2025.04.23ジパング俱楽部フレイル(虚弱)予防に、リハビリに、安眠にも期待大!頭の体操をしながらコミュニケーションも育める、賭けない・飲まない・吸わない「健康麻雀」|定年後が楽しくなる新しい趣味
定年後が楽しくなる新しい趣味を紹介するこの連載。第9回のテーマは「健康麻雀」です。
「ウエルネスマージャン」とも呼ばれ、記憶力や決断力を要し、遊びながら脳トレになるといわれる人気のインドア趣味ですが、一方で「難しそう」「覚えられるかしら」と不安に思う声も。
「健康麻雀コミュニティの会」の小野真美さんに、その特徴や魅力について話を聞きました。
小野真美さん
「賭けない・飲まない・吸わない」が3原則の楽しい頭脳ゲーム
健康麻雀は頭脳ゲームとしてのおもしろさが強調される
3枚1組を4つと2枚1組を1つの図柄を揃えるのが基本
中国を起源とし世界で親しまれている麻雀。
原則4人で行なわれ、牌(ぱい)を1枚引いて不要な牌を1枚捨てるを繰り返し、牌の図柄や文字を揃えてあがりを目指すテーブルゲームです。図柄や文字の揃え方にはいろいろな種類があり、それを役(やく)と呼びます。役を作ってあがると得点でき、最終的にもっとも得点が高い人が勝ちます。
では、健康麻雀とはどのようなものなのでしょうか。
「世代を超えて楽しめるのが麻雀です」と小野さん
小野さん 金品を賭けない、お酒を飲まない、タバコを吸わないをモットーにしています。
日本では、「日本健康麻将協会」という一般社団法人もあり全国的に広まっています。
本来の麻雀が持つ頭脳ゲームとしてのおもしろさが強調され、老若男女問わず安心して楽しめるのが特徴です。
小学生の頃から家族麻雀の経験はあったという小野さん。ですが、縁あって現職に就くまでは役など細かいルールはまったく知らず、1~2年かけて教室で麻雀を学んで指導者資格を取得したそうです。
好きな役が作れた時は気持ちよさが違う
――健康麻雀の魅力とは?
小野さん 健康麻雀は打ち方が変わりますね。
一般的な麻雀や競技麻雀はどうしても、手がいい・悪いよりもいかに早くあがれるかに注力します。でも、健康麻雀の場合は、早くあがることだけでなく、たとえば、ちょっと遅れてもいいから高い点数であがろうとか、きれいな役を作ることに頭を使ったり努力しようとするんです。そこが魅力だと思います。
よく、「賭けなくて麻雀って楽しいの?」と聞かれるのですが、昔からずっと打っていらっしゃる方でも健康麻雀を楽しまれています。実際にやってみると打ち方が全然違うので十分楽しんでいただけるはずです。
――ちなみに、小野さんの好きな勝ち方(役)は?
小野さん 清一色(チンイツ)というのが大好きなんです。自分の持つ牌13枚をすべて同じ図柄でズラッと揃えるものなのですが、気持ちよさが違います!
スムーズに牌が揃わなさそうだとしても、好きな役があるとそれを目指そうとする。そういう自分の理想へのチャレンジができるのも健康麻雀のいいところかもしれません。
山を積む必要がない全自動卓
ホワイトボードを使って牌の組み合わせを解説
生活にリズムとハリが生まれる
女性に人気が高い
常に動き回りひとりずつアドバイスする小野さん
「健康麻雀コミュニティの会」では、ゼロから学べる「お教室」と、経験者がゲームを楽しめる「ひろば」があります。現在の会員数は、「ひろば」で300名以上、「お教室」で158名。
年齢制限はとくにないため、下は小学生、上は90代と幅広い年齢層で、時には孫世代とシニア世代が和気あいあいと卓を囲むこともあるそう。
「お教室」の受講者は圧倒的に女性が多いということから、女性に人気が高いことがうかがえます。
「お教室」の初級コースに参加していた方に話を聞くと、
- 「まったくのゼロから始めましたが、お友達と話しながらできること、分からないなりに自分で頭を使って考えることが楽しいです」(80代・女性)
- 「友人に誘われて始めてまだ1年未満ですが、麻雀って思っていたよりもずっと奥が深いなと思いました!」(60代・女性)
との声が。
会話を楽しみながら遊べる頭脳ゲームです
脳トレ、ボケ防止のために
同じく、入会わずか2カ月というアオヌマさん(58)にも話を聞きました。
アオヌマさん
アオヌマさん 年を取っても長く続けられる趣味がほしいと思ったのと、脳トレというかボケ防止にそろそろ始めておかないと、と逆算しまして、以前から興味があったので始めました。
――実際にやってみてどうでしたか?
