2021.12.15鉄道鉄道技術展2021をレポート! 注目の最新技術とは!?
未来の鉄道技術を体感!
鉄道関係の最新技術を紹介する総合見本市「第7回鉄道技術展2021 MasskeisenTrans Innovation Japan2021」が11月24日から11月26日まで、千葉市の幕張メッセで開催されました。
出展者は鉄道・交通システム、インフラ技術、施設、電力、輸送、運行管理、車両、インテリア、旅客サービス関連などにかかわる企業・団体の約360者。
それぞれが、安全、安心、快適、環境、省エネルギーをテーマとした鉄道全般の技術、製品、サービスなどその成果を披露しました。
例えば、顔認証による改札機といった私たちの生活に直結しそうな技術から、保守作業の効率化に関する技術など鉄道運行そのものを支える技術まで、“未来”を感じさせる展示が盛りだくさん。その様子をレポートします。
最新の鉄道技術が一堂に
約360の企業・団体が出展して行われた「第7回鉄道技術展2021 Mass─Trans Innovation Japan2021」
鉄道技術展は、2年に一度の隔年開催です。海外ではドイツ・ベルリンで行われる世界最大規模の国際鉄道技術見本市「InnoTrans(イノトランス)」が有名。このイノトランスは世界各国から鉄道の実物車両を展示するなど、迫力ある見本市として知られています。日本の鉄道技術展では、スペースなどの関係もあり車両そのものの展示はありませんが、保守用車などのメンテナンスに欠かせない車両の一部は会場内に展示されていました。
また、期間中は「第4回橋梁・トンネル技術展」と、「STECH2021」(鉄道国際シンポジウム)との合同開催です。
さあ、トレたび編集室注目の出展者をピックアップしてご紹介していきましょう。
鉄道総合技術研究所(鉄道総研) 車両に近づく人を自動で検知 長大編成のワンマン運転も視野に
「車両側面カメラによる旅客接近検知法」はじめさまざまな研究成果を披露した鉄道総研
検温と消毒を済ませて会場に入ると、各企業、団体のブースがずらり。
さすが国内最大規模の技術展。規模が縮小しているとはいえ、あらかじめ見たいブースを決めておかないと、3日あっても回り切れなさそうです。
まずは、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)のブースを目指します。鉄道総研は、鉄道技術の研究・開発を行っている公益財団法人で、車両や鉄道の構造物などに関する多くの成果が生みだされています。
総研ブースで目に止まったのが「車両側面カメラによる旅客接近検知法」と呼ばれる技術。列車発車時等のホーム上の安全確認については、これまで乗務員の目視によって行われてきました。今後、長大編成列車のワンマン化などを見据えて、乗務員によるホーム上の安全確認を支援、さらには自動化することが求められています。
そこで、新たな技術では、一部ワンマン運転区間で運用されている車両側面設置のカメラの映像を解析することで、旅客の車両への接近状態を自動的に検知し、列車発車時のホームの安全確認を支援します。
その精度は、人の接近位置の検知誤差が最大でも20センチ程度。ホーム上に設置されている黄色の点字ブロックを越えて車両に近づいた人物を見逃さないレベル、とのこと。
検知対象を車いす、ベビーカーなどに拡張することも予定していると言い、ワンマン化のさらなる支援が期待されています。
コイト電工 グリーン車越え!? 鉄道車両の「ファーストクラス」を堪能
「サフィール踊り子」のプレミアムグリーン車はじめ、座席の座り心地を体感できたコイト電工のブース
続いて、コイト電工のブースへ。
同社では、鉄道車両向けのLED室内灯や前照灯、車内情報表示機器、座席などを製造しています。
実際に納入されたJR東日本の「サフィール踊り子」のプレミアムグリーン車座席、東海道・山陽新幹線のN700S(JR東海、JR西日本)のグリーン車座席、近畿日本鉄道の特急「ひのとり」の「プレミアムシート」が展示されており、実際に座ることができました。いつかはこのような座席に座って旅に出たいものです。
