスの画家・ビアズリーの作品にギザギザ線を見つけ、それを取り入れたものです。しかし、夢二はまた、江戸期の浮世絵にこの技巧があることから、浮世絵に影響を受けたビアズリーがその技巧を取り入れたのではないかと推察しています。日本の絵画技術が逆輸入のような形で夢二の作品に生かされているのがおもしろいですよね。

新所蔵となった作品の最後 の1点は、企画展出口近くにある『(仮)まてどくらせど』。この作品の由来については調査中だそうで、これからの解明が楽しみです。

生活デザインにも注目


『千代紙 きのこ』1914~1915(大正3~4)年 『千代紙 きのこ』1914~1915(大正3~4)年

『手縫半襟の図案』1915(大正4)年 『手縫半襟の図案』1915(大正4)年

私が激推ししたいのが、デザイナーとしての夢二の作品。
夢二は1914(大正3)年、東京日本橋に「港屋絵草紙店」を開店し、絵はがきや千代紙、半襟、浴衣など自身のデザインした品々を扱っていました。

デザインは外国の輸入雑誌などからアール・ヌーボーの作風を研究し、自分の中で昇華して次々と新作を考案。当時、若い女性の間で爆発的な人気となり、絵封筒のコレクションや交換がされていたそう。店の2階には夢二のアトリエがあり、運がよければ本人にも会えるかも!?と女性客が詰めかけたそうです。今の推し活をする乙女心と同じですよね!

ちなみに最近の若い人たちが夢二を好きになるきっかけは、このような デザインから入ることが多いそうです。


夢二デザインの原画と商品化された絵封筒 夢二デザインの原画と商品化された絵封筒

ミュージアムショップやカフェも充実!


夢二ブックカバー各1300円 夢二ブックカバー各1300円

(上)夢二の花のシール各400円、(右下)絵はがき120円、(左下)夢二めがねクロス400円 (上)夢二の花のシール各400円、(右下)絵はがき120円、(左下)夢二めがねクロス400円

ミュージアムショップには夢二デザインのグッズもたくさん取り揃えていて、今回の企画展の新商品もあるので、ぜひ帰りに立ち寄ってみてください。ちなみに私は、グッズ購入で5000円以上散財しました(笑)。

お買いものを終えたあとは、併設の「夢二カフェ 港や」へ。
定番の「野菜の甘みぎっしりカレー」800円やオリジナルの「夢二ブレンド」400円も魅力的ですが、ここは企画展に合わせて毎回考案されるコラボメニューをぜひ。


「夢によする」(麦茶1杯付き700円、コーヒーまたは紅茶付き1000円) 「夢によする」(麦茶1杯付き700円、コーヒーまたは紅茶付き1000円)

「夢によする 」(展覧会期間限定)は、小豆と米麹を使った発酵あんにこしあんを加えた水ようかん、バニラアイスにきなこ、白玉を使ったデザート。水ようかんがハート型で、恋多き夢二のイメージにぴったりです。全体的にやさしい甘さなので、途中添えられた黒みつで味変すると二度楽しめます。

竹久夢二美術館はこぢんまりしているけれど、高畠華宵(たかばたけかしょう)の作品を展示する弥生美術館も併設され、一粒で二度おいしい美術館です。ショップやカフェにも立ち寄って、大正時代の乙女(もちろん紳士も)の気分を堪能してください。

この美術館のほかにも、生誕140年にあたる2024年から2025年にかけては全国で夢二に関する特別な企画展が目白押しです。旅や温泉が好きだったという夢二にあやかって、旅行がてらぜひゆかりの地をめぐってみてください。



竹久夢二美術館

問い合わせ先 03-5689-0462
時間 10~17時(最終入館は~16時30分)
定休日 月曜(祝日の場合は翌平日)※展示入れ替えのため、2024年9月23~27日は休館
交通アクセス 東京駅から丸ノ内線約8分の後楽園駅下車、徒歩約2分の後楽園駅から南北線約2分の東大前駅下車、徒歩約9分/東京駅から徒歩約7分の二重橋駅から東京メトロ千代田線約19分の根津駅下車、徒歩約7分。または山手線上野駅から徒歩約20分
値段 1000円(竹久夢二美術館・弥生美術館共通入館料)
URL https://www.yayoi-yumeji-museum.jp

「竹久夢二生誕140年」そのほかの企画展

生誕140年記念 ―乙女たちの夢-竹久夢二展

  • 郵政博物館(東京都墨田区) ~2024年9月23日

生誕140年YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界

  • 夢二郷土美術館 本館(岡山県岡山市) 2024年9月7日~12月8日
  • 夢二生家記念館・少年山荘(岡山県瀬戸内市) 夢二郷土美術館 本館に同じ
  • あべのハルカス美術館(大阪府大阪市) 2025年1月18日~3月16日
  • その後、2025年夏まで巡回予定

竹久夢二生誕140周年記念企画展Ⅰ 「いとしきひと」

  • 竹久夢二伊香保記念館(群馬県渋川市) ~2024年9月23日

黒船屋特別公開

  • 竹久夢二伊香保記念館(群馬県渋川市) 2024年9月10~23日(9月16日以外は要予約)

竹久夢二生誕140周年記念企画展Ⅱ 「港屋の美しいもの可愛いゝもの」

  • 竹久夢二伊香保記念館(群馬県渋川市) 2024年10月1日~2025年3月31日

竹久夢二生誕140年×読売新聞創刊150周年「竹久夢二と読売新聞 ~記者・夢二の仕事とそれから~」

  • 竹久夢二美術館(東京) 2024年9月28日~2025年1月26日

竹久夢二生誕140年・没後90年記念特別展 夢二式モデルルームへようこそ!-夢二好みの室内空間―

  • 金沢湯涌夢二館(石川県金沢市) 2024年8月31日~10月21日

この記事を書いた人

綿谷朗子(わたやあきこ)

美術館と食べものを愛するフリーライター。
縁あって4年間暮らしたフランスでも、ほぼ食べものと美術館に時間を費やす。
旅のスケジュールを立てるのが大好きで、ついつい予定を盛り込み過ぎるが、列車に乗って車窓を眺めるのが息抜きの時間。東京都在住。

  • 記事中の情報は2024年8月時点のものです。
  • 写真はすべてイメージです。
  • 列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
  • 花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
  • 店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
  • 同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。
  • 新型コロナウイルス感染症等の影響により、掲載している内容が変更となる可能性があります。お出かけの際は事前にご確認ください。