トレたび JRグループ協力

2025.02.05ジパング俱楽部“世界一美しい踊り”で体も心も若く美しく。何歳からでも知らなかった自分に出合えるハワイの伝統舞踊「ハワイアンフラ」|定年後が楽しくなる新しい趣味

定年後が楽しくなる新しい趣味を紹介するこの連載。第7回のテーマは「ハワイアンフラ」です。

チャレンジしたい習い事としてジパング世代の女性に人気が高いですが、どんなやりがいや魅力があるのでしょうか。

東京を拠点にハワイアンフラを指導している「プアナニ髙橋 フラスタジオ」の講師・髙橋紫さんに話を聞きました。


髙橋 紫(ゆかり)さん

東京都出身。
「プアナニ髙橋 フラスタジオ」主宰のプアナニ髙橋さんを母に持ち、幼少期からフラに親しむ。講師歴は約30年。
ちなみに、ハワイ語で「プア」=「花」、「ナニ」=「美しい」を表す。

※写真左がプアナニ髙橋さん、右が紫さん。

ハワイの伝統的な民族舞踊

フラには2つのスタイルがある


踊るときは表情も大事。みなさん常に穏やかな笑顔! 踊るときは表情も大事。みなさん常に穏やかな笑顔!

日本では一般的に「フラダンス」とも呼ばれている「ハワイアンフラ」。ハワイ語で「踊り」の意味で、ハワイの伝統的な民族舞踊のことを指します。

もとは神様に捧げる厳粛な舞踊「カヒコ」と呼ばれる古典フラから始まり、19世紀以降、欧米音楽の影響を受けて作られた現代フラ「アウアナ」が生まれました。

髙橋さん フラは振り付けひとつひとつに意味があるんです。たとえるなら手話のように、お花とか風とか、さまざまな物や事を、両手で表現します。その点もフラの特徴ですね。

誰でもいつでもどこでもできる気軽さ

―― 髙橋さんが感じるフラの魅力とは?


ユーモアを交えて楽しく指導する髙橋さん ユーモアを交えて楽しく指導する髙橋さん

髙橋さん ほかの舞踊と比べると特殊な動きを必要としないで、誰でもいつでもどこでも始められることがまずひとつ。運動が苦手でも、体が硬くてもできるのです。 手も足も使う全身運動ですが、基本的に中腰で踊りますので、足腰も自然と鍛えられます。

また、音楽も魅力的です。ハワイアンといっても、ゆったりした曲、ムードのある曲、軽快な曲など、曲調はいろいろありますので、聴くだけで楽しい。でも、踊りがついたらさらに楽しくなりますよ。

自然と体が動いてしまうようなノリやすさのあるハワイアン音楽。フラも思いのほかハードルは低そうですね。

曲の物語を知り、思いをこめて踊る

また、フラは歌詞やテーマにもご注目。

髙橋さん 古典フラは神様や王様に捧げるテーマが多いのですが、現代フラは愛を歌った曲が多いのが特徴です。ですので、初めて踊る曲はストーリーを伝えることを大事にしています。

振り付けを練習する時も、たとえば、「ここは『優雅にお尻を振っている様を見たい』という歌詞だから、顎を上げて少し自慢げにお尻を振ってください」などと、なるべく想像しやすいように指導します。

そうすることで踊りに思いがこめられ、表情も含めて全身で曲を表現することができるのですね。



姿勢よく指先まで意識して踊る姿は実に優雅 姿勢よく指先まで意識して踊る姿は実に優雅

両手で花を表現している 両手で花を表現している

華やかに踊り、楽しく続けて健康維持


ひとつひとつ動きを確認しながらレッスンする ひとつひとつ動きを確認しながらレッスンする

訪れたこの日は「砂町文化センター」で毎週開かれている「ヤング★ハワイアン」の開講日。髙橋さんが講師を務め、約25年も続く歴史のある講座です。

20~70代ほどの幅広い年齢層の受講生たちが、花の髪飾りを着け、色とりどりのパウスカートを揺らしながらレッスンに励みます。ゆったりとしたハワイアン音楽に合わせて踊る様子は華やかで、とても楽しげです。

25名ほどいる受講生のなかから、岡本シズ江さんと落合まゆみさんにも話を聞きました。

体幹が鍛えられて病気と無縁に


岡本シズ江さん 岡本シズ江さん

岡本さん 友人に誘われて開講時から約25年通っています。

ハワイアンのハの字も知らず、最初は体が動かなくて……。
でも、10年経った時に何かがストンと落ちて、曲の中に自分の体が溶け込むように気持ちよく踊れるようになりました。

――諦めず10年よく続けられましたね。

岡本さん 仲間がいて、先生といろんなお話をして、教室がすごく楽しかったからでしょうね。 続けることによって奥が深まっていくんです。

何もない新しい木でも、年数が経つと枝葉がどんどん広がっていくでしょう。そういうイメージです。

今は、早朝から好きな曲をかけてキッチンでステップの練習をするのが日課なんです。気持ちいいですよ。

自分の体づくりにも役に立ちましたね。とくに体幹が鍛えられました。姿勢が正しいと内臓の病気をしにくくなるそうです。この20年以上ほとんど病院にかかったことはありません。

