2010.02.01鉄道テツペディア Vol.22 「列車の連結と貫通式・非貫通式」
ちょっと気になる鉄道雑学
鉄道にまつわる「知ってトクする豆知識」を紹介するコーナーです。
皆さんは、列車の車両と車両との間を通り抜けたこと、ありますよね?
車両の連結部分には扉が付いていたりいなかったり、またはアコーディオンの蛇腹のようなホロで覆われていたり。時には通り抜け禁止のことも。
今回は、そんな車両と車両の“間”のお話です。
列車の連結
1 「連結」とは? どうやって行なうの?
列車は普通、複数の車両をつないだ編成で成り立っています(ローカル線などでは1両編成で運転している場合もあります)。列車の車両と車両とを繋ぐことを「連結」といい、切り離すことを「解放」といいます。
列車の連結・解放は、時間をかけず容易に、かつ確実に行なえなければなりません。
とてつもない重さの車両を扱い、かつ沢山の乗客を乗せているため、連結時に事故があったり、その後の走行中にトラブルが発生したりすると大変です。
とくに客車列車などでは、先頭の機関車が後ろの車両を牽引しているため、万一登り坂で連結が外れると車両は自重で後退し事故を引き起こしてしまうことにもなりかねません。
また、線路が曲線になっていたり、列車がポイントを通過したりする時には、車両にも連結部分にも様々な圧力が働くので、動揺や衝撃を緩和する機能が必要になってきます。
現在、列車の連結は、「密着式連結器」と呼ばれる機械によって行なわれています。日本では、昔に採用されていた「ネジ式連結器」などから1925(大正14)年、全国で「自動連結器」へと一斉交換され、その後1930(昭和5)年代には「密着式連結器」への置き換えが進み連結器の標準となりました。
2 「自動連結器」「密着式連結器」って…?
「自動連結器」は、19世紀後半アメリカで、人の手と手を組み合わせた形をモデルに考案されました。連結する車両それぞれの、突起した連結器同士を両方向から接触させると自動的に連結し、錠がかかる仕組みです。また解放するときも、解放てこを動かすと容易に解放できるものでした。
さらに進んだ「密着式連結器」は、20世紀初頭ドイツで開発された「シャルフェンベルク式連結器」を元に様々に改良されてきました。自動連結器と同様に、両車両の連結器同士を接触するだけで連結でき、解放レバーを動かすと解放できます。
車両前面に付いた箱型の連結器内部に、お互いの「回り子」が差し込まれ回り込むようにロックされるため隙間がなく、密着しているので車両同士がぶつかる衝撃も防げます。またこの密着部分と車体の間にはゴムの緩衝装置が取り付けられているため、さらに車体間の動揺が緩和されているのです。
貫通式・非貫通式
1 通り抜けのできる車両=貫通式 できない車両=非貫通式
わたしたちが車両間の通り抜けをする時は、上記のような連結部分を通っているわけです。その場合、連結部分全体はホロで覆われていることが多いですよね。
そのように車両同士を接合し乗客の安全性を確保した上で、それぞれの車両の先頭あるいは最後尾部分にあるドアをオープンし通路を作っているのです。
一方、車両には通り抜けのできないものも存在します。同じ編成中の車両でも、「踊り子」や「ひたち」などの特急列車では、普通車からグリーン車への通り抜けなどが出来ません。
列車では、通り抜けるためのドアがある車両を「貫通式」、ドアがない車両を「非貫通式」と呼びます。
貫通式では、列車を正面からみて、断面を縦に3分割した位の中央部がドアになっていて、ドアに近い乗務員室は通路を挟んで左右に設けられていることが多いです。
貫通式の車両は、ドア部分をオープンしなければ、編成の先頭にも最後尾にもなることが可能です。ただ、機関車に牽引される客車の場合は(機関車が後ろから客車を押す推進運転の場合を除いて)、先頭になることはありません。
逆に、非貫通式の車両は、先頭または最後尾にくることが多いようです。また、展望車や展望室が付属している編成の場合、人が通り抜けるための通路を設けると前面の視界が妨げられることから、非貫通式の車両が採用される傾向にあるようです。
たとえば寝台特急「カシオペア」などでは、機関車の後ろに非貫通式のスイート(展望車)が連結されることがあります。
2 乗務員室には立ち入れません
貫通式の電車・気動車では、ドアがオープンして通路ができても、運転手や車掌の乗務する乗務員室には立ち入れない構造になっています。
車掌は乗務員室で乗務することが多く、だいたい1編成に1人乗車の割合ですが、非貫通式のグリーン車などが接続されている編成の場合は、グリーン車などの特別の車両に1人、それ以外の通り抜け可能の車両にもう1人が乗務している場合があります。
貫通式・非貫通式いずれにしても、乗務員室に乗客が立ち入れないような構造になっていることが分かります。
いつも何気なく通り抜けている列車の連結部分、今度からは注意して見てみてください。
駅で連結作業に出会えることもありますよ。
- ※掲載されているデータは2010年2月現在のものです。
- ※写真協力:SHIKOKU