1 SL時代
日本の鉄道黎明期、蒸気機関車が主流だった明治時代初期。蒸気機関車に牽引されていた客車の暖房は、最初は湯たんぽや、石炭によるダルマストーブが一般的でした。しかし、温度設定の手間や火災の危険が大きいことから、明治時代後期には、牽引する機関車から供給される蒸気で客室を温める蒸気暖房が主流になっていきました。
もともと蒸気暖房は、列車が走るために作られた蒸気の一部を、蒸気機関車から客車へと送るもの。蒸気を発生させるのは、蒸気発生装置です。燃料には重油や軽油が用いられ、これが当時の列車暖房の主力となりました。
2 電気機関車時代
国鉄時代の暖房車
昭和元年に東海道本線・横須賀線間が電化されると、蒸気機関車ではなく電気機関車が客車を牽引するタイプが登場しました。当時の客車は蒸気暖房に対応している車両が多く、電気機関車に蒸気発生装置を搭載し、客車に蒸気を送るようになりました。また、蒸気機関車から電気機関車への置き換えが進むと、電気機関車の後ろに暖房専用の蒸気機関車を連結したり、石炭のボイラーを搭載した暖房車を連結するなどして客車に暖房を送るようになりましたが、列車編成が長くなる、列車重量が重くなるなど非効率であったため、次第に電気機関車に暖房用電源を搭載する電気暖房へと替わっていきました。それらの列車では、機関車からそれぞれの客車へ、直流1,500V電源を供給し暖房を行なっていました。
戦後の客車では、編成の一端に電源車を連結し電源車が編成内の冷暖房や照明など一切の電力を供給する集中電源方式と、編成内の車両に一定の割合で床下ディーゼル発電機を設置する分散電源方式が採用されました。供給する電源は、それぞれ交流600Vと交流440V。後者は、1950年代後半から置き換えが進展した電車における電気暖房と同じ大きさの電力です。
3 電車時代
1950年代後半には、機関車から電車への置き換えが進展し、機関車や電源車が採り入れた電力を客車に供給する方式ではなく、各客車がそれぞれに集電した電力で暖房を行なうことが可能となりました。