2021.12.27ジパング俱楽部貴船神社など京の冬景色7選!京都観光おもてなし大使おすすめ【御茶ノ水編集室より】
有名な観光地ばかりではない、暮らし目線の京都案内
会員誌「ジパング倶楽部」を作っている、東京・御茶ノ水の編集室から、誌面では紹介しきれなかった専門家のお話や、取材のこぼれ話など、ここでしか見られない情報を発信していくコーナーです。
今回は、1月号特集「京の寺 技と美の建築めぐり」で寺院の門について解説してくださった、京都産業大学日本文化研究所上席特別客員研究員の小嶋一郎先生に登場いただきます。
京都観光おもてなし大使も務めている小嶋先生。京都在住ならではの視点で、冬の京都でぜひ見てほしい、おすすめの景色を教えていただきました!
この記事に出てくるスポット
【教えてくれたのはこの方!】京都観光おもてなし大使・小嶋一郎先生
琵琶湖から通勤⁉ 冬の風物詩、ユリカモメ訪れる鴨川
三条大橋付近の鴨川。たくさんのユリカモメが飛び交う
群れになり、羽繕いしたり、休憩したり。夕刻、琵琶湖に帰る時も一斉に向かいます
かわいらしいユリカモメ。例年11月下旬に飛来し、3月いっぱいその姿が見られます
小嶋先生のコメント
京都市民の憩いの場である鴨川。冬になると、ユリカモメがやってきます。昔から京都の冬にやってくる鳥だと思われがちですが、渡り鳥として観測されたのは意外と最近のこと。なんと昭和49年のことです。秋の終わりから春先にかけて、極寒のカムチャッカ半島から渡ってくるユリカモメたちですが、日中は鴨川や高野川などで過ごし、夕方になると、みな琵琶湖の南に帰っていくのです。そのことを知った私は「ユリカモメたちも通勤でたいへんだな」と思ったわけです。
アクセス
写真の三条大橋付近へは、京都駅から市バス5系統約25分の三条京阪前下車すぐ。
初午大祭の最吉日に! 稲荷山(伏見稲荷大社)をお山する
参拝はここからスタート。伏見稲荷大社にはいたるところにお狐さまが
伏見稲荷大社では、2月の初午の日に初午大祭が行なわれ、京野菜をはじめさまざまな品々が奉納されます
初午大祭では、商売繁昌・家内安全「しるしの杉」(有料)が授与されます
小嶋先生のコメント
全国の稲荷神社の総本宮である伏見稲荷大社。その背後にそびえ、稲荷信仰の原点である稲荷山の七つの神蹟を含め全体をめぐる「稲荷山巡拝(お山する)」は、一年365日いつでもできますが、冬がおすすめです。避けたほうがいいのは、夜間のお参りと夏場の日中。本殿からは一周で2時間ほどかかりますので、やはり相当な体力が必要です。ですので、夏の暑い時間帯は避けるべき。また、階段や坂道のアップダウンがありますので、照明が不十分な夜間もNGです。
そうなりますと、春でも秋でもいいのではないか? と思われるでしょうが、四ツ辻辺りから見られる絶景を眺望するには、やはり冬場の澄み切った空気の中がベターなのです。伏見稲荷大社では、2月の最初の午(うま)の日や二の午の日に詣でると福が得られるいわれているので、2月の晴天が見込まれる日に、「お山」しましょう。
アクセス
伏見稲荷大社へは、奈良線稲荷駅から徒歩約1分。
奥座敷の冬の絶景 雪景色の貴船神社
雪積もる、絶景の貴船神社。夜は期間限定でライトアップも
小嶋先生のコメント
夏をすすめられる方が多い貴船神社ですが、私は冬の貴船神社をおすすめします。表参道の石段に雪が降り積もり、鳥居や灯篭の朱の色と、木々の緑と、雪の白が織り成すコントラストが好きですね。伏見稲荷大社の千本鳥居は、どちらかというと朱色が全面に押し出されますが、貴船神社表参道は、朱色が控えめです。その控えめなところがナチュラルな印象を与えてくれるのでしょう。
