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2009.10.01鉄道テツペディア Vol.18 吊り革

ちょっと気になる鉄道雑学

鉄道にまつわる「知ってトクする豆知識」を紹介するコーナーです。

普段、列車に乗ったとき何気なくつかんでいる吊り革。当たり前のように使っていますが、
もしも吊り革が無かったら、立っているときや混雑時、体のバランスがとれなくてきっととても不安定ですよね。

今回は、様々な素材や形状に富む「吊り革」について検証します!

吊り革の素材って・・・?

吊り革は、人がつかまるための輪(持ち手)と、その輪を天井近くの横棒から吊り下げている帯状の部分でできています。現在、輪の部分も帯状の部分も、革素材ではないように見えるのに、何故「吊り革」というのでしょうか。

実は、輪を吊る帯状の部分は、現在は塩化ビニール製(塩化ビニールによってコーティングされた素材)が主流となっていますが、昔は革でできていたのです。19世紀末のアメリカでは畜産が盛んで、列車内の吊り革に牛革を採用していました。日本でも、地下鉄、国鉄、都電の順で採用されていったそうです。

戦後の日本では、物資難のために革が盗難に遭ったり、食糧の買出し客が電車に殺到し吊り革があまりの重みでちぎれたりすることがありました。また、火災時に燃えやすいという欠点もありました。そのため、革の代わりに麻の帯や竹筒、木の棒が使われるようになり、のちの1956(昭和31)年には、現在のように丈夫で不燃素材の塩化ビニール製が登場したのです。

現在、輪(持ち手)の部分は、ほとんどがプラスチック素材で、光沢感のある塗装がなされています。形状も丸形や三角形(正三角形、二等辺三角形など)、色も白や黒、グレーなど、多くのバリエーションがあります。ディズニーリゾートラインのミッキーマウスの形をした吊り革は、ユニークなタイプとして有名ですよね。


丸型

正三角形


二等辺三角形

ミッキー型

吊り革は長さや形も様々!

吊り革は、乗客の安全や利便性を図りながら、様々に改良されてきました。

例えば、目線の高さくらいの吊り革は、座席付近ではちょうど良い高さですが、混雑するドア付近では持ち手が人の頭にぶつかったり、吊り革を握って立っている人が乗り降りする乗客を妨げてしまうこともあります。
そのため、多くの車両ではドア付近の吊り革は座席付近よりも高めの位置に設定されています。

また、輪の部分は、以前は丸いものが多かったのですが、最近では三角形が増えてきています。丸い形の持ち手は、進行方向と平行に掛けられていることが多いのですが、三角形のタイプは大体進行方向と垂直(枕木と同じ方向)に吊られています。

丸いタイプは、手首を通して少しくつろげたり、握る部分を前の人とずらしたりできる一方、三角形のタイプは窓を向いて立つ場合に腕を上げた角度に合っていて安定しやすいなど、それぞれに良い点があるといえます。

清潔志向・混雑時対策としての「マイ吊り革」

混雑した車内で、吊り革が全部埋まっていて困った経験はありませんか? また、他の人が使った吊り革が気になるという方もいるようです。そんな中、数年前から注目されているのが、携帯用の「マイ吊り革」です。

ボストン生まれの「Transtrap」や、ニューヨーク生まれの「Metrogrip」など海外製品も話題。「Transtrap」にはメトロカードホルダーも付いていて、便利そうです。

日本でも、珍しいグッズとして市販されていたり、趣味的に自分で作ってみたりする人もいるようです。

可能性が広がる!吊り革の広告

吊り革の用途は、さらに広がっていると言えます。例えば、吊り革の革部分にプラスチックを巻きつけて覆い、そこを広告スペースとして活用する「アドストラップ」。先述の「マイ吊り革」も、会社単位で製作・使用すれば、宣伝効果になりそうですね。


吊り革広告

最近では、優先席(シルバーシート)エリアの吊り革の色をオレンジ、黄緑などの目立つ色にして、分かりやすくする表示の機能も担っています。

普段何気なく握っている吊り革。より親しみを感じていただけたでしょうか。

  • 掲載されているデータは2009年10月現在のものです。
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