いつまでも向上心を持ち続けられる


落合まゆみさん

落合さん 私は、新しい習い事を始めたいと思っていた時、区報でこの講座を知って飛び込みました。

初めは踊りの順番を覚えるので精いっぱい。でも、先生が踊る曲の背景をていねいに教えてくださるので、雰囲気が頭の中に浮かんで体が動くようになって、気づけば20年経ちました。

年を重ねると向上心ってなかなか持てなくなりますけど、少しでも新しい曲を覚えたいとか先生の踊りに近づきたいとか、向上心が湧くのがいいですね。

主婦になると学生時代のような友達はできにくいですが、好きなことに取り組む仲間ができたのも財産です。一緒にご飯を食べに行ったり、フラのイベントを観に行ったりする楽しみができました。

――フラのために何か心がけていることはありますか?

落合さん 加齢とともに筋肉は少なくなると聞くので、筋肉の維持・増加のために食事で栄養を摂るようにしています。

タンパク質は、赤身のお刺身を2・3切れでも毎朝食べるようにして、カルシウムの摂取には海藻を。刻みめかぶが私のお気に入りです。

若返り、きれいに変身する効果にも期待

健康維持に重要な下半身の強化も

――ジパング世代にはどんなメリットがあると思いますか?


「フラを通じて楽しい時間を!」と髙橋さん 「フラを通じて楽しい時間を!」と髙橋さん

髙橋さん 持久力がつく、前向きになる、体が温まりやすい、といったことはあるかと思います。

あとはやはり、下半身、とくにモモが鍛えられます。シニア世代が鍛えなければいけない部位はしっかり鍛えられますね。

シニアになると今までできたことが急に覚えられなくなったというお悩みも聞くようになりますが、努力は裏切りませんし、同じ志を持つ仲間がいればみんなで励まし合って乗り越えることができます。

差がつくことも決して悪くはなく、モチベーションにつながります。

知らなかった自分を発見

それから、着飾ることも重要だと髙橋さんは言います。

髙橋さん 衣装や飾りを身に着けるだけで楽しくなる。要は変身ですね。誰しも変身願望ってお持ちだと思うんですよ。フラをすると変身願望が満たされます。

「プアナニ髙橋フラスタジオ」では発表会やホテルでのパーティーを催しているのですが、曲に合わせてお揃いのドレスを身に着け、日頃の成果を披露します。

こういう機会は日常生活ではなかなか経験できませんよね。みなさん人生を諦めていませんし、これを日々の目標にしている方も多いようです。

――心も豊かになりそうです。

髙橋さん そう。だから、知らなかった自分を発見できると思います。楽しんでいるから表情も変わる。

フラを始めた頃よりも若返っていく方、きれいになる方が結構多いんですよ。



温暖なハワイの気候と、その地で紡がれてきた恋や自然の物語に想いを馳(は)せながら、心地よい音楽に合わせて体を動かせば、新たな自分と出会えるかもしれません。


練習着のパウスカートはさまざまな色柄がある 練習着のパウスカートはさまざまな色柄がある

髪飾りの花も多彩。付ければ気分も上がりそう 髪飾りの花も多彩。付ければ気分も上がりそう

髙橋さんの考える、「フラをこれから楽しみたい人への3ステップアドバイス」

① 見学したらひるまない
 

自治体主催の講座やカルチャースクール、フラスタジオなど、フラを習える場を探して、まずは見学! 実際に目にするとさらに興味が湧くと思います。

見学するとみんなが上手に見えてしまい、「私には無理かも……」と思ってしまいがちですが、じつは、始めて2年の人もいれば、1カ月の人もいるのです。

上手に見えても気にせず、始めたい気持ちを大事にしてください。


② 3カ月続けてみる
 

向き・不向きは人それぞれで、体験しないとわかりません。ひとまず3カ月取り組んでみましょう。

初めは分からなくて当然。基本をしっかり習得してステップがわかってくると、ある日突然おもしろくなります。すると、「もっと腕を伸ばせるようになりたい」「〇〇さんのようになりたい」と目標や課題が芽生えます。

もし3カ月経ってもストレスに感じていたら無理をせず、今の自分には合わないと判断して一度離れてもいいと思います。


③ ハワイ文化や音楽に触れる
 

かたちから入りたい人、気分を高めたい人は、ハワイの雑貨や衣装を扱う店を訪れたり、ハワイ語を調べたり、ハワイアン音楽を聴いてみるのもいいでしょう。

ひと口にハワイアン音楽と言っても、ハワイ語だけでなく英語や日本語で歌われる曲など多彩にあります。

日本では「和田弘とマヒナスターズ」や「バッキー白片とアロハ・ハワイアンズ」、大橋節夫さんの『南国の夜』や日野てる子さんの『月の夜は』などが大ヒットした第一次ハワイアンブームがありましたが、その頃の日本語ハワイアンでも踊りますので、なじみのある方は当時を思い出して、より楽しめるかもしれませんね。


文/下里康子 写真/田中仁志 取材協力/江東区文化コミュニティ財団 砂町文化センター