アオヌマさん 教室なので、一から体系だった教え方をしていただいているので、なんとかついていけています。役はまだ分かっていないので、とにかく揃えるだけで精いっぱい。
――そういうなかにもおもしろみを感じている?
アオヌマさん そうですね。偉そうなことは言えませんが、麻雀って基本的に確率のゲームなんですね。確率的に、「あ、こっちのほうがいい“待ち”かな」なんて、なかなか気づけないんですけど、あがりの確率の高い“待ち”を考えたりするのが楽しいですね。
――ご自身の中での変化もありますか?
アオヌマさん 週末1回受講しているのですが、生活にリズムとかハリが出てきますね。また、体調が悪いと頭がまったく働かないので、教室の前には体調を整えて万全の態勢で臨むようになりました。広く言えば健康に気を遣うようになったと思います。
今の目標は、早く「ひろば」でゲームができるようになることです。
麻雀で体も鍛えられる?
麻雀した日はよく眠れる
指先を使って牌をやりとり
――シニア世代にはどんなメリットがあると思いますか?
「あがる楽しさを味わってもらいたい」と小野さん
小野さん NPO法人の立ち上げの際にまず目指したのは、シニアの方たちが一歩外へ出るために役立ちたいということでした。
外出することで身なりに気を遣う、ここに来ればおひとりでいらしても自然と誰かとおしゃべりしたり、打っているうちにお友達ができたりする。 手先を使うし、頭をフル回転させますし、集中力も要るので、みなさん健康麻雀に来た日はよく眠れるっておっしゃるんですよ。座っているだけですが適度な疲労感があるんです。
それに、もし自分が外に出られなくなったとしても、麻雀ができればお友達を家に呼んで楽しむことだってできますしね。 倒れられて障害が残った方がリハビリ代わりに通うということもあります。 ですので、フレイル(虚弱)予防というのが一番だと思っています。 また、計算能力や決断力も鍛えられます。
「楽しい!」と思えるだけでいい
――記憶力に自信のない人でも趣味にできるでしょうか?
小野さん 私が教えていて思うのは、麻雀ってどなたでも必ず打てるようになるゲームだということです。80~90代の方でも、まったく知識がないところから始めて楽しんでいらっしゃいます。
麻雀は専門用語も役もたくさんありますし、日常生活では使わない言葉ばかりだから、「覚えられるかしら?」とよく言われます。確かに短期間で覚えるのは難しいですが、長く続けることで必ず覚えられます。でも、しっかり覚えていなくたって、卓を囲む仲間の誰かが覚えていれば、「あ、この役があるよ」なんて教えてもらえばそれで済むことです。
大事なのは、「楽しい!」という気持ち。少しでもそう感じたら絶対に覚えられるし、ぜひ続けていただきたい。
たまに、それこそフレイル予防として「行きなさい」とお子さんに言われたから受講したという方もいるのですが、まったく楽しめなかったり、無理に頑張ろうとしているのであれば、つらいでしょうし、今その人にとっては続ける意味がないと思うんです。
結局、麻雀はあくまでもゲーム。遊びなので、気軽に楽しむことが一番だと思います。
和やかなムードでレッスン
小野さんの考える、「健康麻雀を始めたい人へ3ステップアドバイス」
「やってみよう」という気持ちを大切に、まずは健康麻雀を体験できる場に行って麻雀牌に触れてみましょう。
「健康麻雀コミュニティの会」のお教室では、牌4枚の“4枚麻雀”から始めます。本来は13枚の牌をもとにゲームを進めるものですが、そんな数、最初からなかなか目で追えません。ですから、少ない枚数で考えるようにして、徐々に数を増やしていくんです。麻雀をまったく知らない方でも自然と理解できるようになりますよ。
私の経験では、上達するために家族に一緒に麻雀をやってもらったりしました。 家族だけじゃなく友達でもご近所さんでも身近な人に協力してもらって、麻雀で遊ぶ機会を作ってみては。
顔見知りならリラックスできますし、日常生活でも会話が増えたりとコミュニケーションもさらに築くことができます。 また、人に教えることで自分自身の理解力も高まり、知識も定着します。
麻雀は、じつは7割が運なんです。 ですから、初心者でも上級者に勝てることもある。逆に、すごくいい手ができたのにあがれないこともある。勝てない日もある。だけどそれは運がなかっただけで、次回はトップになれるかもしれない。
負けたからといって自分には実力がないとか落ち込む必要はありません。 心構えは気楽に! その時その時の運を楽しみましょう。
文/下里康子 写真/田中仁志