アクセス
京都駅から地下鉄烏丸線約20分の国際会館駅下車後、貴船口・鞍馬温泉行き京都バス52系統に乗り換え約20分の貴船口下車。徒歩約3分の貴船口駅前から貴船行き京都バス33系統約4分の終点下車、徒歩約20分。
祝鯛などおせち料理ずらり! 年末年始でにぎわう錦市場
京の台所は、お正月の準備で売り手も買い手も大忙し
お正月らしく、祝鯛がずらり。売り切れも続出です
小嶋先生のコメント
師走の錦市場は、品揃えも正月モードでバラエティに富んでいます。また、売り手も買い手も気合いが入って、いつも以上に活気がありますね。おせち料理などの正月の御膳を意識した商品に絞って眺めて回るのもいいですね。私なら丹波産の黒豆。大粒で豆ながら品格があり、コトコト炊き上げると、つぶらな瞳のようにキラキラと、また一粒一粒が黒い宝石のように輝きます。ほかにも縁起物の「鯛」がおすすめ。これが、所狭しと店棚に並んでいますと「正月が来るなあ~」と感じてしまいます。
アクセス
京都駅から市バス5系統約14分の四条高倉下車、徒歩約2分。
雄々しい姿に感嘆 雪を冠する比叡山望む高野川周辺
雪化粧の比叡山。写真は2021年1月頃撮影
小嶋先生のコメント
今年、正月三が日に近い頃、高野川沿いを自転車で走っていて見つけた、新たな冬の景色です。晩春の比叡山を目の当たりにした夏目漱石が“頑固な山”と小説の主人公に語らせていますが、まさにこの頑固さがありありと分かるのが、冬場雪を冠した比叡山なのだと、私は感じました。決して標高の高い山ではないのですが、洛中から見える山では2番目に高く、京都市内で比叡山の見える小学校では、校歌の中に出てくるぐらい印象的な山です。
アクセス
比叡山が望める写真の蓼倉橋付近へは、京都バス17系統約33分の蓼倉橋下車。
町家の明かりが美しい 西陣・浄福寺通の夜景
冬の夜の浄福寺通。温かみのある灯の下、町家が照らされ幻想的な風景です
小嶋先生のコメント
浄福寺通(上立売〈かみだちうり〉通~寺之内通間)は、春夏秋冬いつでも歩くことができますが、私は、5~7月あたりの雨の降った後の夜と、ライトアップされ「京都らしい温かみ」がとくに感じられる冬の時期が好きですね。しんしんと粉雪が舞い積もるならば絶景です。雪が降らなくても、灯の暖かい光が、周囲の冷えた空気を通して石畳を照らし、ほのぼのとした温(ぬく)もりを感じることのできる、西陣らしいスポット(ストリート)ですね。
アクセス
浄福寺通へは、京都駅から市バス6系統ほか約30分の千本上立売下車、徒歩約5分。
寒い冬に見ればほっこり 雪の後に現れる“白い大文字”
夏とはまた違った光景
小嶋先生のコメント
「京都五山送り火」で有名な大文字山(如意ヶ嶽)。「白い大文字」というのは、太平洋戦争中の2年間、灯火管制のため、送り火が夜に点(とも)せなかった時、地元の有志が早朝、白いシャツ姿で大文字山に登り、火床に沿って並び、ラジオ体操をした時の様子のことを指します。でも私は、雪が降った後、大文字山の火床に残った白い大の字を見るたびに「白い大文字」と勝手に呼ぶのです。
雪の降り方が足りなくて、地上の雪がすぐにとけてしまった後も、大文字山の雪はまだうっすらとその白い姿を見せてくれます。寒い京の町を歩いていても、ほっこりするひとときです。「ほっこり」とは京言葉の典型で、体の中に温もりを感じるような、心地よい疲労感に包まれる状態のことです。
アクセス
大文字は京都市内各所から見られます。