京都鉄道博物館を存分に楽しむポイントを伝授!
グランドオープンから5周年を迎えた京都鉄道博物館。
広大な敷地の中には歴史的な鉄道車両だけでなく、「500系新幹線」や「103系」など、今もJR西日本で活躍中の現役車両も展示されていて、まさに憧れの車両を好きなだけじっくり観察できちゃうミュージアム!
さらに! 屋外施設の扇形(せんけい)車庫には実際に走行できるSLもたくさん在籍。ここには国内最大の20両もの蒸気機関車が保存・展示されており、そのうち8両は実際に動く「動態保存」を行なっています。
今回は、魅力満載で子連れにもやさしい京都鉄道博物館を、鉄道写真家・村上悠太が、わかりやすく、そしてちょっとマニアックに解説していきます!
- ※記載は取材当時のものです。お出かけの際は最新情報をお確かめください。
行く前に…チケットや知っておきたい設備をチェック
京都鉄道博物館はどこにある? チケットは?
京都鉄道博物館へは、京都駅からJR嵯峨野線でひと駅の「梅小路京都西駅」が最寄駅。
この駅へは普通列車のみが停車し、日中時間帯はおおよそ20分ごとに運行されています。嵯峨野線は京都駅の西端にある31〜33番線から出発しているため、新快速や新幹線などからの乗り換えだと少し時間がかかるので、10分程度ゆとりをもっておくのがおすすめ。
「梅小路京都西駅」を降りれば京都鉄道博物館は目の前!
入館料は大人1500円、大学生・高校生が1300円、中高生は500円、幼児(3才以上)が200円です(編集部注:2023年3月1日改訂後の料金)。事前予約は必要ありませんが、スムーズに入館したいなら「前売入館券」が便利。こちらの入館券はJR西日本のみどりの窓口のほか、電子チケットサービス「アソビュー!」、全国のマルチコピー機設置のセブン-イレブンで購入できる「セブンチケット」サービスなど各種チケットサービスで購入できます。オンラインで購入できるサービスも多いのでぜひ活用してみて!
さらに、京都鉄道博物館の隠れた魅力の一つがその立地。すぐそばには「梅小路公園」や「京都水族館」、京都駅に戻れば「京都タワー」と周辺にはあわせて巡りたい観光施設が点在!それらの施設や京阪電車・バスなどのフリー乗車券がセットなった入館券や、割引制度も各種あります。詳しくはこちら(https://www.kyotorailwaymuseum.jp/advance-ticket/)もチェックしてみてくださいね。
子連れにうれしいサービスもいっぱい
京都鉄道博物館は、子連れファミリーにもとってもやさしい博物館!
館内ではベビーカーの貸し出しのほか、キッズトイレやおむつ替えスペースなども館内にたくさん用意されています。交通系ICを鍵としても料金の支払い方法としても使用できるコインロッカーもあるので、なにかと荷物が多くなる小さな子ども連れのお出かけでも身軽に館内を楽しむことが可能です。
館内にはプロムナードと本館のそれぞれにコインロッカーがあり、4箇所の授乳室とベビーベッド、ベビーベッド併設の男性トイレや多目的トイレが12箇所あります。授乳室の個室部分は女性のみ利用可能ですが、ミルク用の給湯器とシンク、ベビーベッドは男性も利用できます。
館内には2機のエレベーターがあり、段差部分にもスロープがあるので車いすやベビーカーでの移動も楽。ベビーカー置き場もあるので重宝します!
しかも中学生以下なら、かなりお得な「ウメテツパスポート」も発売中。最大で1年間有効で期間内は何度でも入館自由。同伴者は2名まで入館料2割引で、小中学生は1000円、幼児は400円と破格のお値段! 初回購入には別途入館料が必要です。
京都鉄道博物館の見どころをチェック!
まずは「プロムナード」から「トワイライトプラザ」へ
さて、さっそく館内へ!
京都鉄道博物館は大きく分けて、「プロムナード」、「トワイライトプラザ」、「本館」、「扇形車庫」、「旧二条駅舎」の5セクションからなります。
入館するとそこは「プロムナード」。「C62形26号機」、「クハ86形1号車」、「0系21形1号車」がずらりと並びます。世界初の高速鉄道である、新幹線の歴史を切り開いた0系は先頭車だけでなく、グリーン車の「16形1号車」、ビュッフェ車両の「35形1号車」を間に挟み、4両編成で展示。1両のみではなく、「編成」で保存されている大変貴重な展示なんです!
奥に進んで本館入口の手前左側には「トワイライトプラザ」。
2代目京都駅舎の上屋(屋根部分)を再利用して作られた展示スペースの下には「EF58形150号機」と「EF81形103号機」が並んで展示されています。その奥には大阪と札幌を結んでいた伝説的寝台特急列車「トワイライトエクスプレス」の食堂車と最上位客室だった「スイート」の客車の姿が。
「本館」1階の錚々(そうそう)たる車両たち
さてプロムナードに戻り、「本館」に入りましょう!
