2023.06.15ジパング俱楽部旅の不安を解決する「旅サポート」とは?|解決! 60代からのお悩みごと
旅行の心配、相談に乗ってくれる人がいます!
いくつになっても、体に少し不安があっても、「旅」は心に元気を与えてくれます。
最近は、交通機関や宿泊施設のバリアフリー化が進められていますが、たくさんの情報を自力で集めたり、体力に自信のない家族や友人と出かけるのは少し不安に感じることもあるでしょう。
「NPO法人 高齢者・障がい者の旅をサポートする会(NPO法人 東京ユニバーサルツーリズムセンター)」は、そういったお悩みごとをサポートしてくれる心強い団体です。
主な活動として、バリアフリー対応の旅の情報発信、旅や外出時の相談、旅サポーターによる同行・サポートなどを行なっています。
いくつかのハードルがあっても、「旅」をあきらめないで楽しめる方法を、理事長の久保田牧子さんにうかがいました。
教えてくれた人 久保田 牧子さん
Q. 「NPO法人 高齢者・障がい者の旅をサポートする会」とは?
A. 東京を拠点とする、高齢者や障がい者の旅・外出をサポートする団体。
東京周辺のバリアフリーや旅の情報提供を行なっていて、電話や窓口で無償で相談に乗ってくれます。
また、「NPO法人 日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク」の一員として全国のセンターとつながっており、各地の情報や旅サポートへの案内も可能です。
相談内容として具体的には、「旅行先の宿にバリアフリーの部屋はある?」「介護食に対応してくれるレストランは?」などのバリアフリー情報の提供や、車いす等の貸し出しの手配もしています。
Q. 「旅サポーター」とは?
A. NPOの講習を受けた認定「旅サポーター」が、利用者の旅に同行し近所の外出から海外旅行までサポート。
旅サポーターには福祉・介護の資格を持つ人や旅慣れている人が多いので、「一緒に旅をする心強い仲間」となってくれます。
利用には会員登録と、旅サポーター利用時の料金が必要です。
実際の外出では、「帝劇でお芝居を観たい」「久しぶりに銀ブラをしたい」といったリクエストがあったり、果物狩りや藍染め体験など何かを体験する旅が人気です。
また、当NPOは旅行会社と提携していて、お望みならツアーの紹介もしてくれます。
Q. 高齢者や体に不安のある方が出かける場合、気をつけたいポイントは?
A. まずはトイレですね。私たちは、「トイレのことがクリアできれば60パーセント成功」と言っています。
たとえば小さな神社仏閣では多目的トイレがないことが多いので、駅に着いたらまずトイレに寄りましょう。
駅にかぎらず、旅先での多目的トイレのチェックは事前にしておくと安心です。
また、多目的トイレは介助者も一緒に入れるので問題ないのですが、車いすの女性を男性の介助者が女性用トイレに連れていくことはできないので、注意が必要です。
Q. 旅行中にあると安心な持ち物は?
A. お薬手帳を持っていくと安心です。
お薬手帳があれば、旅先で急なことがあっても薬を処方してもらえるのでおすすめです。
普段飲まれている常備薬は、有事に備えて旅行日数の2倍の数を持っていくといいでしょう。
あとは基本的なことですが、保険証も携帯しておくと安心です。
Q.列車を利用しての旅で気をつけたいことは?
A.新幹線、特急に車いすで乗る時には事前に申し込んでおきましょう。
旅サポーターは列車での移動もサポートするので、ジパング倶楽部を利用した旅行も可能です。
Q. ほかに知っておくと便利なことは?
A. 普段車いすを利用していない方も、広い敷地の観光施設などでは利用すると便利です。
また、車いすに電動アシスト機能が付いた「介助用電動車いす」というものがあり、旅行先にレンタルがあれば借りるのもおすすめです。
東京では、葛西臨海公園や浜離宮恩賜庭園、また三重県の伊勢神宮などにもレンタルがあります。
アップダウンがある場所、芝生や砂利道は、介助者が車いすを押すのも苦労しますし、敷地が広いと足腰の弱い方は歩くのが大変ですので、敷地内だけでも使ってみると良いと思います。
旅サポーターの久保田さんが教える
全国のバリアフリーおすすめスポット8選
旅サポーターの経験豊富な久保田さんに、安心して旅行ができる工夫がされている、全国のおすすめスポットを教えてもらいました。
1、札幌【北海道】
北海道の玄関口・札幌は魅力的なスポットが数多くあり、いつも観光客に人気の高い町。
バリアフリーの施設や情報も充実していて、安心して旅行ができるエリアのひとつです。
たとえば、四季折々の風景が美しい大通公園の散策はいかがでしょうか。
展望台からの眺めがみごとな「さっぽろテレビ塔」にはエレベーターやスロープ、車いす対応の多目的トイレがあり、1878(明治11)年建設の「札幌市時計台」には高齢者用車いすの貸し出しや簡易エレベーターがあります。
札幌駅西コンコース北口にある「北海道ユニバーサル観光センター・札幌」では、相談スタッフによる道内のバリアフリー観光情報の案内や、車いす・ベビーカーの貸し出しをしてくれます。
2、東京【東京都】
日本全国や海外から多くの観光客が訪れる東京は、交通、トイレ、観光・宿泊施設など、バリアフリーがもっとも進んでいる地域です。
ただ、人が多く交通網も複雑なので、しっかり下調べして出かけたいもの。
東京を訪れる旅行者に向けた「東京都アクセシブル・ツーリズムポータルサイト」には、役に立つ情報が満載です。