日本信号 人型ロボットと工事用車両の融合! “人機一体”で作業効率化
日本信号のブースでは、多機能ハンドリング車の実演が行われました
何やらロボットの前に人だかりができています。ここは日本信号のブース。
日本信号といえば、信号機や自動改札機の製造を手掛けていることで有名な会社ですが、この機械は、多機能ハンドリング車と呼ばれるものだそう。
人型重機ロボットと鉄道工事用車両(レール上を走行可能な軌陸車)を組み合わせた重機です。
将来の工事作業員の労働力不足や作業効率化などを踏まえ、人が安全な場所(地上)からロボットを操作することで、鉄道工事における高所作業や重量物運搬などが安全かつ効率的に行えることが期待されています。
JR西日本や二足歩行人型重機を開発するベンチャー企業・人機一体などと共同で開発を進めており、本年度中に試作機を完成させ、来年度から実証実験を行う計画です。
従来は人の手によるところが大きかった鉄道の現場にロボット、時代は大きく変わってきています。
鉄道情報システム 窓口でのきっぷ購入はもう古い! 新型券売機がすべてをフォロー
アシストマルスでは、割引証(写真はジパング俱楽部の会員手帳)をオペレーターがカメラで確認することで、割引きっぷ類の購入が可能に
私たちの鉄道利用において、直接かかわりのある展示もありました。
「みどりの窓口」で特急券や長距離の乗車券などの発券の際に使われているMARS(マルス)を手掛ける鉄道情報システムでは、アシストマルス「話せる券売機」やタッチレス指定席券売機を紹介していました。
「話せる券売機」は、券売機の端末とコールセンターを接続し、遠隔による窓口サービスを実現したものです。窓口と同様にオペレーターと会話しながらきっぷ購入が可能となるほか、オペレーターが備え付けのカメラで学生証や割引証などを確認できるため、窓口でないと発券できなかった割引きっぷの購入も可能となります。
タッチレス指定席券売機は、コロナ禍で非対面販売とともに、非接触のニーズが高まっていることを踏まえたもので、きっぷ購入者が非接触で端末を操作でき、利用者の安全安心ニーズに対応します。
さらに、アシストマルスを進化させた人工知能(AI)自動対応による新たなチケッティングサービスの展示もありました。
利用者の利便性向上はもちろん、鉄道事業者の駅業務の運営効率化といった面から券売機の進化にも目が離せません。
首都高速道路 走行しながら異常箇所を見極める「インフラドクター」
合同開催の橋梁・トンネル展の会場ものぞいてみると、出展企業の首都高速道路では、「インフラドクター」を紹介。
インフラドクターは、首都高グループが開発した道路構造物の維持管理システム。
レーザースキャナーや高解像度カメラを搭載した計測車両「MMS(モービルマッピングシステム)」を使用して、走行しながら周囲の3次元点群データやカメラ画像データを収集。GIS(地理情報システム)との連携で、トンネルなどの異常箇所の検出や図面作成、データ管理などを行うことができます。
この「インフラドクター」は鉄道の場でも活躍しています。
首都高速道路、東急電鉄などが共同開発したもので「鉄道版インフラドクター」として、東急や伊豆急行沿線のトンネルなど鉄道施設の保守点検・管理作業に当たっています。担当者によれば、トンネルや橋梁は道路も鉄道も構造物としては共通している部分が多く、元々インフラドクターを開発する段階で鉄道での使用を見据えていたようです。
2022年、大阪で開催予定
ここで紹介した技術はほんの一部にすぎません。
2年に一度の開催ですが、来年は大阪に場所を移して「鉄道技術展・大阪」(5月25~27日)の初開催が予定されています。未来の鉄道技術に触れられる貴重な機会。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
- ※取材日:2021年11月25日
- ※トレたび編集室/編