館内に入ると目に飛び込んでくるのはJR西日本を象徴する3つの車両です。
現在でも8両編成山陽新幹線「こだま」として活躍し、当時世界最速の300km/h営業運転を実現した「500系521形1号車」。
昼は座席特急、夜には寝台特急として使用され、昼夜問わず東海道、山陽本線を駆け抜け、晩年では急行「きたぐに」として大阪〜新潟間を走行した「クハネ581形35号車」。
そして特急「雷鳥」をはじめ、急勾配区間である信越本線横川〜軽井沢間でEF63形電気機関車との協調運転機能を搭載し、特急「白山」などで使用されてきた「クハ489形1号車」が並びます。
この中で特に人気なのはやっぱり500系! 普段ではホームに隠れてしまって見られない下からのアングルなどもしっかり楽しめます。
この3両を含め、館内の展示車両には車体を隠してしまうような「柵」は取り付けられておらず、憧れの車両に最接近できるのもこの博物館ならでは!
ここでトリビアを一つ。
総勢53両もの保存車両がある館内ですが、その館内車両は、歴史的背景や保存上の理由などがない場合は、極力「トップナンバー」(その形式で一番最初に造られた車両)が保存されているのが京都鉄道博物館の大切なこだわり。
先程紹介した500系も、博多方先頭車両1号車のトップナンバー。「のぞみ」として東京〜博多間を16両編成で運行していた先頭車両で、8両編成化されずに京都の地にやってきました。さらにプロムナードの4両の0系も全てがトップナンバー!そう考えるとこの博物館のスゴさがきっとよりわかるはず…!
先に進むと「EF66形35号機」と「DD51形756号機」のかさ上げ展示があります。
下の通路を潜れば床下機器の様子がよく観察できます。こちらの展示、なぜかさ上げしているのかというと、実は京都鉄道博物館の下にはその土地柄から、遺跡が眠っているため、地面を掘ることができる範囲に制約があるためです。
本館1階の奥には「展示引込線」があり、ここも京都鉄道博物館ならではのコーナー。なんとこの線路の先は…日本全国につながっているんです!
通常は、「トワイライトエクスプレス」のサロンカー、電源車と「オハ46形13号車」が展示されていますが、ここは車両の入れ換えが自由にできる展示スペースとなっており、もちろん現役バリバリの車両の展示も可能!
これまでも北は北海道、南は四国からさまざまな車両が京都にやってきました。そのためここの施設は本物の「鉄道施設」となり、営業線同様に法規に沿って建設され、定期的な検査も実施されています。
「本館」2階にはワクワクの体験、そしてレストランも!
本館2階にあがると信号のメカニズムや安全のメカニズムを学べる「運行のしくみ」、デフォルメされたW7系がある「キッズパーク」があります。
このキッズパーク横のトイレには小さなサイズの「キッズトイレ」もあるので子ども連れの場合は要チェック!
そして! 「運転シミュレータ」があるのもこの本館2階!
京都鉄道博物館の運転シミュレータはN700系7000番台の新幹線タイプが2台、223系の在来線タイプが6台の計8台。体験は事前抽選式です。まずは「運転シミュレータ」の場所で入館券を提示し、整理券をもらいます。体験希望時間のおおよそ20〜25分前に行われる抽選で当選すると、体験ができます。
抽選は1日8回、入館券1枚につき1回のみ抽選可能で、タイプ(新幹線か在来線か)は選ぶことができないので注意してください。
- ※編集部注:2022年6月2日より、体験方法が変更になりました。くわしくはこちら
さらに2階には、人気コーナーの「鉄道ジオラマ」も!
幅約30m、奥行き約10mの巨大ジオラマは日本最大級!1日6回、プログラム上演が行われます。「運転シミュレータ」の詳しい抽選時間と「鉄道ジオラマ」の上演時間は公式サイトを確認してください。(https://www.kyotorailwaymuseum.jp/enjoying/watching/)
お腹が空いたら寄りたい「レストラン」も2階にあります。
このレストランがまた眺望抜群で、目の前を新快速やサンダーバード、東海道新幹線がひっきりなしに行き交います。鉄道をモチーフにしたメニューが多く、キッズメニューもある他、大人の乾いた喉にうれしいビールなどのアルコールも!
お腹を満たして、2階から3階に行きたいところですが、ここで子どもたちにもうれしい工夫をご紹介。
2階通路からは1階の車両たちがよく見えます! 通路は足元まで透明になっているので低い視線でも見やすいんです。
2階と3階の階段には子どもしか入れない(?)特別なウォッチングスポットがあります。探してみてね!