特に人気のスポットをめぐる35のモデルコースは、エリアやテーマで選べ、バリアフリー情報もきめ細やか。
写真も豊富で、今すぐ訪れたくなるスポットが目白押しです。
「NPO法人 高齢者・障がい者の旅をサポートする会」はこのほかに、東京のバリアフリー情報を調査していますので、不安のある方は相談してみてください。
3、西伊豆・松崎【静岡県】
「旅の楽しみは温泉」という方も多いと思いますが、慣れない旅先での入浴は不安になることも。
温泉王国・伊豆にある、「高齢者・障害者の西伊豆旅行サポートセンター『ラクタビスト』」では、西伊豆のバリアフリー観光情報の提供や入浴のみの介助サポートもしてくれます。
上下分かれた浴衣・着物をレンタルしての町歩きや人力車乗車など、旅サポーターとめぐるオリジナルイベントも行なっています。
「公共の宿 伊豆まつざき荘」は、シャワー車いすがある貸切風呂やオーシャンビューの車いす対応の部屋があり、駿河湾に沈む夕日が見事です。
4、伊勢神宮【三重県】
日本古来の神社仏閣は、敷地が広かったり階段が多かったりと、心配なことも考えられます。
「一生に一度は訪れたい」伊勢神宮では、参拝専用の車いすが用意されています。介助者が操作する電動車いすはタイヤが太いタイプなので、玉砂利の参道も楽に進めます。
一人で参拝する方や内宮正宮前の階段上まで上がって参拝したい方は、「伊勢おもてなしヘルパー」(有償・事前予約制)にお願いするのがおすすめです。
また、内宮と外宮の衛士(えし)見張所では、車いす用のマップも配布しています。
5、飛騨高山【岐阜県】
6、神戸【兵庫県】
古くからの港町・神戸は、バリアフリー先進都市でもあります。
新神戸駅観光案内所など市内12カ所で無料の車いすレンタルができる「KOBEどこでも車いす」は、どのスポットでも貸出・返却が可能です。
新神戸駅からは、ウォーターフロントをめぐるポートループバス(連結バス)に乗って見どころへ。
アートとアクアリウムが融合した水族館「アトア」、乗り心地のよいガイド付き人力車「リムジンリキシャ」、車いすでも楽々乗船できる「神戸港クルーズ」など、海と港町を満喫する体験が楽しめます。
「神戸ユニバーサルツーリズムセンター」では、介護タクシーやヘルパーの手配などさまざまな相談を受け付けるほか、バリアフリー対応のモデルコース作成や利用者に応じたオーダーメイドの旅を提案しています。
7、霊山寺【徳島県】
四国のお遍路といえば健脚の旅行者向けのイメージがありますが、さまざまな工夫やサポートを考えて体験してみたいもの。
たとえば、徳島県にある第1番札所・霊山寺では、山門から正面に進むと本堂の前に階段がありますが、山門を出て別の入口から入れば段差もなく本堂でお参りができます。
また、「徳島ユニバーサルツーリズムセンター」が運営する「民宿 旅の途中」は、宿泊者同士が支援し合う交流の場となっていて、近隣の病院とも連携しています。
民宿から霊山寺へは車で約30分、足の病気に霊験があるという第9番札所・法輪寺へは徒歩約18分です。同行介助者の派遣も可能なので、一度相談してみてはいかがでしょうか。
8、嬉野温泉【佐賀県】
2022年9月に西九州新幹線嬉野温泉駅が開業し、アクセスしやすくなった嬉野温泉。町全体でバリアフリーに取り組み、シニアに人気の高い温泉地として知られています。
「佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター」では、利用者それぞれのお悩みごとに対応。 車いすやシャワーチェアー・浴槽内電動昇降機などの入浴補助器具の無料貸し出しもあり、宿へ直接、貸し出し・返却してくれます(一部の旅館のみ)。
入浴介助サービスも利用でき、市内の福祉施設からヘルパーさん二人一組で来てくれるので安心です。
また、公衆浴場「シーボルトの湯」には、バリアフリー対応のリフト付き貸し切り風呂もある充実ぶりです。
Q.久保田さんが思う、おすすめの旅の仕方は?
A.ご家族と旅行に行く場合、旅サポーターを柔軟に利用していただければと思います。
たとえば、東京出発時には東京のサポートセンターのスタッフが駅まで同行して送り、目的地では現地のサポートセンターのスタッフに迎えに来てもらう。
発地サポート、着地サポートと言っていますが、最初から最後まで同行するより割安で、目的地では現地をよく知るサポーターが担当するので、より楽しく深く旅ができると思います。
また、ご家族と行き帰りは一緒に行き、現地ではサポーターにお任せいただき、それぞれ自分たちが行きたいところへ行く、ということもできます。
たとえば、神戸に行ったご家族が、障がいをお持ちの娘さんはスイーツめぐり、親御さんは酒蔵へ、といったケースもありました。
家族が旅行へ行く時には、介助が必要な方は施設にショートステイしてもらうということもできますが、一緒に行ければ旅の思い出が共有できるのでうれしいですよね。
久保田さんからひと言
まとめ
旅行は、日常から離れてリフレッシュできる最高の気分転換の方法だと思います。
いくつになっても、体に悩みを抱えていても、誰でも旅を楽しめるようにサポートしてくれる久保田さんたちのような心強い味方がいます。
バリアフリーに配慮した観光地も増えているので、旅行から足が遠のいていた方も、この機会に出かけてみてはいかがでしょう。
選択肢のひとつとして、ジパング倶楽部のサービスと一緒に旅を上手に楽しんでいただけたらうれしいです。
皆さまが安心して旅を楽しめるように、願っています。
文/綿谷朗子