2009.11.01鉄道テツペディア Vol.19 「網棚」
ちょっと気になる鉄道雑学
鉄道にまつわる「知ってトクする豆知識」を紹介するコーナーです。
今回は、普段何気なくお世話になっている「列車の網棚」を検証します!
列車の網棚、皆さんはよく利用しますか? 網棚は、吊り革やポールと同様、列車の車内には欠かせない設備。
一口に網棚といっても、その形状や素材はバラエティー豊かです。
網棚ってどんな素材でできてるの?
網棚は、列車の車内で、乗客が荷物を置くために座席と天井の間の壁に取り付けられている荷物棚です。
古くは棚の枠が木製、ネット部分は糸を編んだひも(網)でできていたため、「網棚」と呼ばれるようになりました。現在でも、木製の棚枠が残っている車両はありますが、網はナイロン製の強化されたものが多いようです。
現在の網棚の主流は、皆さんもお馴染みの金属製。網棚の枠も車内の手すりなどと同じ太い金属のポール、網もアルミやステンレスなど金属を編んだ金網が多いです。
斜め網式
立て網式
網のほかには、パイプ型も見られます。パイプ型の場合、パイプとパイプの間が開くため細い形状の荷物や薄い物・小さい物は置きにくいこともありますが、重い荷物でも安心して置ける、がっしりした丈夫な構造をしています。
網やパイプのほかに、最近ではプラスチック製やステンレス製の板状の棚も増えてきています。板状のものは、網やパイプの隙間から荷物が落下する心配もありません。新幹線などでは、板部分が半透明になっていることが多いので、座っていても自分の荷物を確認でき、降りる際にも置き忘れにくいよう工夫されています。
パイプ式
棚式
また、ドット状に穴が開き網目の形状を残すプラスチック製の網棚は、特急列車などでよく見られます。こちらも下からでも荷物が分かるため、機能的で丈夫な網棚といえるでしょう。
網棚の背景
網棚は、目線の位置よりやや上の高さに位置し、後ろの壁が広告スペースになっているせいもあり、私たちの視線が自然と行きやすい場所といえます。
網棚の後ろ(背景)には、カーブする内壁に沿って車内広告がずらりと並べて張られています。窓側を向いて立っていたり、荷物を上げ下げしたりするとき、電車に乗っている間は何度も目にするものなので、私たちは無意識にもそうした広告をかなり記憶しているのではないでしょうか。中吊り広告と同様、とても広告効果が高いといえるのが、網棚の背景部分の壁なのです。
これからは電車に乗ったら、網棚の背景にどんな広告が張られているか、じっくり観察してみても面白いかもしれませんね。『トレたび』の広告もあるかもしれませんよ。
スグレモノの網棚
網棚には、単に荷物を置けて身軽になれるというだけではない、合理的な利便性がたくさんあります。
乗車距離が短かったり、車内が混雑していて荷物の上げ下ろしの動作がしづらいときなど、手に荷物を持っていても網棚を使用しないことがありますよね。ですが、車内のスペースは下のほうが人間の体で埋まり密度が濃いため、上部は密度が薄くなっているといえます。そこに荷物を置けば、効率的で混雑の緩和にもつながります。
車内がすいているときはともかく、混雑しているときはそのスペースを少しでも活用したいもの。荷物を床や椅子には置かず、上手に網棚を活用しましょう。
網棚には、ほかにも用途があります。それは、丈夫な構造だからこそ可能な、人間の体を支える役目です。もちろん車内には吊り革や手すりなど、立っている乗客がつかまるための設備はありますが、網棚の縁の枠部分は高さといい太さといい、つかまるのに非常に都合の良い構造物です。
前回の「テツペディア」でご紹介した「吊り革」の丸い輪に手首を通し、網棚の枠をつかんだ経験のある人は多いはず。網棚は、車内で立っている乗客をさまざまにサポートしてくれる縁の下の力持ちなんですね。
- ※掲載されているデータは2009年11月現在のものです。