「本館」3階にも見逃せない場所が
最上階の3階にあるスカイテラスでは、京都駅を発着する東海道本線と東海道新幹線、扇形車庫の蒸気機関車たちが一望でき、遠くには嵯峨野線の大パノラマが広がります。
こちらでは飲食も可能なので休憩にも最適です!
そして3階には隠れたスポットがありまして…
それがここ!
3階室内の長く伸びる通路なのですが、ここに窓が取り付けられており、1階の展示車両たちを俯瞰できちゃうんです。しかも椅子完備! 飲食はNGですが、隠れた休憩ポイントとして僕の一押しスポットです。
京都鉄道博物館ならでは! 「扇形車庫」でSLを体感
2階に降りて今度は連絡通路を通って「扇形車庫」へ。
こちらの施設はかつて「梅小路蒸気機関車館」と呼ばれ、生きた蒸気機関車を体験できる施設として人気でした。現在では京都鉄道博物館の一部として、その名称も「梅小路蒸気機関車庫」と改称し、現在も蒸気機関車の展示、保存だけでなく、JR西日本で活躍する「SLやまぐち号」を牽引する「C57形 1号機」、「D51形200号機」を筆頭に8両の蒸気機関車の動態保存、保守点検を担っています。
蒸気機関車の迫力を見るだけでなく、汽笛の音、蒸気の音、煙や油の匂い、火の熱などまさに体中で感じられるのは京都鉄道博物館の最大の特徴で、こんな鉄道系ミュージアムは国内でもここだけです。
館内で動態保存されている蒸気機関車が実際に牽引して走る「SLスチーム号」に乗ることもでき、蒸気機関車の旅を少しだけ体感することもできます。乗車料金は高校生〜大人300円、3歳以上の幼児〜中学生が100円。出発時刻は公式サイト(https://www.kyotorailwaymuseum.jp/enjoying/experiencing/#sl)を確認してください。
「旧二条駅舎」でおみやげもお忘れなく
扇形車庫を抜けると旧二条駅舎。
ここには蒸気機関車に関する展示とミュージアムショップがあり、鉄道関連グッズや限定グッズなどを買うことが可能です。
ミュージアムショップに立ち寄るためには一度館外に出る必要があるのですが、心配ご無用。当日中16時30分までなら入館券を提示することでメインエントランスから何度でも再入館OK! ショップだけ利用したいという人は入館券の購入はなしでも利用できます!
ストーリーを感じる、「京都鉄道博物館」に出かけよう
ここまで、館内をぐるりと回ってきました。
最後に、京都鉄道博物館にまつわるトリビアを2つご紹介しましょう。
足もとのラインが示すものとは…
プロムナードのC62、クハ86、0系の前を見るとなにやらグレーの2本のラインが外まで続いています。この線、線路をモチーフにしているのですが、実は、これ、この3形式がどのようなルートで館内に搬入してきたかを表しているのです!
ちなみに扇形車庫の12番線奥にも同じようなラインが引いてあり、これも搬入ルートを示しています。
京都鉄道博物館の展示車両は主に2つのルートでここにやってきました。
まず引退してまもなく、まだ本線上を他車に牽引されて移動できる車両については、各地から線路を走って京都までやってきたのち、扇形車庫の12番線より搬入されました。
一方、かつて大阪の弁天町にあった「交通科学博物館」で展示されていた車両などについては大型トレーラーにて、深夜に京都まで一般道を走って搬入されてきました。
EF81の運転室にあったのは…
続いてのトリビアはちょっと心が温まるようなエピソードを。
トワイライトエクスプレスを牽引していた「EF81形103号機」が京都にやってきたときのことです。
搬入作業中、作業者がEF81の運転室に入ったところ、なんとそこには大きな花束が!
おそらく、EF81、そしてトワイライトエクスプレスに他ならぬ思いがある社員さんから、「EF81形103号機」へのプレゼントだったのですが、京都鉄道博物館にやってきた展示車両の中でこうしたことがあったのはこのEF81だけでした。
対策万全に、2022年1月は特別公開も
そんな多くのドラマがあって迎えたグランドオープンから早くももう5年が経った京都鉄道博物館。
現在では新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から入館時の検温と消毒はもちろん、館内施設の消毒やウイルス対策シートの設置、非接触型のセンサーなどを用いた万全の対応が行われています。
また企画展として2022年3月6日まで「大阪環状線〜大阪まあるく60年〜」が開催されています。加えて、2022年1月の土日祝日限定で「クハネ581形35形」の車内を特別公開!
自在に車両が入れ換えられる「展示引込線」に貴重なトップナンバーの車両たち、そして生きた蒸気機関車のロマンが集まる京都鉄道博物館は、何度でも通いたくなる鉄道ミュージアムです。
著者紹介
- ※写真/村上悠太
- ※内容は取材時のものです。ただし、料金改定や申し込み方法変更等、適宜修正を行っております